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食に関する社会問題一覧

食に関する社会問題一覧

「食」を巡っては、貧困・飢餓・健康・環境への負荷といった社会問題が数多く存在しており、持続可能性に対する負のインパクトは巨大なものとなっています。

グローバルフードシステムは、人為起源の正味の温暖化ガスの総排出量の21~37%を占めると推定(IPCC)されているほか、目に見えない負のコストが約1308兆円と試算(FOLU)されており、食が地球の持続可能性に与えるインパクトの大きさが分かります。

ここでは、そのような食に関する社会問題を一覧にしてご紹介します。

温暖化ガス排出

IPCC「土地関係特別報告書」の概要(2020年度 環境省)によれば、世界全体の農業・林業及びその他土地利用による温暖化ガス(GHG)の排出量(2007~2016年)は、人為起源による総排出量の約23%に相当したとのことです(二酸化炭素(CO2)排出量は約13%、メタン(CH4)は約44%、一酸化二窒素(N2O)は約82%)。

グローバルフードシステムにおける、食料生産・製造の前後に行われる活動に関連する排出量を合算すると、人為起源の正味の温暖化ガスの総排出量の21~37%を占めると推定されています。

車や飛行機を含めた輸送業は全体の約13%であることと比べると、フードシステムが温暖化ガスの排出に占める割合の大きさが想像しやすいでしょう。

WRIが2016年に発表した報告書によると、「食物の環境への影響については牛肉が特に顕著であり、タンパク質1グラム当たり豆に比べて20倍の土地が必要で、20倍の温暖化ガス(GHG)を排出する。そして、牛肉の価格は豆の3倍」とのことです。

2021年の世界人口は78億7500万人となっていますが、2050年には90億人に到達し、FAOの予測では、食肉の摂取量は世界全体で3割近く増加すると見込まれているため、このままでは更に温暖化ガス排出量が増加してしまいます。

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孤食

孤食とは「1人で食事すること」ですが、特に「孤独を感じるような寂しい食事」という意味で用いられます。

孤食は、栄養の偏りや食生活リズムの崩れなど、身体的な健康面への悪影響が懸念されるほか、コミュニケーションの欠如、社会性・協調性の低下、精神的不安定など精神的な健康面への悪影響があると考えられています。

日本では単身世帯が増加しており、2030年までに全世帯の4割に達すると予想されています。なかでも高齢者の単身世帯が増加することが予想されています。

2015年の国勢調査によると、65歳以上の高齢者は日本全国で約3,350万人となっていますが、このうち約593万人が単身世帯となっており、2025年には全体で約750万人に達すると予測されています。

孤食は「低栄養」や「うつ病」のきっかけや引き金となり、高齢者の健康寿命を縮めてしまうリスクを抱えているため、対策が必要な社会課題となっています。

タンパク質危機

2021年の世界人口は78億7500万人となっていますが、2050年には90億人に到達すると予測されています。

世界人口の増加に加えて、新興国の食生活が欧米化(肉を多く食べる)の影響があります。畜産には大量の穀物を必要とするため、必要な穀物生産量は人口の増加よりも速いスピードで増加しています。

これまでは、農地の拡大や漁獲量の増加、生産性の向上などによって需要増加に対応してきましたが、環境の破壊や汚染、資源枯渇など、限界が見えてきています。

このままでは、早ければ2025〜30年頃にタンパク質の需要と供給のバランスが崩れ始めると予測されています。この予測のことを「タンパク質危機(protein crisis)」と呼びます。

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フードシステムの負のコスト

国際的な食糧と土地利用分野のNGOであるFOLU(The Food and Land Use Coalition)が2019年9月に発表したレポートの中で、世界のフードシステムの年間市場価値は10兆ドル(約1090兆円)であるのに対し、目に見えない負のコストが12兆ドル(約1308兆円)であるとの試算結果が示されました。

そして、何の対策もしなければ、フードシステムがもたらす負のコストは、2025年までに16兆ドル(約1744兆円)まで膨れ上がると警告しています。

12兆ドル(約1308兆円)の負のコストの内訳は以下のようになっています。

  • 健康: 6兆6000億ドル(約719兆円)
    【内訳】
    ・肥満によるコスト: 2兆7000億ドル(約294兆円)
    ・低栄養による健康被害:1兆8000億ドル(約196兆円)。
    ・その他、農薬・抗微生物薬耐性からもたらされる健康被害:2兆1000億ドル(約229兆円)
  • 環境(気候変動など): 3兆1000億ドル(約338兆円)
  • 経済(フードロスなど): 2兆1000億ドル(約229兆円)
Growing Better report 2019
【出典】Growing Better report 2019

