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食に関する社会問題一覧

食に関する社会問題一覧

「食」を巡っては、貧困・飢餓・健康・環境への負荷といった社会問題が数多く存在しており、持続可能性に対する負のインパクトは巨大なものとなっています。

ここでは、そのような食に関する社会問題を一覧にしてご紹介します。

海の砂漠化(磯焼け)

近年、日本の近海の至るところで、コンブやワカメなどの海藻が姿を消して海底の砂や岩が目立つようになることで、海が砂漠のような状態になってしまう「磯焼け」という現象が起きています。

「磯焼け」は、

浅海の岩礁・転石域において、海藻の群落(藻場)が季節的消長や多少の経年変化の範囲を越えて著しく衰退または消失して貧植生状態となる現象

と定義されています。

磯焼けが起きる直接的な原因としては、ウニやアイゴなどの海藻を食べる生物による「食害」が挙げられます。ほかには、海流の変化による「貧栄養化」や、海洋汚染によって海が濁ることにより光が不足して、海藻の光合成作用が不活発になることなども理由として挙げられています。

その直接的な原因の背後には、地球温暖化による海水温の上昇によって、生態系が変化していることが背景にあると推測されています。

本来であれば冬場の水温低下でウニの活動は弱まり、海藻が成長しますが、海水温の上昇でウニの活動が弱まらなかったり、生殖活動も行なわれ続けるため、海藻が食べ尽くされてしまいます。しかも、エサがなくても長期間生きることができるという特性もあります。身が痩せており、商品価値が低いものが中心となっているため、漁業者にとっての恩恵もありません。

また、アイゴやイスズミ、ブダイなどの植食性魚類による食害もあります。こちらも海水温の上昇によって生息域が北上し、アイゴの大群がカジメなどの海藻を食べ尽くしてしまっているとのことです。

近年では、ウニを回収して食品残渣などを餌として与えて育てて商品化するという試みが各地で行われています。また、アイゴに関しても、特有の臭みがあり、棘に毒があることから市場価値が低いのですが、餌や調理法などを工夫する料理人の活動なども試みられています。

塩害

地球温暖化に起因する海面上昇によって、世界中で10億ヘクタール以上もの農地が塩害を受けているといわれています。

海面上昇によって海水が地下水面に浸透すると、海岸線から離れた内陸でも地下水が塩化します。一度洪水や高潮などで海水を被ってしまった土壌は塩害によって農業が困難になります。

現在、世界の農地の4分の1近くが塩害に侵され、海面上昇によりその被害は深刻化しているとの報告もあります。(出典:Saline Agriculture Worldwide

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温暖化ガス排出

IPCC「土地関係特別報告書」の概要(2020年度 環境省)によれば、世界全体の農業・林業及びその他土地利用による温暖化ガス(GHG)の排出量(2007~2016年)は、人為起源による総排出量の約23%に相当したとのことです(二酸化炭素(CO2)排出量は約13%、メタン(CH4)は約44%、一酸化二窒素(N2O)は約82%)。

グローバルフードシステムにおける、食料生産・製造の前後に行われる活動に関連する排出量を合算すると、人為起源の正味の温暖化ガスの総排出量の21~37%を占めると推定されています。

車や飛行機を含めた輸送業は全体の約13%であることと比べると、フードシステムが温暖化ガスの排出に占める割合の大きさが想像しやすいでしょう。

WRIが2016年に発表した報告書によると、「食物の環境への影響については牛肉が特に顕著であり、タンパク質1グラム当たり豆に比べて20倍の土地が必要で、20倍の温暖化ガス(GHG)を排出する。そして、牛肉の価格は豆の3倍」とのことです。

2021年の世界人口は78億7500万人となっていますが、2050年には90億人に到達し、FAOの予測では、食肉の摂取量は世界全体で3割近く増加すると見込まれているため、このままでは更に温暖化ガス排出量が増加してしまいます。

