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低利用資源の海藻クロメを用いた食品を共同開発(ロート製薬・鳥取大学等)

低利用資源の海藻クロメを用いた食品を共同開発(ロート製薬・鳥取大学等)

ロート製薬株式会社と鳥取大学、宝福一有限会社は、鳥取県で食品として有効利用されていない海藻クロメを使った惣菜、「KING KUROME」を共同で開発しました。

ライセンス契約を締結した宝福一有限会社が製造販売元となって4月7日からオンラインショップで先行販売を開始しました。

開発の背景

日本近海では約2,000種類もの海藻が単年・数年の単位で生育と繁殖を繰り返しながら、環境や生態系に恩恵をもたらしていますが、ワカメやコンブのように食として流通している海藻は100種類程度であり、現在活用しきれていない海藻の有用化や付加価値を付けられると、水産業の新たな戦略の一つとなる可能性を持っています。

一般的に「海藻」=「健康に良い食材」として多くの人に認識されていることから、鳥取県で生育しており未利用・低利用海藻の中で付加価値のある海藻を探索し、海藻の魅力の再発見、地域社会に貢献したいという想いのもと、その一つとして海藻クロメに辿り着きました。

そこで、鳥取大学とロート製薬株式会社は、海藻クロメの機能性、主に脂質吸収に関与するリパーゼ阻害作用に関する研究を進め、アルコールに比べ食品製造に適した水を用いて、海藻クロメから種々の条件で抽出した標品のリパーゼ阻害作用を調べた結果、適した抽出条件を発見しました。第76回日本栄養・食糧学会大会(2022年6月10~12日)で発表しています。

研究結果から、食品の加工方法を検討することでクロメの脂質異常等の生活習慣病の改善・予防効果をもった製品としての付加価値の向上を期待できると考えました。

新商品「KING KUROME」について

KING KROME「KING KUROME」の開発にあたっては、「クロメの魅力を伝えたい」「地域社会を活性化したい」「地方から発信したい」というそれぞれの想いが一致し、鳥取大学、ロート製薬株式会社、宝福一有限会社の3者を中心に、鳥取県の公共団体や漁業関係者が協力しました。

クロメの栄養をできるだけ逃さないように独自製造方法で仕上げ、クロメのコリコリとした食感を残しつつ、少し酸味を含んださっぱりとした味に仕上げました。ご飯のおともだけでなく、料理の薬味など、他のお料理にも美味しくあわせることができます。

今後は、鳥取発の食品・名産として大事に育てて日本全国に広めていき、さらに「SDGs」を念頭に地域資源を活用し、それぞれの役割・強みを活かして社会貢献を目指すとのことです。

海藻クロメについて

コンブの仲間で、コンブ目コンブ科カジメ属に属します。茎状部の上に羽のように広がった葉状部があり、しわしわです。クロメはワカメやアカモクと異なり、数年にわたり生育する多年生です。

潮下帯の岩礁域に生育し、平均40〜50cmの大きさですが、大きいのものでは1〜2メートルにもなります。西日本の太平洋側、瀬戸内海、日本海側で生育しています。

クロメにはワカメやコンブ、モズクと同等の食物繊維を含んでおり、ミネラル成分も豊富に含まれています。ミネラルの中でも特に、鉄、カルシウム、ヨウ素が多いです。さらに、ビタミンC、ポリフェノールも含まれ、ネバネバ成分も含み食感も楽しむことができます。

海藻に対する注目度の高まりについて

2022年12月14日にアメリカの人気レシピ雑誌「Eating Well」が発表した『2023年の食のトレンド予測TOP10』によると、1位「Sea Plants(海藻)」が5位にランクインしました。また、2023年の食品トレンドリストのすべてに食用の海の植物が含まれていました。

米大手小売のホールフーズは、2023年は「昆布」の取り扱いが大きくなると予測しています。

「Eating Well」のアソシエート食品編集者アレックス・ロー氏によれば、「昆布や藻類は栄養価が高く多用途で、環境にも優しい製品です。昆布は大気中の炭素の吸収を助け、淡水や追加の栄養素を必要としないという、気候変動の時代における2つの大きな利点を持っています。2023年には、より多くの昆布を使った製品が食料品店の棚に並ぶことになるでしょう」とのことです。

「Pinterest」の2023予測によると、「最もホットなスーパーフードは海からのものになる。アジア文化において長年定番となってきた海洋由来の食品とミネラルは、ミレニアル世代とX世代の間で人気がある。プラットフォーム上では緑藻や海苔を使った食品や海藻スナックがトレンドになっている」とのことです。

References :
EatingWell’s Top 10 Food & Nutrition Trends for 2023

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