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代替タンパク質(プロテイン)ビジネスに挑む国内フードテック企業一覧

代替タンパク質(プロテイン)ビジネスに挑む国内フードテック企業一覧

増え続ける世界の人口は2050年には90億人に到達し、早ければ2025〜30年頃にタンパク質の供給が不足する「タンパク質危機(protein crisis)」が訪れると予想されています。

このように、将来の食糧不足が懸念されているなかにあって、グローバルフードシステムは温暖化ガスの総排出量の21~37%を占めると推定されているほか、大量の水を使用するなどの環境に与える負の影響は3兆1000億ドル(約338兆円)と推定されています。(IPCC報告より)

特にタンパク源の主要な供給源である食肉を生産する畜産業が環境に与える負の影響は大きく、人類のサステナビリティ(持続可能性)を大きく左右する社会課題と言えるでしょう。

食に関する社会問題一覧

こうした社会課題に対し、現在の畜産業とは異なる方法でタンパク質を供給する「代替タンパク質(プロテイン)ビジネス」に取り組む企業が増えています。

ボストン・コンサルティング・グループが公表したレポート「Food for Thought: The Protein Transformation」によれば、2035年までに代替プロテイン製品の世界市場規模は2,900億ドル(約32兆円)に達すると予測しています。

ここでは、そうした代替タンパク質(プロテイン)ビジネスに挑む国内のフードテック企業を紹介します。

NEXT MEATS(ネクストミーツ)

NEXT MEATS▼サイト: NEXT MEATS(ネクストミーツ)

2017年から共同創業者2名が研究を始めて、プロダクト完成の2020年6月に法人化。

「地球を終わらせない」を理念とし、自社のR&Dセンターでは世界から集まった研究メンバーが大豆以外にも幅広い代替タンパクの研究開発に着手しており、2050年までに世界中で全ての肉を代替することをミッションとしています。

2021年1月には、創業からわずか7ヶ月でアメリカの証券市場であるOTCBBに上場し、時価総額が40億ドル(約4,400億円)を超えた日本発のユニコーン企業です。2021年3月には世界のVegTech企業21に日本企業として唯一選出されました。

これまでに、焼肉用フェイクミート「NEXT焼肉」シリーズ、100%植物性の牛丼「NEXT牛丼」や、鶏肉タイプの代替肉「NEXTチキン」などを発売しており、日本・アメリカ・シンガポール・台湾・ベトナムなど10カ国以上で事業展開しています。

ネクストミーツの世界展開では、「日本食」と「無添加」という強みを活かしたポジショニングで、代替肉の焼肉や牛丼などの商品を販売していく予定とのことです。

日本の代替肉ブランド、ネクストミーツがアメリカ進出

DAIZ

DAIZ▼サイト: DAIZ

大豆由来の「植物肉」原料を開発するスタートアップ。三井物産、カゴメ、トヨタ自動車などが出資するベビーリーフ生産の株式会社果実堂(熊本県)から分社化して2015年に設立。

丸紅や味の素、ニチレイフーズなどから約30億円の出資を受けるなど、国内の大手事業会社からの資金調達を成功させています。

コア・テクノロジーである「落合式ハイプレッシャー法」は、発芽中の生きている大豆を使用し、大豆のアミノ酸組成を自由に変えることによって、それぞれを豚肉に近い味、魚肉に近い味、牛肉に近い味に変えます。

大豆の栄養価を著しく向上させることを可能にすると同時に、グルタミン酸の含有量も増加するため、食味も美味しいことが特徴となっています。しかも、生産過程で、廃棄物もなく、遺伝子組み換え大豆も使用していません。

また、DAIZの研究所では、落合式ハイプレッシー法をプラットフォームテクノロジーとして、卵や乳製品の代替品や、安価で吸収性の高い穀物粉、養殖の稚魚用の餌の開発にも取り組んでいます。

さらに、落合式ハイプレッシャー法を特殊な方法で用いることで、未知のフィトアレキシン(イソフラボンなどの二次代謝物質)を3万種類以上発見しており、創薬分野への展開も視野に入れています。

既に、株主に加わっているニチレイフーズから共同開発した大豆ミートのハンバーグの発売が2021年3月に開始されているほか、イオンやライフコーポレーションなどの大手小売店にも原料を供給しています。2021年6月には国内工場を拡張予定で、従来の4倍の年間4000トンの原料が生産できるようになります。

米国への進出準備も進んでおり、現地に子会社「DAIZ USA」を設立して、2022年の工場設立や製品販売に向けた準備に入っているとのことです。

Algal Bio(アルガルバイオ)

アルガルバイオ▼サイト: Algal Bio(アルガルバイオ)