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魚粉(養魚飼料の問題)

世界的な天然の水産資源は減少しており、それに対する解決策として養殖が拡大しています。既に世界で生産される水産物の半分以上は養殖となっており、今後も更になる成長が予想されています。

一方で、水産養殖に使われる餌として、天然の魚を乾燥して粉末状に砕いた「魚粉」が主成分となっているため、天然魚を餌として養殖を拡大し続けるのは持続可能ではありません。

特に、IUU漁業由来の原料を使うことは、養殖の持続可能性を損なう大きな原因になりますが、日本は先進国のなかではIUU漁業の占める割合が圧倒的に高いと言われています。

「Marin Trust認証」を満たしたペルーのカタクチイワシなどを使用したり、人間が食用とする魚の骨や内臓、頭などの非可食部位の再利用することによって、持続可能な魚粉を使用することが求められています。

こうした持続可能性に配慮した飼料は、ヨーロッパではスタンダードなものになっていますが、日本ではこうした配慮を実践している飼料メーカーは残念ながら主流派ではありません。

コーヒーの2050年問題

気候変動対策は世界の最重要課題の一つとなっていますが、気候変動によってコーヒー産業にも危機的な影響が及ぼされることが予想されています。

国際調査機関のWCR(ワールドコーヒーリサーチ)は、2050年にはアラビカ種の栽培適地が2015年比で50%にまで減少すると指摘しています。

コーヒーの供給の不安定化が懸念されている一方で、需要は世界的に増加傾向にあります。その背景としては、中国やインドといった人口の多い新興国が経済成長を遂げていること等があります。

このように、コーヒーに対する需要が増加する一方で、気候変動によって供給が不安定化し、需要と供給のバランスが崩れてしまうという懸念が「コーヒーの2050年問題」です。

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耕作放棄地の増加

農林業センサスによると

以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地

を耕作放棄地としています。

日本の耕地面積は長期的に減少傾向が続いており、2018年には467万haとなりました。耕作放棄が非農業用途への転用を上回って推移していることが、耕地面積が減少する大きな要因となっています。

2017年の耕作放棄地面積は2012年より4万3千ha(13%)増加して38万6千haとなりました。増加率は近年鈍化しているものの、耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達しています。

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孤食

孤食とは「1人で食事すること」ですが、特に「孤独を感じるような寂しい食事」という意味で用いられます。

孤食は、栄養の偏りや食生活リズムの崩れなど、身体的な健康面への悪影響が懸念されるほか、コミュニケーションの欠如、社会性・協調性の低下、精神的不安定など精神的な健康面への悪影響があると考えられています。孤食に伴って偏った食事が多くなっており、肥満と低栄養という一見相反する問題が同時に深刻化しています。

厚労省が2019年に調査した「国民健康・栄養調査」の結果によれば、特に20代女性の1日当たり平均摂取カロリーが1600キロカロリーと低く、しかも年々低下傾向が続いています。食糧難の時代よりも栄養摂取に問題を抱えている状況です。

日本では単身世帯が増加しており、2030年までに全世帯の4割に達すると予想されています。なかでも高齢者の単身世帯が増加することが予想されています。

2015年の国勢調査によると、65歳以上の高齢者は日本全国で約3,350万人となっていますが、このうち約593万人が単身世帯となっており、2025年には全体で約750万人に達すると予測されています。

孤食は「低栄養」や「うつ病」のきっかけや引き金となり、高齢者の健康寿命を縮めてしまうリスクを抱えているため、対策が必要な社会課題となっています。

タンパク質危機

2021年の世界人口は78億7500万人となっていますが、2050年には90億人に到達すると予測されています。

世界人口の増加に加えて、新興国の食生活が欧米化(肉を多く食べる)の影響があります。畜産には大量の穀物を必要とするため、必要な穀物生産量は人口の増加よりも速いスピードで増加しています。

