SDGsなどのサステナブルな取り組みの一つとして「堆肥化(コンポスティング)」への注目度が高まっています。生ゴミを堆肥にして家庭菜園に利用する人も増えています。
一方で、国単位では米国は食料廃棄物の推定38%、EUでは57%が堆肥化されており、日本では焼却処理が基本となっています。サーマルリサイクル(熱利用)されてはいるものの、二酸化炭素を発生させているほか、大型ゴミ焼却の建設・維持にかかるコスト負担は重く、サステナブル(持続可能)とは言い難いでしょう。
ここでは、堆肥化(コンポスティング)について、意味や、メリットデメリット、家庭で堆肥化する方法について紹介します。
目次
堆肥化(コンポスティング)とは
堆肥化とは微生物を利用して生ごみなどの有機物を発酵・分解させ、有機肥料を作ることです。コンポスティング(コンポスト化)ともいいます。
捨てられるはずだった生ごみを堆肥化することで、土壌改良材料や肥料として利用することができます。堆肥には植物が栄養分を吸収するために必要な要素が含まれていることに加えて、土壌中の有機物質を増やし、土壌の保水力を高め、植物の生育に良い影響を与えます。また、廃棄物の削減方法としても注目されています。
堆肥が新しい技術かといえばそうではありません。昔、日本では生ごみや糞尿などを堆肥として田畑の土を作っていました。しかし、近代では生産性を重視して化学肥料を使うことがほとんどです。また、ごみの種類も増えてまとめて焼却されるようになりました。
一方、近年では市町村でコンポスト化の事業が進められることが増えてきています。循環型社会の取り組みとして、再注目されています。
堆肥化(コンポスティング)のメリット
堆肥化するメリットはいくつかあります。「ごみの取り扱いを容易にする」「有機物を分解する」「病原菌などの死滅化・不活性化する」「長期の保存が可能になる」といったことが挙げられます。それぞれのメリットを見てみましょう。
①ごみの取り扱いを容易にする
ごみは悪臭がしたり、ベトベトしていたりするため、取り扱いが容易ではありません。ごみに水分が含まれていることと腐敗が原因となっています。堆肥化することで水分の量を減らせます。また、ごみもある程度分解されるので、取り扱いが容易になるのです。
②有機物を分解する
生ごみをそのまま土壌に埋めると、土壌中で有機物の分解が始まります。有機物が分解される時は酸素を消費し、二酸化炭素を排出します。そうすると土壌中の酸素が少なくなり、作物の成育に悪影響を及ぼす可能性があるのです。そのため、堆肥化の過程で有機物を分解することで有機物の含有量を減らすことができます。
③病原菌などを死滅化・不活性化する
堆肥化の過程で発酵熱が生じます。有機物が分解される時に発熱するのです。熱によって、病原菌が死滅したり不活性化したりします。
④長期間保存することが可能になる
堆肥化することで、堆肥を長期間保存できるようになります。
堆肥化(コンポスティング)のデメリット
堆肥化のデメリットとしては、「手間がかかる」「時間がかかる」「お金がかかる」といったことが挙げられます。
①手間がかかる
空気を送り込むことで、微生物が有機物を分解するのを助けるために、定期的に攪拌する(かき混ぜる)必要があります。また、微生物が生ゴミを分解しやすいようにするために、生ゴミを細かく切る必要もあります。果物の種や野菜の芯などは分解に時間がかかるため、避けておいた方が無難でしょう。
②時間がかかる
微生物が有機物を分解するのに時間がかかるため、堆肥ができるまでには数ヶ月程度の時間を要します。時間がかかり過ぎる場合は、分解しにくいものを混ぜていないか確認してみましょう。
③お金がかかる(場合がある)
電気による温風で生ごみを乾燥させる装置は高価です。また電気代もかかります。エコのために堆肥化を考えるのであれば、堆肥化のために電気を使うというのは本末転倒でもあります。
堆肥化(コンポスティング)の流れ
生ごみなどの有機性廃棄物を堆肥にする流れは、おおよそ次の通りです。
有機性廃棄物の主な成分は、動植物に由来する廃棄物となります。料理の過程で発生する野菜のカスや魚や肉の切れ端などの生ごみが代表的です。
この有機性廃棄物を微生物が分解すると堆肥になります。これは自然界でも行われていることです。それを、人間が手を加えて加速させることを堆肥化というのです。微生物の中でも好気性の微生物が有機物を分解し、好気性発酵することで堆肥化します。
