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パナソニックがフードロス削減・食の体験価値創造の新プロジェクトを開始

パナソニックがフードロス削減・食の体験価値創造の新プロジェクトを開始

パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社(以下、パナソニック)が、2023年3月30日、共創パートナーと新たな食の体験価値を創造する「未来の食プロジェクト」を開始することを発表しました。

第一弾として、京都大学大学院 工学研究科化学工学専攻 中川究也准教授との共同研究で開発を進めている「常圧凍結乾燥技術」を用い、料理を科学する料理作家KYOTO SNT LAB.と共に乾燥食品のプロトタイプを完成させました。

第一弾の取り組み概要

この度、「未来の食プロジェクト」では、冷凍技術の可能性を追求して京都大学の中川准教授と共同研究に着手しました。

新たに開発を進めている常圧凍結乾燥技術は、冷凍で鮮度を保ちながら乾燥を制御します。

出来上がった乾燥品は常温で長期保存が可能になるほか、従来の乾燥技術で処理した食品とは色や香り、食感が異なるという特長を持ち合わせていることが明らかになりました。

さらに「和食を科学する」という観点で食を追求するKYOTO SNT LAB.の中村元計氏、才木充氏、高橋拓児氏との協働により常圧凍結乾燥技術の新たな価値創造に取り組み、乾燥食品の手軽さと、風味豊かな食感を兼ね備えた新たな保存食品を作る技術としての可能性を見出しました。

和食の海外展開や、機内食、宇宙食、災害食などへの展開が期待できるほか、廃棄される規格外の青果物や未利用魚などを乾燥食に加工することで、フードロス削減にも貢献できると考えています。

パナソニックは、今後、技術、製品、サービスの進化を加速するとともに、「新たな食の価値創造」と「社会課題の解決」を目指していきます。

常圧凍結乾燥技術について

冷凍した食品を乾燥した冷気にさらすと氷が昇華して乾燥が進む現象を利用し、常圧の大気圧下で温度を独自のアルゴリズムで制御することで、水分活性を0.6以下まで乾燥させることができます。

出来上がった乾燥食品は香りがよく、1カ月の常温保存が可能なほか、水分活性の調整で食感の異なる乾燥食品をつくることも容易です。

常圧凍結乾燥したフルーツの乾燥品では、既存の真空凍結乾燥と同様に多孔質な構造を持ちつつも細孔の大きさが異なることが確認できており、独自の特長との相関が示唆されます。また、熱風乾燥と比べて、色・香りのほかビタミンCなどの栄養価の成分変化も小さいことがわかりました。

フリーズドライ製法との違い

通常の冷凍庫では「いかに昇華を起こさないようにするか」が課題となります。昇華とは、冷凍した食材に対して乾燥した空気が当たることで、氷が液体化せず直接水蒸気になる現象のことで、昇華によって食材が乾燥し、解凍後にみずみずしさがなくなるなど、食感が変わってしまいます。

反対に、今回の常圧凍結乾燥技術は、昇華を促進して効率的に食材を乾燥させて、ドライ食材を作るという技術です。

フリーズドライ製法との違いは、フリーズドライ製法は冷凍した食材を減圧室で乾燥させる乾燥方法で、減圧下では、低い温度でも水が気化するので、効率的に昇華現象を起こせますが、減圧のための設備コストが非常に高くなるという課題がありました。

それに対して、今回の常圧凍結乾燥技術は、冷凍食材と冷風の温度差によって乾燥するという技術であり、減圧室が必要ではないため、設備コストが低く抑えられる可能性があります。

新たな価値創造の取り組み

KYOTO SNT LAB.のアイディアの起点となったのは、「食品のもつ香りのいかし方」です。

例えば、山椒、生姜、大葉など香りを特長とする食品本来の香りをうまくいかしたまま常温で保存することが可能になれば、湯を注ぐ、レンジで温めるといった手軽な調理で簡単にプロの味を再現できるのではないかと考えました。

常圧凍結乾燥を用いて出来立ての雑炊を乾燥食品に加工すると、湯を注いだ際に既存製法よりも三つ葉や松茸の香りが広がり、より出来立ての状態を再現。

常圧凍結乾燥は、料理において香りを残したい食材で強みを発揮することが確認できました。今回、常圧凍結乾燥を用いた乾燥食品のプロトタイプとして、「鰻の炊き込みご飯」「雑炊」「ぜんざい」の3品を完成させました。

なお、「鰻の炊き込みご飯」は、家電と食のサブスクリプション「foodable」で、限定販売を予定しています(2023年上期中を予定)。

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