フードデザート

英語で「food desert」と綴ります。直訳すると「食の砂漠」となります。

「食料供給システムの崩壊と社会的弱者の集住が併発しているときに発生する社会問題」のことを意味しています。

イギリスでは1970〜1990年代半ばに郊外の大型店が増えた影響で、都市部の中小食料品店やショッピングセンターが減少しました。その結果、郊外まで買い物に通えない都市部の貧困層が、値段が高く、生鮮品の品揃えが悪い雑貨店での買い物を強いられるようになりました。そのような状況を問題視したイギリス政府によって名付けられました。

日本でも2000年頃から郊外大型店の増加に伴って中心商店街の衰退が進行した結果、同様のフードデザート問題が生じています。

過疎化や少子化・高齢化による地方の中山間地域におけるフードデザート問題が顕在化していますが、今後は急速に高齢化が進んでいる大都市郊外の住宅団地で問題が拡大すると見られています。

フードデザート問題は、食事の栄養バランスの偏りを生み、「低栄養」などの健康問題を引き起こしていきます。

欧米では、フードデザート問題は単なる買い物難民の問題にとどまらない、社会的排除(Social exclusion)の問題として政府レベルでの対策が進められています。

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フードロス(食品ロス)

日本では、まだ食べられる食品なのに捨てられてしまう食品廃棄物のことを「フードロス」と呼んでいます。「食品ロス」と呼ぶ時も「フードロス」と同じ意味で使っています。

農林水産省では、不可食部(食べられないもの)も含めた食品廃棄を「食品廃棄物」と呼び、可食部(食べられるもの)の食品廃棄を「食品ロス」と呼んでいます。

一方で、海外では消費者の目に触れる前の供給過程で発生する食品廃棄を「Food Loss(フードロス)」、食べ残しなどによる食品廃棄を「Food Waste(フードウェイスト)」と呼ぶのが一般的で、日本とは言葉の意味が厳密には異なっています。

ここでは、農林水産省の「食品ロス」の定義を基に日本国内の話を進めます。

平成29年度の推計では、日本の食品廃棄物は全体で2,550万トンとなっています。内訳は、事業系が1767万(約69%)トン、家庭系が783万トン(約30%)となっています。

そのうち、日本の食品ロスは612万トンとなっており、食品廃棄物全体の24%となっています。612万トンの内訳は、事業系(規格外品・返品・売れ残り・食べ残し)が328万トン、家庭系(食べ残し・過剰除去・直接廃棄)が284万トンとなっていますので、食品系廃棄物に占める廃棄の比率は家庭系の方が高いと言えます。

最終的に1055万トンが焼却・埋立されており、食品廃棄物全体に占める量は41%となっています。

このほか「産地廃棄(圃場廃棄)」と呼ばれる、価格維持のために収穫後に出荷しないで廃棄される野菜・穀類・果実の量は年間約400万トンにのぼりますが、これらは食品ロスの数値には含まれていません。

食品廃棄物等の利用状況等
【出典】 農林水産省「食品廃棄物の利用状況(平成29年度推計)<概念図>」

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容器包装プラスチック

エレンマッカーサー財団が2016年に発表した『The New Plastic Economy』によれば、世界における容器包装プラスチックの使用量は、1964年の1500万トンから2014年の3億1100万トンへと過去50年で急増しており、さらに今後20年で現在の生産量の2倍になると予想されています。

また、2018年6月に発表された国連環境計画(UNEP)の報告書『シングルユースプラスチック』によれば、プラスチック生産量(2015年)を産業セクター別にみると、容器包装セクターのプラスチック生産量が最も多く、全体の36%を占めています。

このように、食に関わる産業は大量のプラスチックを使用しており、海洋プラスチックをはじめとする環境問題に大きな影響を及ぼしています。

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終わりに|食に関する社会問題一覧

グローバルフードシステムによって排出される温暖化ガスは全体の21~37%を占め、健康・環境・経済における負のコストは約1308兆円に達するといったように、食が関わる社会課題がいかに大きいかということが分かります。

しかし、影響力が大きい産業であるからこそ、同時に大きな可能性を秘めてもいます。多くの人がこの事実を知って、食に関わる行動を変容させることで、地球の持続可能性をおおいに高めることができるでしょう。

また、食とテクノロジーを融合させてイノベーションを起こすフードテックにも大きく期待したいとことです。

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