好気性発酵には、好気性の微生物が活動しやすい環境を作り、維持することが重要です。まず、好気性微生物は呼吸するために空気が必要です。また、好気性微生物の栄養源が必要になります。有機物には分解されやすいものと、分解されにくいものとに分かれます。このうち、分解されやすい方の有機物が微生物の栄養になります。
また、好気性微生物は空気を利用して、有機物を酸化分解し、酸化により発熱し水分を蒸発させるため、空気を必要とします。水分は多すぎると通気性が悪くなります。しかし、少なくても微生物の増殖が抑制されてしまうため、水分の調節が大切になります。適切な水分管理ができれば堆肥化の処理時間を短くすることも可能です。
好気性微生物が有機物を分解する時に発酵熱が生じます。その際、コンポスト内部は60度以上にも達します。それによって水分が蒸発し、その熱によって病原菌などが死滅・不活性化します。
コンポストを作る際の注意点
コンポストを作る際の注意点をいくつか列挙します。
・動物性の食品残渣は避ける
コンポストに肉や魚などの動物性の食品残渣を投入すると、腐敗が進んで匂いが強くなるだけでなく、害虫やネズミの発生の原因となります。避けるようにしましょう。
・塊状になっている有機物は小さくする
落ち葉や草などの有機物が塊状になっている場合には、事前に細かく破砕しておくと、分解が早く進みます。また、容器に投入する前にも、手でちぎって細かくすると良いでしょう。
・有機物と土を混ぜる
分解した有機物を肥料として活用するためには、有機物と土を適度に混ぜて使用することが重要です。これによって、栄養分を均一に土壌に供給することができます。
・匂いの発生に注意する
コンポストは有機物の分解が進むため、匂いが発生することがあります。特に、水分が多すぎる場合や、動物性の食品残渣を投入した場合には、匂いが強くなる傾向があります。定期的に混ぜたり、湿度や投入する有機物の種類に注意することで、匂いの発生を防ぎましょう。
・キッチンから遠ざける
コンポストには、食品くずなどの有機物を投入するため、キッチンに置くことが多いですが、湿度が高くなりやすく匂いが発生する原因になります。キッチンから遠ざけるようにしましょう。
家庭で堆肥化(コンポスティング)する方法
大規模な堆肥化処理施設には「堆積方式」「開放型の撹拌方式」「密閉型の撹拌方式」に分かれます。
現在注目されているのは、家庭でもできる堆肥化です。家庭で堆肥化ができるコンポスターには「設置型コンポスト」「回転式コンポスト」「密閉型コンポスト」「ダンボールコンポスト」「電動生ごみ処理機」「ミミズコンポスト」といった種類があります。
①設置型コンポスト
庭の土に穴を掘って、容器の下の部分を土の中に埋めます。フタがついており、生ごみや枯れ葉などをコンポストの中に。容器の中身がいっぱいになったら、そのまま2~3カ月間発酵させます。
②回転式コンポスト
生ごみや枯れ葉などをコンポストに投入して、コンポスターの本体を回転させます。回転させることで堆肥化に必要な酸素をコンポスター内部に供給します。
③密閉型コンポスト
密閉した容器の中に、生ごみと発酵促進剤などを混ぜ入れてごみを発酵させるものです。強い発酵臭がするので、集合住宅にお住まいの方は注意が必要です。
④ダンボールコンポスト
まず、ダンボールに基材(ビートモス・もみ殻くん炭)を入れます。そこに生ごみを入れてかき混ぜます。3週間程度発酵すると堆肥ができます。作り方が簡単で、かつ低価格なコンポストです。2~6ヶ月ごとに交換が必要になります。
⑤電動生ごみ処理機
電気による温風で生ごみを乾燥させ堆肥化します。室内に設置できますが、本体が高価です。また、電気代がかかり、音がするというデメリットがあります。
⑥ミミズコンポスト
ミミズと土を入れたコンポストに生ごみを投入します。ミミズが生ごみを食べることで分解する仕組みです。
おわりに|堆肥化(コンポスティング)とは
堆肥化(コンポスティング)は目新しいものではありませんが、現実的な方法として普及させる普及させるための斬新な方法が求められています。堆肥化の運営を成功させるためには、市民の教育や廃棄物の収集・輸送・処理に関わるインフラとオペレーションの構築も必要になります。
個々人が自家製のコンポストを家庭菜園に用いたりすることで貢献できる一方で、地方自治体の積極的な取り組みが期待されています。