これまでは、農地の拡大や漁獲量の増加、生産性の向上などによって需要増加に対応してきましたが、環境の破壊や汚染、資源枯渇など、限界が見えてきています。

このままでは、早ければ2025〜30年頃にタンパク質の需要と供給のバランスが崩れ始めると予測されています。この予測のことを「タンパク質危機(protein crisis)」と呼びます。

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低い食料自給率(日本)

食料自給率とは、国の食料供給に対する国内生産の割合を示す指標です。単純に重量で計算することができる「品目別自給率」と、食料全体について共通の「ものさし」で単位を揃えることにより計算する「総合食料自給率」の2種類があります。後者の総合食料自給率は、熱量で換算する「カロリーベース」と金額で換算する「生産額ベース」があります。

食料安全保障の観点からカロリーベースの総合食料自給率で見てみると、令和3年度における日本のカロリーベース総合食料自給率は38%となっています。

1人1日当たり国産供給熱量(860kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,265kcal)= 38%

(参考)農林水産省ホームページ

日本の食料調達リスクを下図にまとめました。

日本の原料調達リスク
【出典】Koru Inc.

供給面では、①気候変動による干ばつ・洪水等の増加による収量低下、②土地や水利用の限界による収量増加の限界、③生態系破壊や乱獲による資源減少、といった構造的な要因の他に、④ロシアによるウクライナ侵略やCOVIDのパンデミックによるサプライチェーンの混乱、といったイベントによる要因も挙げられます。

需要面では、⑤世界人口の増加による食料需要の増加、⑥新興国の経済成長に伴い、家畜の肉を食べる人が増加することによる飼料用穀物と水需要の増加、⑦バイオ燃料・素材需要の増加、といった要因が挙げられます。

これらの要因を背景として食料価格は世界的に上昇傾向にあります。その一方で、日本は人口減少と高齢化によって食料需要が減少していることから購買力が低下傾向にあり、他国との食料調達競争に敗れる危険性が高まっています。

窒素肥料の過剰使用

窒素肥料は農家にとっては水分が少なくて軽いので簡単に畑にまくことができます。また、栄養がすぐに植物に届いて効果が短期間に出るといったメリットがあります。窒素肥料の進化が単収の向上に直結し、人類の食を賄ってきたと言えます。それほど有益な窒素肥料ですが使いすぎると大きなデメリットがあります。

  • 土壌の有機物の破壊
    強い窒素が土壌の有機物を破壊します。微生物が減ると土は弾力性を失い、固くて活力のない土地へと変わってしまいます。
  • 温室効果ガスの発生
    土壌最近が硝酸肥料を分解することで亜酸化窒素が発生します(二酸化炭素の298倍の温室効果)
  • 水の汚染
    作物が消費しきれない窒素は地下水や河川を経由して海に流れでて水の華と呼ばれる藻類の第繁殖やデッドゾーンと呼ばれる酸欠海域を発生させます。
  • 病害虫の増加
    窒素の吸収量が多いと植物体内のアミノ酸が増えます。そうするとアブラムシが寄ってきます。アブラムシの分泌物は糖度が高いためアリを呼び寄せることにつながります。それらの虫を殺すために農薬が必要になります。

生ゴミの焼却問題

2022年3月に環境省が発表した調査結果によると、令和2年度において日本国内には1,056基のごみ焼却施設がありました。2008年のOECDのデータによれば、ごみ焼却施設数は世界一となっており、世界の焼却炉の半分以上が日本にあるという状況です。また、焼却施設の数と同様に、燃やして処理するごみの量も多く、2017年のOECDのデータによれば、アメリカの値を超えて世界で最多となっています。

日本にごみ焼却施設が普及した背景としては、国土が狭くて埋め立て処分する土地がなく、ごみを減量する必要があったこと。夏は蒸し暑く、臭いの問題もあり、衛生の面からも熱処理が重視された結果でした。また、埋め立て処分場よりも焼却施設の方が住民の反対も少なかったため、国が補助金を出してごみ焼却施設の建設を後押ししました。しかし、焼却によってごみを減量しているにも関わらず、最終処分場の受け入れ可能な容量は逼迫しています。

