SDGsで掲げられている17の目標(Goal)の4番目「質の高い教育をみんなに(“QUALITY EDUCATION”)」について説明します。
目次
SDGs4「質の高い教育をみんなに」の概要
Ensure inclusive and equitable quality education and promote lifelong learning opportunities for all
(全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する)
という宣言文になっています。
ユネスコの統計資料(UNESCO Institute for Statistics)によると、学校に通えていない子ども(6~14歳)が約1億2100万人(初等教育で約5,900万人、前期中等教育で約6,200万人)います。後期中等教育(15〜18歳)も合わせると約2億5,800万人の子供と若者が学校に通えていません。
世界の成人(15歳以上)の平均識字率は、1990年の76%から2016年には86%に伸びています。文字の読み書きができない成人は約7億7,300万人(世界の15歳以上の6人に1人)いて、サハラ以南のアフリカや、女性の識字率が低い傾向にあります。
低所得国においては、世帯の所得格差が子供の学校教育の修了率の格差となって現れており、不平等な状態にあります。COVID-19によってこの格差がさらに拡大することが予想されています。また、修了率は今後悪化する可能性があります。
【出典】国際連合広報センター
SDGs4「質の高い教育をみんなに」のターゲット
「目標4.質の高い教育をみんなに」には10個のターゲットがあります。「4-1」のように数字で示される達成目標が7個、「4-a」のようにアルファベットで示される実現のための方法が3個で構成されています。
2030年までに全ての子供が無償の初等・中等教育を受けられるようにすることや、全ての人が雇用を得て、人間らしく働けるようになるための高等教育や職業教育に平等にアクセスできるにするといったことをターゲットとして設定しています。
特に女性や障害者、先住民などの脆弱層に対する配慮を強調しています。また、全ての人がSDGsの根幹である「持続可能な開発のための教育」を受けることで、SDGsの目標を達成できるようにすることもターゲットとして設定されています。
4.1 | 2030年までに、すべての⼦どもが男⼥の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の⾼い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。 | |
4.2 | 2030年までに、すべての⼦どもが男⼥の区別なく、質の⾼い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。 | |
4.3 | 2030年までに、すべての⼈々が男⼥の区別なく、⼿の届く質の⾼い技術教育・職業教育及び⼤学を含む⾼等教育への平等なアクセスを得られるようにする。 | |
4.4 | 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇⽤、働きがいのある⼈間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成⼈の割合を⼤幅に増加させる。 | |
4.5 | 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住⺠及び脆弱な⽴場にある⼦どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。 | |
4.6 | 2030年までに、すべての若者及び⼤多数(男⼥ともに)の成⼈が、読み書き能⼒及び基本的計算能⼒を⾝に付けられるようにする。 | |
4.7 | 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、⼈権、男⼥の平等、平和及び⾮暴⼒的⽂化の推進、グローバル・シチズンシップ、⽂化多様性と⽂化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 | |
4.a | ⼦ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての⼈々に安全で⾮暴⼒的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。 | |
4.b | 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び⼩島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・⼯学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における⾼等教育の奨学⾦の件数を全世界で⼤幅に増加させる。 | |
4.c | 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び⼩島嶼開発途上国における教員研修のための国際協⼒などを通じて、質の⾼い教員の数を⼤幅に増加させる。 |
SDGs4「質の高い教育をみんなに」の日本の達成度スコア
SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると、2021年度における日本の総合スコアは79.8で世界18位でした。
▶︎SDGs達成度ランキング2021|日本は世界18位にワンランクダウン
SDGs目標4の評価に関しては、
- 現状(CURRENT ASSESSMENT):達成
- 傾向(TRENDS):達成を維持
となっており、前年と変わりはありませんでした。
【出典】SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2021
SDGs4「質の高い教育をみんなに」の日本の現状
世界と比較して相対的にはSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の達成度が高い日本ですが、問題は存在しています。
経済格差による教育の機会不平等
SDGs1「貧困をなくそう」の現状(世界と日本)で紹介しているように、日本のひとり親世帯の貧困率は50.8%(2015年)と半数を超えており、OECD加盟国35カ国中最下位となっています。(OECD調査より)
厚労省の調査結果(平成30年度確定値)によれば、2018年度の生活保護受給者の数は約200万人となっています。
こうした経済格差が進学率の差となって表れています。全世帯の大学進学率が73.2%なのに対して、生活保護世帯の進学率は33%となっており、2倍以上の開きがあります。
進学塾や家庭教師などの費用を出せるかどうかで教育を受ける機会に差がつきます。また、大学へ通うには、入学金や授業料などの費用が必要になるために諦めざるを得ないといったことが頻繁に起こっています。
このように、家庭の経済的な事情によって教育の機会の平等が損なわれています。
不登校問題
日本では近年、不登校児童・生徒の増加が問題化しています。病気と経済的な理由以外で年間30日以上欠席した中学生は約10万人います。
登校しても教室に入れないなど不登校傾向にある生徒を加えると、その数は約43万人に達しています。(日本財団「不登校傾向にある子供の実態調査」2018年より)
学校へのアクセスの問題
少子化を受けて学校の統廃合が進み、山間部地域などでは登下校に大変な苦労を強いられる子供達が増えているといった問題があります。
SDGsのその他の目標をみる
SDGs17の目標一覧
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
5.ジェンダー平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう