SDGsで掲げられている17の目標(Goal)の3番目「すべての人に健康と福祉を(“GOOD HEALTH AND WELL-BEING”)」について説明します。
目次
SDGs3「すべての人に健康と福祉を」の概要
Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages
(あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)
という宣言文になっています。
幼児死亡率、妊産婦の健康改善、HIV(エイズ)、マラリアなどに代表される疾病対策分野では改善傾向が続いおり、一層の加速が求められています。
一方で、5歳の誕生日を迎えられずに命を落とす子どもは依然として600万人を超えています。はしかや結核などの予防可能な病気で毎日1万6,000人の子どもが命を失っているのが現状です。
国連のレポートによると、2017年時点では必須医療サービスを受けられない人が世界人口の半分以上います。また、COVID-19によってこの数十年間の疾病対策分野における改善傾向が反転する懸念があると報告されています。
【出典】国際連合広報センター
SDGs3「すべての人に健康と福祉を」のターゲット
「目標3.すべての人に健康と福祉を」には13個のターゲットがあります。「3-1」のように数字で示される達成目標が9個、「3-a」のようにアルファベットで示される実現のための方法が4個で構成されています。
世界の妊産婦と新⽣児死亡率の減少や、エイズ、結核、マラリアをはじめとした伝染病の根絶といった目標に加えて、「感染症以外での若年者の死亡」「薬物乱⽤やアルコール」「交通事故死」「有害化学物質や土壌・水質汚染」「基礎的な保健サービス」といった様々なターゲットを設定しています。
3.1 | 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出⽣10万⼈当たり70⼈未満に削減する。 | |
3.2 | すべての国が新⽣児死亡率を少なくとも出⽣ 1,000件中12件以下まで減らし、5 歳以下死亡率を少なくとも出⽣1,000件中25件以下まで減らすことを⽬指し、2030 年までに、新⽣児及び 5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。 | |
3.3 | 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、⽔系感染症及びその他の感染症に対処する。 | |
3.4 | 2030年までに、⾮感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。 | |
3.5 | 薬物乱⽤やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱⽤の防⽌・治療を強化する。 | |
3.6 | 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。 | |
3.7 | 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と⽣殖に関する健康の国家戦略・計画への組み⼊れを含む、性と⽣殖に関する保健サービスをすべての⼈々が利⽤できるようにする。 | |
3.8 | すべての⼈々に対する財政リスクからの保護、質の⾼い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が⾼く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 | |
3.9 | 2030 年までに、有害化学物質、ならびに⼤気、⽔質及び⼟壌の汚染による死亡及び疾病の件数を⼤幅に減少させる。 | |
3.a | たばこの規制を強化する すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。 | |
3.b | 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び⾮感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を⽀援する。また、知的所有権の貿易関連の側⾯に関する協定(TRIPS 協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣⾔に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣⾔は公衆衛⽣保護及び、特にすべての⼈々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側⾯に関する協定(TRIPS 協定)」の柔軟性に関する規定を最⼤限に⾏使する開発途上国の権利を確約したものである。 | |
3.c | 開発途上国、特に後発開発途上国及び⼩島嶼開発途上国において保健財政及び保健⼈材の採⽤、能⼒開発・訓練及び定着を⼤幅に拡⼤させる。 | |
3.d | すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因⼦の早期警告、危険因⼦緩和及び危険因⼦管理のための能⼒を強化する。 |
SDGs3「すべての人に健康と福祉を」の日本の達成度スコア
SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると、2021年度における日本の総合スコアは79.8で世界18位でした。
▶︎SDGs達成度ランキング2021|日本は世界18位にワンランクダウン
SDGs目標3の評価に関しては、
- 現状(CURRENT ASSESSMENT):課題が残っている
- 傾向(TRENDS):達成軌道にある
となっており、前年と変わりませんでした。
【出典】SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2021
SDGs3「すべての人に健康と福祉を」の日本の現状
国民皆保険制度のおかげで、医療や福祉サービスへのアクセスは世界と比べて相対的に良く、平均寿命が世界一となっています。一方で、自殺率の高さといった問題を抱えているほか、人口減少と高齢化が進展すると共に、将来的にはレベルを維持するのが難しくなっていく可能性があります。
平均寿命は世界1位
世界保健機関(WHO)が発表した2021年版の世界保健統計によると、2019年のデータで平均寿命が最も長い国は日本で84.3歳でした。2位はスイス(83.4歳)で0.9歳差をつけています。3位は韓国(83.3歳)、4位はシンガポールとスペイン(83.2歳)となっています。
しかし、寿命が長くても寝たきりで介護が必要な状態では幸福だとは言いにくいでしょう。日常生活が制限されずに生活できる期間のことを健康寿命と呼びますが、厚生労働省の調査によると、2016年は男性が72.14歳、女性が74.79歳でした。同年の平均寿命(男性80.98歳、女性87.14歳)との差は男性で約9年、女性で12年となっており、「健康寿命の延伸」が政府の重要なテーマとなっています。
自殺率が高い
人口動態統計の死亡者総数に対する死亡原因別の順位で「自殺」が9位(1.5%)となっています。2012年以降は自殺者数は減っているものの、G8国のなかでは韓国と並んで自殺率が高い国となっています。
2018年度における全年齢層の自殺の原因・動機の1位は「心身の健康問題で、具体的にはうつ病などの精神疾患などが原因になっています。2位は「生活苦、借金などの経済・生活問題」で、生活保護を受けている人の自殺率は一般の人の2倍となっており、特に20代では6倍となっています(2012年)。
認知症高齢者の増加
WHOの「Global Health Estimates」で発表されている、世界の死亡原因の変化に関する調査・予測によると、「アルツハイマー病とその他の認知症」は2016年に5位だったものが、2030年(予測)では4位、2060年(予測)では3位となっています。ちなみに2060年(予測)の1位は「虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症など)」、2位は「脳卒中」です。
日本では、2025年には認知症高齢者の総数が730万人を超えるとの予測値もあり、介護者と要介護者の両方が認知症となる「認認介護」と呼ばれる世帯も増えていく見通しとなっています。(内閣府「平成30年版高齢社会白書」より)
介護難民の発生
2025年には人口の約3分の1が65歳以上の高齢者で占められるようになります。介護に纏わる様々な問題が、2025年頃を境に加速すると予想されていることから、「2025年問題」と呼ばれています。
現時点でも介護職員の数は不足していますが、2025年には労働力不足が38万人に達すると予想されています。また、医療費や社会保障費の負担増大が深刻化することも予測されています。
「日本創成会議」が2015年に公表した内容よると、2025年に団塊の世代が75歳以上になるときには、東京圏で「介護難民」(要介護状態であるのに、介護を受けられない状態にある人)が約13万人も発生すると予想されています。
65歳以上で一人暮らしをしている「独居老人」が年々増加しており、独居老人の高齢者が介護難民になると、孤独死などの問題がさらに深刻化することになるでしょう。
医師の地域間偏在・診療科偏在
医師が大都市圏に集中して、地方圏で不足しやすいという地域間の偏在が問題になっています。
また、診療科間での医師の偏在も問題となっています。特に外科医の数が不足しており、今後、外科手術を行える外科医がいなくなる地域が続出する恐れがあります。
SDGsのその他の目標をみる
SDGs17の目標一覧
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう