SDGsで掲げられている17の目標(Goal)の11番目「住み続けられるまちづくりを(“SUSTAINABLE CITIES AND COMMUNITIES”)」について説明します。
目次
SDGs11「住み続けられるまちづくりを」の概要
Make cities and human settlements inclusive, safe, resilient and sustainable
(包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する)
という宣言文になっています。
都市部への人口集中
pwcによると、世界人口に占める都市人口の割合は、1950年代には30%に満たなかったものの現在は50%に上昇しており、2030年には約49億人に達するとの予測があります。また、国連の予測では世界の都市人口は2050年までにおよそ72%増加します。
都市人口の増加の大部分を占めるのがアジアとアフリカで、農村部から都市部に大規模な人口移動が起こります。都市部への人口集中によって、大気汚染や交通事故、渋滞の増加が予想されます。また、都市化に伴ってスラム街も発生することが予想されます。
気候難民の増加
気候変動の影響で、ハリケーンや大雨による水害、乾燥による干ばつや森林火災などの自然災害の数と、それによって影響を受ける人の数も大きく増加しています。オーストラリアのシンクタンクIEPは、そうした自然災害によって故郷を追われる「気候難民」が2050年までに少なくとも12億人に達すると予測しています。
【出典】国際連合広報センター
SDGs11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット
「目標11.住み続けられるまちづくりを」には10個のターゲット(個別目標)があります。「11-1」のように数字で示される達成目標が7個、「11-a」のようにアルファベットで示される実現のための方法が3個で構成されています。
2030年までに全ての人々が、女性・子供・障がい者・高齢者などを含めた全ての人々が、スラムに住むことなく、安全で安価な住宅や基本的サービスや、公共輸送システムを利用できるようにすることを掲げています。
また、大気や廃棄物による汚染を回避し、緑地や公共スペースを確保するといった環境面にも配慮するとともに、水関連水害などによる災害に強い都市を作ることなどをターゲットとしています。
11.1 | 2030年までに、すべての⼈々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 | |
11.2 | 2030年までに、脆弱な⽴場にある⼈々、⼥性、⼦ども、障害者及び⾼齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡⼤などを通じた交通の安全性改善により、すべての⼈々に、安全かつ安価で容易に利⽤できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。 | |
11.3 | 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な⼈間居住計画・管理の能⼒を強化する。 | |
11.4 | 世界の⽂化遺産及び⾃然遺産の保護・保全の努⼒を強化する。 | |
11.5 | 2030年までに、貧困層及び脆弱な⽴場にある⼈々の保護に焦点をあてながら、⽔関連災害などの災害による死者や被災者数を⼤幅に削減し、世界の国内総⽣産⽐で直接的経済損失を⼤幅に減らす。 | |
11.6 | 2030年までに、⼤気の質及び⼀般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の⼀⼈当たりの環境上の悪影響を軽減する。 | |
11.7 | 2030年までに、⼥性、⼦ども、⾼齢者及び障害者を含め、⼈々に安全で包摂的かつ利⽤が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 | |
11.a | 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境⾯における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを⽀援する。 | |
11.b | 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を⽬指す総合的政策及び計画を導⼊・実施した都市及び⼈間居住地の件数を⼤幅に増加させ、仙台防災枠組 2015-2030 に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施 | |
11.c | 財政的及び技術的な⽀援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を⽤いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を⽀援する。 |
SDGs11「住み続けられるまちづくりを」の日本の達成度スコア
SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると、2021年度における日本の総合スコアは79.8で世界18位でした。
▶︎SDGs達成度ランキング2021|日本は世界18位にワンランクダウン
SDGs目標11の評価に関しては、
- 現状(CURRENT ASSESSMENT):課題が残っている
- 傾向(TRENDS):達成軌道にある
となっています。前年と変わりはありませんでした。
【出典】SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2021
SDGs11「住み続けられるまちづくりを」の日本の現状
海外では整備前段階におけるインフラ不足が問題となっていますが、日本においては、インフラの老朽化と人口減少による諸問題(過疎化・財政問題)が重なってインフラを維持・更新できなくなっていくことが予想されています。
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」における日本の現状と問題を列挙します。
都市への人口集中
東京をはじめとした都市への人口集中による「過密」「リスクへの脆弱性」「地方の人材流出」「資産格差」「規模の不経済」といった問題を抱えており、国内の都市化率は、1950年には30%強に過ぎなかったのが、2050年には90%を大きく上回ると予測されています。
インフラ(社会資本)が老朽化
日本のインフラは高度経済成長期に集中的に整備されたため、今後20年間で老朽化して維持管理・更新が必要になってきます。その一方で、財政不足が深刻化しており、インフラの老朽化を放置せざるを得ない状況に陥っています。
一人暮らしの老人が増加
2019年の時点で日本の高齢化率(65歳以上の高齢者が人口全体に占める割合)は約28.4%で過去最高、かつ世界1位となっています。
内閣府の調べでは、独居老人(65歳以上の一人暮らし)は2015年には男女合計で約600万人でした。そして、2025年には全体で約750万人に達すると予測されています。
限界集落の増加
国土交通省と総務省との共同調査によれば、高齢化や移住する人がいないために集落の人口が減り、地域社会としての機能が衰えて限界に達している限界集落(65歳以上の人口が50%以上を占めている状態)が全国で1万5,568箇所あることがわかりました。
買い物難民の増加
地方を中心に、公共交通インフラは縮小・撤退の傾向にあるため、買い物難民と化す高齢者が増加しています。2017年に経済産業省が公表した『買物弱者・フードデザート問題等の現状及び今後の対策のあり方に関する報告書(抜粋版)』によると、買い物難民は全国で約700万人と推計されています。
空き家の増加
所有者による定期的な利用がされていない状態の空き家が2013年時点で318万戸となっています。このままいくと15年後には倍以上となる2,000万戸にまで拡大することが予想されています。
SDGsのその他の目標をみる
SDGs17の目標一覧
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう