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SDGs2「飢餓をゼロに」の現状(世界と日本)

SDGs2「飢餓をゼロに」の現状(世界と日本)

SDGsで掲げられている17の目標(Goal)の2番目「飢餓をゼロに(“ZERO HUNGER”)」について説明します。

SDGs2「飢餓をゼロに」の概要

End hunger, achieve food security and improved nutrition and promote sustainable agriculture
(飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する)

という宣言文になっています。

飢餓に苦しむ人々の数は数十年間は減少傾向でしたが、2015年以降は再び増加に転じており、2030年までに飢餓ゼロを達成できるような軌道に乗っていません。

現状では世界の人口の8.9%にあたる約6億9,000万人の人が飢餓状態にあり、5年間で6,000万人近く増加しています。この傾向が続くと、飢餓の影響を受ける人々の数は2030年までに8億4,000万人を超えてしまうと予想されています。

国連のレポートによると、2014年には食料不安を抱える人の割合は全世界の22.4%でしたが、2019年には25.9%と悪化の傾向を示しています。

また、COVID-19のパンデミックの影響によって、世界の飢餓や栄養不足の問題は悪化しています。
SDGs目標2概要_2021【出典】国際連合広報センター

SDGs2「飢餓をゼロに」のターゲット

「目標2.飢餓をゼロに」には8つのターゲットがあります。「2-1」のように数字で示される達成目標が5個、「2-a」のようにアルファベットで示される実現のための方法が3個で構成されています。

飢餓を2030年までに撲滅するといった目標のほかに、小規模農家の生産性と所得の向上、国際協力によるインフラと技術への投資、貿易制限の撤廃、デリバティブ(金融)市場を適正に運用すること等の目標も掲げられています。

目標2_ターゲット2.1 2-1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての⼈々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な⽴場にある⼈々が⼀年中安全かつ栄養のある⾷料を⼗分得られるようにする。
目標2_ターゲット2.2 2-2 5歳未満の⼦どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを 2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年⼥⼦、妊婦・授乳婦及び⾼齢者の栄養ニーズへの対処を⾏う。
目標2_ターゲット2.3 2-3 2030年までに、⼟地、その他の⽣産資源や、投⼊財、知識、⾦融サービス、市場及び⾼付加価値化や⾮農業雇⽤の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、⼥性、先住⺠、家族農家、牧畜⺠及び漁業者をはじめとする⼩規模⾷料⽣産者の農業⽣産性及び所得を倍増させる。
目標2_ターゲット2.4 2-4 2030年までに、⽣産性を向上させ、⽣産量を増やし、⽣態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、⼲ばつ、洪⽔及びその他の災害に対する適応能⼒を向上させ、漸進的に⼟地と⼟壌の質を改善させるような、持続可能な⾷料⽣産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
目標2_ターゲット2.5 2-5 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種⼦・植物バンクなども通じて、種⼦、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野⽣種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利⽤から⽣じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
目標2_ターゲット2.a 2-a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業⽣産能⼒向上のために、国際協⼒の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡⼤を図る。
目標2_ターゲット2.b 2-b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助⾦及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並⾏的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防⽌する。
目標2_ターゲット2.c 2-c ⾷料価格の極端な変動に⻭⽌めをかけるため、⾷料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、⾷料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。

SDGs2「飢餓をゼロに」の日本の達成度スコア

SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると、2021年度における日本の総合スコアは79.8で世界18位でした。

▶︎SDGs達成度ランキング2021|日本は世界18位にワンランクダウン

SDGs目標2の評価に関しては、

  • 現状(CURRENT ASSESSMENT):重要な課題が残っている
  • 傾向(TRENDS):緩やかに改善している

となっており、前年と変化はありません。

SDGs目標2達成度スコア_2021SDGs目標2.達成度_評価と傾向_2021

【出典】SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2021

SDGs2「飢餓をゼロに」の日本の現状

タンパク質危機(プロテインクライシス)問題

増え続ける世界の人口は2050年には90億人に到達し、早ければ2025〜30年頃にタンパク質の供給が不足する「タンパク質危機(protein crisis)」が訪れると予想されています。

この問題に対し、現在の畜産業とは異なる方法でタンパク質を供給する「代替タンパク質(プロテイン)ビジネス」に取り組む企業が増えています。

代替プロテイン(タンパク質)ビジネスに挑む国内企業一覧

また、安定的な水産物の供給を目指しつつ、同時に、SDGs目標14.海の豊かさを守ろうでもターゲットとなっている、海洋資源の管理と汚染問題の解決にも貢献する「陸上養殖」への取り組みも増えてきています。

陸上養殖とは?陸上養殖技術ベンチャー企業まとめ

フードロス問題

世界では穀物生産量が増加している一方で、飢餓に苦しむ人が増加しているというアンバランスな状況にあります。

その理由としては、開発途上国を中心に人口が増加していることや、肉類の需要が増加していることに伴い、家畜を育てるための飼料用の需要が増加することで、穀物需要量も増加していることが挙げられます。

それでも、穀物ベースでは世界の人口を賄うだけの生産量があるにも関わらず、飢餓に苦しむ人がいるのは、先進諸国が必要以上の穀物を確保していること、そして余ったものが廃棄されているというフードロスも関係しています。フードロスの問題は、SDGs目標12.つくる責任つかう責任においてもターゲットに設定されています。

フードロス削減に挑戦するビジネスまとめ

農業の人手不足問題

日本では、農業を生業とする人の減少と高齢化が進み、労働力不足が問題となっています。

農林水産省の「農業構造動態調査」結果によると、基幹的農業従事者(ふだん仕事として主に自営農業に従事している者)の数は、2012年の177.8万人から2021年の130.2万人へと、9年間で約47.6万人(約26.8%)減少しています。

また、2019年における基幹的農業従事者の平均年齢は66.8歳となっており、70歳以上が42.0%(59万人)、60歳以上が38.3%(53.7万人)となっており、60歳以上で8割(112.7万人)を占めています。

新規就農者の数は年間5〜6万人で推移していることから、60歳以上の人達の引退に伴って、基幹的農業従事者の減少数は加速していく可能性があります。

耕作放棄地問題

また、日本では「耕作放棄地」の増加が問題となっています。

農林業センサスによれば、日本の耕地面積は長期的に減少傾向が続いており、2018年には467万haとなりました。耕作放棄が非農業用途への転用を上回って推移していることが、耕地面積が減少する大きな要因となっています。増加率は近年鈍化しているものの、耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達しています。

こうした問題を解決するために、ドローン、AI、IoTといった先端技術を駆使したスマート農業に挑むベンチャー企業も増えてきています。

耕作放棄地問題に挑むスマート農業ビジネスまとめ

SDGsのその他の目標をみる

1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう

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