東京大学の河野重行名誉教授らの藻類に関する20年以上の研究成果をもとに、藻類を使った食品材料や化粧品などの機能性成分、医薬品原材料、バイオ素材などの研究を事業展開することを目的として2018年に設立されました。

藻類を活用した事業展開では、同じく東京大学発のユーグレナが2005年にミドリムシの屋外大量培養に成功し、2021年6月にはミドリムシ由来のバイオジェット燃料を用いて飛行検査が実施されました。(現段階では廃食用油にミドリムシの油脂を混ぜて運用)

自然界に存在する藻類は数十万種と数多く存在するなかで、産業などで使われている藻類は約30種程度にとどまっているのが現状です。

藻類はCO2を吸収し、光合成をすることでたんぱく質や油、ビタミンやミネラルをつくります。植物性たんぱく質の含有率は大豆やエンドウ豆が20~30%なのに対し、藻類は50~70%に達するものもあるため、代替たんぱく質や、脱炭素において大きな可能性を秘めています。

アルガルバイオは藻類の株数を豊富に有しているのが強みの一つとなっています。そのため、用途に応じた藻類の活用が可能となっています。そうした強みに加えて、独自の品種改良方法や、大量培養方法の確立に向けた研究開発を進めています。

Gryllus(グリラス)

Gryllus▼サイト: Gryllus(グリラス)

徳島大学の25年を越えるフタホシコオロギ研究をベースに、2016年には食用コオロギの研究を開始。そして、コオロギの可能性を社会に実装していくことを目的として2019年5月に徳島大学大学院の渡邉助教・工学博士が設立した徳島大学発ベンチャー企業です。

昆虫は家畜に比べて生産過程における環境への負荷が低いことが特徴です。なかでもコオロギは高タンパク質であることに加えて、ビタミンやミネラル、不飽和脂肪酸の含有量が多く、かつ糖質の割合が低いといった点で優れています。そのコオロギを、食用に生産・供給することで持続可能な循環型社会の構築を目指しています。

2020年5月にはグリラスが持つコオロギの飼育技術と、ジェイテクトの自動化技術やIoT、品質管理などといったモノづくりの技術との融合を目指して業務提携を行い、食用コオロギの量産システムの開発に着手しました。

徳島県美馬市の廃校を生産拠点として整備し、自動生産システムの導入を進めています。日本国内で安全・安心に生産した食用コオロギを販売することで、輸送を含めた生産プロセスにおける環境への負荷を最小限に留めることを目指しています。また、食品加工場で従来は捨てられていた食物残さや規格外の農産物などをコオロギの餌として利用することでフードロスの削減にも貢献しています。

グラリスの強みは、ジェイテクトとの提携による「コオロギの自動飼育システム」による生産効率の高さと、徳島大学の「ゲノム編集技術による系統育種」によるノウハウ、特許技術を継承したことにあります。

これまでは、加工した乾燥コオロギやパウダーを食品関連業者らに販売してきたほか、「無印良品」が販売しているコオロギせんべいに利用されています。

今後は、菓子メーカーをはじめ各社との連携を進めることで、現在のパウダー製品のみならず、様々な食品やサプリメント、化粧品などに加え、肥料・飼料、医薬品等などにも展開していくとのことです。

IntegriCulture(インテグリカルチャー)

インテグリカルチャー▼サイト: IntegriCulture(インテグリカルチャー)

細胞培養テクノロジーをベースに培養肉づくりの研究開発からスタートしたスタートアップ。

独自開発した低コストの細胞培養技術『CulNet System(カルネット システム)』をプラットフォームとして、細胞農業を軸とした事業を展開しています。

細胞農業とは、動物細胞を体外で培養・増殖させることにより、本来の生産方法で作られる肉や乳製品、皮革のほか、魚や卵など全く同じものを作り出すことができるバイオテクノロジーです。

使用エネルギー、GHGガス排出、土地や水の使用などにおける環境負荷が低く、動物を殺傷する必要もないため、SDGsの観点から世界でも注目されています。

一般的には「培養肉」と呼ばれており、現状では、大豆などの植物性タンパク質を擬似肉とする「代替肉」や、昆虫をタンパク源とする「昆虫食」と比べると、生産コストが高いことや法的側面が課題となっており、普及はもう少し先になると見られています。

そのような中、低コストの細胞培養技術を強みとする同社は将来性が高く、2019年には日本ハムと提携して、動物細胞を低コストで大量に培養する研究を共同で進めています。

2021年末にはアヒルの肝臓細胞を培養して作る人工フォアグラをレストランや食品会社に販売することを目指しています。また、シンガポールのショーク・ミーツ社とエビの培養肉の研究も始めており2022年ごろの商品化を目標としています。

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