SDGsで掲げられている17の目標(Goal)の12番目「つくる責任つかう責任(“RESPONSIBLE CONSUMPTION AND PRODUCTION”)」について説明します。
目次
SDGs12「つくる責任つかう責任」の概要
Ensure sustainable consumption and production patterns
(持続可能な生産消費形態を確保する)
という宣言文になっています。
Our World in Data によると、世界の1人あたりマテリアルフットプリント(需要を満たすために消費された天然資源量)は、2000年には8.26トンでしたが、2017年には12.18トンに増加しています。今後も途上国の開発が進むにつれて更に増加することが予想されています。
【出典】国際連合広報センター
プラスチックゴミ問題
廃棄物量の増大による焼却場や埋立地不足、そして近年では、プロダクトライフサイクルにおける温室ガスの排出、使い捨て(シングルユース・プラスチック)による資源の無駄使い、廃棄物が海に流れ出す海洋プラスチックやマイクロプラスチックが世界的な問題となっています。
1950年以降生産されたプラスチック83億トンのうち約69%の57億トンが投棄・焼却されています。リサイクルされたのは約7%の6億トンにすぎないという状況となっています。
2016年に開かれた世界経済フォーラムでは、魚と海洋プラスチックゴミの割合が2014年は5:1で、2050年には1:1の割合になるというショッキングな予想が発表されました。
食に関する問題
世界のフードシステムは膨大な負のコストを生み出しています。肥満や農薬などからもたらされる健康問題、温室効果ガス排出や水・土壌汚染などの環境問題、フードロスなどの経済問題を合わせると、合計12兆ドル(約1308兆円)との試算結果が示されました。何の対策もしなければ、2025年までに16兆ドル(約1744兆円)まで膨れ上がると警告されています。
衣服に関する問題
世界で排出されるCO2の約10%はファッション産業が排出しており、2050年には26%を占めると予想されています。衣類の製造には毎年930億m3の水が使用されていおり、石油産業に次いでワースト2位の産業となっています。
世界で毎年作られる服の85%が焼却や埋め立てなどで処分されており、ファストファッションが主流になったことで更に衣料品の生産量と廃棄量が増加しています。
サーキュラーエコノミーへの移行が急務
こうした状況を好転させるために、ヨーロッパを中心に「サーキュラーエコミー」(循環型経済)への移行が急務となっています。2015年12月に欧州委員会が、気候変動や環境問題への対処と同時に雇用創出や経済成長・投資・社会的公正を促進して社会課題を解決することを目的とするEU共有の枠組である「サーキュラーエコノミー・パッケージ」を採択したことを起点に世界に広まりつつあります。
SDGs12「つくる責任つかう責任」のターゲット
「目標12.つくる責任つかう責任」には11個のターゲットがあります。「12-1」のように数字で示される達成目標が8個、「12-a」のようにアルファベットで示される実現のための方法が3個で構成されています。
2012年のリオ+20で採択された「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)」の推進の他、天然資源の適切な管理、食品ロスの削減、廃棄物の管理、政府の調達・化石燃料への補助金の廃止、大企業の取り組みや消費者の意識向上等に関する項目が盛り込まれています。
12.1 | 開発途上国の開発状況や能⼒を勘案しつつ、持続可能な消費と⽣産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。 | |
12.2 | 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利⽤を達成する。 | |
12.3 | 2030 年までに⼩売・消費レベルにおける世界全体の⼀⼈当たりの⾷料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの⽣産・サプライチェーンにおける⾷品ロスを減少させる。 | |
12.4 | 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、⼈の健康や環境への悪影響を最⼩化するため、化学物質や廃棄物の⼤気、⽔、⼟壌への放出を⼤幅に削減する。 | |
12.5 | 2030年までに、廃棄物の発⽣防⽌、削減、再⽣利⽤及び再利⽤により、廃棄物の発⽣を⼤幅に削減する。 | |
12.6 | 特に⼤企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導⼊し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。 | |
12.7 | 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣⾏を促進する。 | |
12.8 | 2030年までに、⼈々があらゆる場所において、持続可能な開発及び⾃然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。 | |
12.a | 開発途上国に対し、より持続可能な消費・⽣産形態の促進のための科学的・技術的能⼒の強化を⽀援する。 | |
12.b | 雇⽤創出、地⽅の⽂化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する⼿法を開発・導⼊する。 | |
12.c | 開発途上国の特別なニーズや状況を⼗分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最⼩限に留めつつ、税制改正や、有害な補助⾦が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃⽌などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化⽯燃料に対する⾮効率な補助⾦を合理化する。 |
SDGs12「つくる責任つかう責任」の日本の達成度スコア
SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると、2021年度における日本の総合スコアは79.8で世界18位でした。
▶︎SDGs達成度ランキング2021|日本は世界18位にワンランクダウン
SDGs目標12の評価に関しては、
- 現状(CURRENT ASSESSMENT):重要な課題が残っている
- 傾向(TRENDS):情報が入手不能
となっています。前年と変わりはありませんでした。
【出典】SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2021
SDGs12「つくる責任つかう責任」の日本の現状
2010年の日本のエコロジカル・フットプリントは3.9ghaとなっており、世界の一人当たりバイオキャパシティ(地球1個分の限界値)1.7ghaの2.3倍となっています。
つまり、世界中の人たちが日本人と同じ暮らし方をしたとすると、地球が2.3個必要な状態ということです。
日本のエコロジカル・フットプリントの66%は日々の生活から生じています。従って、日本のフットプリントを縮小するためには日本人のライフスタイルを変える必要があります。
例えば、食料廃棄をゼロにすると日本の食料フットプリントを約25%削減できます。
食品ロスの現状
農林水産省によると、令和元年度(2019年度)には日本国内で570万トンのフードロスが発生しました。このほか「産地廃棄(圃場廃棄)」と呼ばれる、価格維持のために収穫後に出荷しないで廃棄される野菜・穀類・果実の量は年間約400万トンにのぼりますが、これらは食品ロスの数値には含まれていません。
生ゴミの焼却問題
2022年3月に環境省が発表した調査結果によると、2020年度において日本国内には1,056基のごみ焼却施設がありました。2008年のOECDのデータによれば、ごみ焼却施設数は世界一となっており、世界の焼却炉の半分以上が日本にあるという状況です。また、焼却施設の数と同様に、燃やして処理するごみの量も多く、2017年のOECDのデータによれば、アメリカの値を超えて世界で最多となっています。
日本にごみ焼却施設が普及した背景としては、国土が狭くて埋め立て処分する土地がなく、ごみを減量する必要があったこと。夏は蒸し暑く、臭いの問題もあり、衛生の面からも熱処理が重視された結果でした。また、埋め立て処分場よりも焼却施設の方が住民の反対も少なかったため、国が補助金を出してごみ焼却施設の建設を後押ししました。しかし、焼却によってごみを減量しているにも関わらず、最終処分場の受け入れ可能な容量は逼迫しています。
多くの自治体で「燃えるごみ」「燃やすごみ」と呼んでいるごみの、40%前後が生ごみとなっています。生ごみの重量のうち80〜90%が水分となっているため、生ごみを燃やすのは水を燃やすのに等しい行為といえます。一方で、焼却せずに埋め立て処分する場合でも大量のメタンガスが生成されるという問題があります。そのため、世界では埋め立て処理で発生するメタンガス再利用したり、堆肥化したりする方向に切り替わりつつあります。
SDGsのその他の目標をみる
SDGs17の目標一覧
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう