
日本が抱えている社会問題(社会課題)を一覧にして紹介しています。社会問題を知るほどに、将来に対する悲観的な気持ちも湧いてきますが、知ることが解決に向けた第一歩です。
また、これからのビジネスは社会問題を解決する視座が必須となりますので、過度に悲観することなく、ビジネスチャンスのリストというぐらいの前向きな視点で眺めることをお勧めします。
目次
社会問題とは?
社会問題(社会課題)とは、社会の欠陥や矛盾から生じる諸問題のことです。
労働問題・人口問題・人種問題・都市問題・農村問題・住宅問題など多岐にわたりますが、これからの日本は、少子化や高齢化が急スピードで進展していることに由来する問題が山積しており、岐路に立たされています。
日本の社会問題一覧
日本が直面しているそれらの社会問題を五十音順に紹介します。(2023年5月現在26テーマ)
空き家問題
所有者である高齢者が老人ホームに入居したり子供宅に転居したりなどして、誰も住んでいない状態の家(空き家)が増えています。
2013年の全国の空き家数は約820万戸でした。そのうち「所有者による定期的な利用がされていない状態の空き家」が2013年時点で318万戸となっています。
こうした放置状態の空き家が空き家全体の約4割を占めており、かつその割合は増加傾向にあります。このままいくと15年後には倍以上となる2,000万戸にまで拡大することが予想されています。
インフラ(社会資本)老朽化問題
日本のインフラ(道路・橋・トンネル・上下水道・公共施設などの社会資本ストック)は1960年から70年代の高度経済成長期に集中的に整備されたため、今後20年間で老朽化(建設後50年以上経過)して維持管理・更新が必要になるインフラが一斉に増えてきます。
東京五輪(1964年)や大阪万博(1970年)などで、他の地域よりも早く公共投資を集中させた首都圏と近畿圏でインフラの老朽化が顕著となっています。
こうした老朽化したインフラは、地震などをきっかけとして使用停止になる事例が多発しています。東洋大学大学院の根本祐二教授(『朽ちるインフラ』著者)によると、更新費用は今後50年間で総額450兆円、年額9兆円と試算されていますが、財政不足の国や地方自治体では予算がないために実態調査すらできず、老朽化を放置せざるを得ない状況に陥っています。
介護離職問題
家族を介護するという理由で勤めている会社を退職したり店を畳んだりして離職(転職)することをいいます。
総務省によると、介護や看護のために前の仕事を辞めたという人は約9万9000人となっています。約9万9000人のうち8割が女性となっています。
また、40代から50代のいわゆるミドル世代も多く、退職される企業としても打撃となり社会問題になっています。
買い物難民問題
買い物難民(買い物弱者)とは、さまざまな理由によって食料や生活に必要なものを買えなくなる人のことです。ものだけではなく郵便局や病院、役所などでの手続きなど料金を支払って受けられるサービスを受けられなくなることも含まれ、社会問題になっています。
買い物や生活に関するサービスが受けられないことから人の命にかかわる問題です。経済産業省の報告書では全国で約700万人いると推計されています。
買い物難民は農村や山間部にある小さな集落だけに限らず、地方の都市をはじめ団地などが多いベッドタウン、大都市にも存在します。
買い物難民が生まれてしまう原因としては「スーパーの廃業や各商店・商店街の衰退」「山間部での公共交通機関の衰退やガソリンスタンドの減少」「住民の高齢化」といったものが挙げられます。
海洋プラスチック問題(マイクロプラスチック)
国際NGOのWWFによれば、既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは合計で1億5,000万トン。
そこへ少なくとも年間800万トンが新たに流入しており、このまま対策を講じなければ、2050年には海に生息する魚の総重量を上回る規模にまで増えると推定されています。
それらは時間が経過すると大きさ5ミリ以下の「マイクロプラスチック」となり、飲料水や食塩などに含まれている可能性が指摘されています。また、魚などの海洋生物に取り込まれ、最終的には人間が摂取しているのは確実です。