多くの自治体で「燃えるごみ」「燃やすごみ」と呼んでいるごみの、40%前後が生ごみとなっています。生ごみの重量のうち80〜90%が水分となっているため、生ごみを燃やすのは水を燃やすのに等しい行為といえます。一方で、焼却せずに埋め立て処分する場合でも大量のメタンガスが生成されるという問題があります。そのため、世界では埋め立て処理で発生するメタンガス再利用したり、堆肥化したりする方向に切り替わりつつあります。

近年では、「土壌改良をすると空気中の二酸化炭素の吸収量が上がる」という発表も注目を集めています。堆肥は多くの微生物を含んでおり、劣化した土地を再生します。

生ごみを焼却し続けるのは限界が来ています。世界は新冷戦によって資源の調圧が不安定な状況となっており、化学飼料や肥料も奪い合いとなっています。生ごみで飼料や肥料をつくれば日本の農業安全保障にも資することにつながるでしょう。

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農業の人手不足問題

農業人口の減少に伴って耕作放棄地も増加傾向、同時に耕地面積は減少傾向にありますが、農業総産出額は2011年の8.1兆円を底として2017年には9.3兆円と微増傾向にあります。この背景としては、農業経営の大規模化や法人化が進んできたことが背景にあります。

基幹的農業従事者(経営者)は減少し、臨時雇いの働き手(非正規雇用者)は増加しているという状況です。

少子化・高齢化が進展する日本においては、働き手を増やすのは現実的には困難なため、自動化によって必要な労働力そのものを減らしていくことを目指していますが、それにも限界があるため、産地間での人材の相互供給(働き手の産地間リレーも含む)や、地域内で閑散期や繁忙期が重複しない異業種との人材の相互供給といったような、細やかな人材供給の仕組み化が求められています。

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バタリーケージ(ケージ飼育)問題

日本人一人あたりの卵の消費量は年間340個で世界第2位となっています(1位はメキシコ)。生でも食べられる優れた衛生管理と低価格によってこの食習慣は支えられてきました。

しかし、生産効率と衛生管理のために、狭い檻の中で鶏を大量に育てる日本の「バタリーケージ(ケージ飼育)」という仕組みは、採卵作業を効率よく行えたり、衛生管理がしやすいなどのメリットがありますが、鶏の身体的・精神的な健康を害していると指摘されています。EU(欧州連合)では2027年までに採卵鶏などのケージ飼育を撤廃する方針で、米国でも同様の動きが進んでいます。

この波はアジアにも広がっており、養鶏が盛んなタイでは大手食品企業がケージを使用しないことを意味する「ケージフリー」を推進。韓国ではにわとり1羽あたりの飼育スペースを定めた法律を施行しています。

一方、日本では取り組みが遅れており、現状では鶏舎の9割以上がケージ飼育を採用しています。国際的な動物保護団体であるWAP(世界動物保護協会)が50カ国を対象に調査して作成した2020年版の動物保護指数(API)では、A~Gの7段階評価で日本は「E」という低い評価を受けています(EU諸国はB、C評価が中心)。

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フードシステムの負のコスト

国際的な食糧と土地利用分野のNGOであるFOLU(The Food and Land Use Coalition)が2019年9月に発表したレポートの中で、世界のフードシステムの年間市場価値は10兆ドルであるのに対し、目に見えない負のコストが12兆ドルであるとの試算結果が示されました。そして、何の対策もしなければ、フードシステムがもたらす負のコストは、2025年までに16兆ドルまで膨れ上がると警告しています。