WWFは、「平均的すると人は1週間にクレジットカード1枚分(約5g)のプラスチックを摂取している」というショッキングな発表をしました。
日本は、プラスチック廃棄量の国別比較(2015年)では、1人あたりの廃棄量が米国に次いで2番目となっています。また、香港、米国に次いで世界で3番目の廃プラスチック輸出大国(2018年上半期)となっており、国際的にみても恥ずべき状況となっています。
限界集落問題
限界集落とは高齢化や移住する人がいないことから集落の人口が減り、地域社会としての機能が衰えて限界に達している集落のことで、具体的には、「集落の中で65歳以上の人口が50%以上を占めている状態」と定義づけられています。
国土交通省と総務省との共同調査によれば、限界集落の数は全国で1万5,568箇所あることがわかりました。
中国地方が最も多く、次いで九州地方や四国地方に多く存在しており、「元々規模の小さな集落」「山間部に位置する集落」「役場から10キロ以上離れている」といった共通の特徴があります。
耕作放棄地問題
以前は作物などを栽培していたにもかかわらず、放置された農地のことを耕作放棄地といいます。
農林業センサスによると「以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地」を耕作放棄地としています。
耕作放棄地は、日本のどの地域においても増え続けているのが現状です。その理由としては、「農業をおこなう人が減っている」、「農地を相続した人が農業をしないで放置している」、「土地の値上がりへの期待から手放さずに放置している」といったものが挙げられます。
高齢化
総務省統計局によると2019年の9月時点で日本の高齢化率(65歳以上の高齢者が人口全体に占める割合)は約28.4%と過去最高となっています。
2019年時点で日本は高齢化率で世界1位となっています。2位がイタリアで23%、3位がポルトガルで22.4%と続いています。
通常21%を超えると高齢化社会ではなく超高齢化社会と呼びますので、日本は高齢化社会ではなく超高齢化社会と呼ぶのが正解です。しかも、2065年には38.4%まで上昇すると予測されています。(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口[平成29年推計])
日本の高齢化率が特に高くなっていくのは、長寿が要因ではなく、少子化が大きな要因です。平均寿命の延びも高齢化率を高める方向に働きますが、実際のところは先進諸国における平均寿命の相違はさほど大きなものではなく、特に大きいのは出生率の違いであって、そのありようが高齢化率を左右することになります(参考:「人口減少社会のデザイン(広井良典)」)。
ゴミ最終処分場の逼迫問題
2022年3月に環境省が発表した調査結果によると、令和2年度において日本国内には1,056基のごみ焼却施設がありました。2008年のOECDのデータによれば、ごみ焼却施設数は世界一となっており、世界の焼却炉の半分以上が日本にあるという状況です。また、焼却施設の数と同様に、燃やして処理するごみの量も多く、2017年のOECDのデータによれば、アメリカの値を超えて世界で最多となっています。
日本にごみ焼却施設が普及した背景としては、国土が狭くて埋め立て処分する土地がなく、ごみを減量する必要があったこと。夏は蒸し暑く、臭いの問題もあり、衛生の面からも熱処理が重視された結果でした。また、埋め立て処分場よりも焼却施設の方が住民の反対も少なかったため、国が補助金を出してごみ焼却施設の建設を後押ししました。しかし、焼却によってごみを減量しているにも関わらず、最終処分場の受け入れ可能な容量は逼迫しています。
ジェンダー不平等(男女格差)問題
ジェンダーとは性別を意味し、性別的な差別によって起こる不平等をジェンダー不平等といいます。
特に社会的・文化的な性差のことで「男性だからこうするべき」「女性だからこうだ」というような社会からのレッテルのようなものです。
男女という性別によって起こる理不尽な差別、ジェンダー不平等が起こる原因は様々ありますが、代表的な原因としては「伝統的な風習や文化など」「宗教上の理由」「生物学上の役割の違い」が挙げられます。
世界経済フォーラムが発表した「世界ジェンダー・ギャップ報告書2020」によると、調査した153カ国のうち日本は121位でした。