12兆ドルの負のコストの内訳は以下のようになっています。

  • 健康: 6兆6000億ドル
    【内訳】
    ・肥満によるコスト: 2兆7000億ドル
    ・低栄養による健康被害:1兆8000億ドル
    ・その他、農薬・抗微生物薬耐性からもたらされる健康被害:2兆1000億ドル
  • 環境(気候変動など): 3兆1000億ドル
  • 経済(フードロスなど): 2兆1000億ドル
Growing Better report 2019
【出典】Growing Better report 2019

フードデザート

英語で「food desert」と綴ります。直訳すると「食の砂漠」となります。「食料供給システムの崩壊と社会的弱者の集住が併発しているときに発生する社会問題」のことを意味しています。

イギリスでは1970〜1990年代半ばに郊外の大型店が増えた影響で、都市部の中小食料品店やショッピングセンターが減少しました。その結果、郊外まで買い物に通えない都市部の貧困層が、値段が高く、生鮮品の品揃えが悪い雑貨店での買い物を強いられるようになりました。そのような状況を問題視したイギリス政府によって名付けられました。

日本でも2000年頃から郊外大型店の増加に伴って中心商店街の衰退が進行した結果、同様のフードデザート問題が生じています。過疎化や少子化・高齢化による地方の中山間地域におけるフードデザート問題が顕在化していますが、今後は急速に高齢化が進んでいる大都市郊外の住宅団地で問題が拡大すると見られています。

フードデザート問題は、食事の栄養バランスの偏りを生み、「低栄養」などの健康問題を引き起こしていきます。欧米では、フードデザート問題は単なる買い物難民の問題にとどまらない、社会的排除(Social exclusion)の問題として政府レベルでの対策が進められています。

フードロス(食品ロス)

まだ食べられる食品なのに捨てられてしまう食品廃棄物のことを「フードロス」や「食品ロス」と呼びます。

農林水産省では、不可食部(食べられないもの)も含めた食品廃棄を「食品廃棄物」と呼び、可食部(食べられるもの)の食品廃棄を「食品ロス」と定義しています。

一方で、海外では消費者の目に触れる前の供給過程で発生する食品廃棄を「Food Loss(フードロス)」、食べ残しなどによる食品廃棄を「Food Waste(フードウェイスト)」と呼ぶのが一般的です。ここでは、農林水産省の「食品ロス」の定義を基に日本国内の話を進めます。

平成29年度の推計では、日本の食品廃棄物は全体で2,550万トンとなっています。内訳は、事業系が1767万(約69%)トン、家庭系が783万トン(約30%)となっています。

そのうち、日本の食品ロス(可食部の食品廃棄)は612万トンとなっており、食品廃棄物全体の24%となっています。612万トンの内訳は、事業系(規格外品・返品・売れ残り・食べ残し)が328万トン、家庭系(食べ残し・過剰除去・直接廃棄)が284万トンとなっています。

最終的には1055万トンが焼却・埋立されており、食品廃棄物全体に占める量は41%となっています。

このほか「産地廃棄(圃場廃棄)」と呼ばれる、規格外や価格維持のために収穫後に出荷しないで廃棄される野菜・穀類・果実の量は年間約400万トンにのぼりますが、これらは食品ロスの数値には含まれていません。

食品廃棄物等の利用状況等
【出典】 農林水産省「食品廃棄物の利用状況(平成29年度推計)<概念図>」

フードロス削減に挑戦するビジネスまとめ

水不足問題

地球上の水は97.5%の塩水と2.5%の淡水から構成されています。淡水の70%が氷河・氷山として固定されていて、残りの30%もほとんどが土中の水分や地下深くに存在しているため、人が利用しやすい淡水は地球上の水の0.01%にすぎません。

そのような貴重な淡水の約7割は農業セクターで使用されており、今後も農業に必要な淡水の量はいっそう増えていくことが確実視されています。

そのような状況にも関わらず、地球温暖化に起因する海面上昇によって、世界中で10億ha以上もの農地が塩害を受けているといわれています。現在、世界の農地の4分の1近くが塩害に侵され、海面上昇によりその被害は深刻化しているとの報告もあります。(出典:Saline Agriculture Worldwide

日本は安全な水にアクセスしやすい国ですが、バーチャルウォーターという見方からは海外の水に依存しています。2005年に日本が海外から輸入したバーチャルウォーターの量は約800億m3となっており、日本国内で使用される年間水使用量と同程度を輸入しているのと同じ状況となっています。(出典:環境省「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書 2013」

未利用魚・低利用魚

漁獲したにも関わらず使われなかったり、ただ同然で取引されている魚を、未利用魚・低利用魚と呼びます。言葉の定義は明確には定められていません。

規格外(小さすぎる)、棘があったりして捌きにくい、漁獲量が少なく知名度が低い、反対に獲れすぎて安くなる、等といった様々な理由で取引されにくいことが原因となっています。

海水温が上昇していることで魚の生息海域が変化してきているため、以前とは異なる魚種が獲れることが多くなっています。すると、その地域では知名度が低く、調理方法なども分からない、すなわち食文化がないために売れないといったことが発生するようになっています。

野生鳥獣被害

野生鳥獣による被害は、農林漁業を中心に深刻な影響を及ぼしています。

農作物の被害額は、平成22年度(2010年度)の239億円から令和元年度(2019年度)には158億円へと減少傾向にありますが、下げ止まりの傾向にあります。被害の内訳は、シカが53億円(34%)と最大になっており、イノシシが46億円(29%)で続いています。

鳥獣被害によって営農意欲が低下して離農が増加し耕作放棄地が増加、それによって更なる鳥獣被害が発生するという悪循環も産んでいます。

また、森林の下層植生の消失等による土壌流出と希少植物の食害といった問題があり、被害面積は全国で年間約5千ha(2019年度)となっており、シカによる被害が約7割を占めています。

野生鳥獣被害の解決に挑むジビエビジネスまとめ

容器包装プラスチック

エレンマッカーサー財団が2016年に発表した『The New Plastic Economy』によれば、世界における容器包装プラスチックの使用量は、1964年の1500万トンから2014年の3億1100万トンへと過去50年で急増しており、さらに今後20年で現在の生産量の2倍になると予想されています。

また、2018年6月に発表された国連環境計画(UNEP)の報告書『シングルユースプラスチック』によれば、プラスチック生産量(2015年)を産業セクター別にみると、容器包装セクターのプラスチック生産量が最も多く、全体の36%を占めています

このように、食に関わる産業は大量のプラスチックを使用しており、海洋プラスチックをはじめとする環境問題に大きな影響を及ぼしています。

プラスチックゴミ問題 世界と日本の現状

乱獲・IUU漁業

乱獲・IUU漁業によって水産資源の持続可能性が危機に陥っています。

国際連合食糧農業機関(FAO)による2020年の報告では、全魚種資源の3分の1が乱獲されており、全体の約60%がこれ以上の漁獲増に耐えられない状態であると伝えられています。

Illegal, Unreported and Unregulated fishing、すなわち、違法・無報告・無規制で行なわれる漁業は、水産資源管理の実効性を脅かす大きな国際問題のひとつです。

世界の水産物消費量は年々増加を続けており、今後も増加していくことが見込まれます。こうした過剰な資源の利用が続けば、増加が予想される世界の水産物需要を支えられなくなるでしょう。

おわりに|食に関する社会問題一覧

グローバルフードシステムの負のコストは12兆ドルと試算されており、食が地球の持続可能性に与えるインパクトの大きさが分かります。

しかし、影響力が大きい産業であるからこそ、同時に大きな可能性を秘めてもいます。多くの人がこの事実を知って、食に関わる行動を変容させることで、地球の持続可能性をおおいに高めることができるでしょう。食を持続可能にする「サステナブルフード」の考え方や、具現化するための方法についてまとめていますので参考にしてください。

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