2017年度のエレンマッカーサー財団のレポートによれば、世界で排出される二酸化炭素の約10%はファッション(繊維)産業が排出しており、このままだと2050年には26%を占めると予想しています。
欧州の高級品ブランドを中心に、ファッション(繊維)産業を持続可能性にするための取り組みが始まっています。
目次
ファッション協定(THE FASHION PACT)とは?
2019年8月、フランスのビアリッツで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、グッチなどを手掛けるケリング・グループが主導して、欧米を中心とするファッション・テキスタイル企業32社(150ブランド)が署名した協定です。
「気候変動(Climate)」「生物多様性(Biodiversity)」「海洋保護(Oceans)」の3つを柱に、共通の実践目標を掲げました。
それでは、3つの柱ごとに目標を見ていきましょう。
気候変動
2050年までのカーボンニュートラルを達成するために、Science Based Targets for Climate(気候変動に関する、科学的根拠に基づく実行・測定可能な期限付き目標)を実装する、としています。
具体的には、2025年までに原材料の25%を持続可能な素材にする。また、2030年までに自社の操業に関し、再生可能エネルギーへの転換を100%にするという目標を掲げています。
生物多様性
Science Based Targets for Nature(自然に関する、科学的根拠に基づく実行・測定可能な期限付き目標)を策定・実装する、としています。
具体的には、2020年にそれぞれの生物多様性に関する構想を描く。また、2025年までに森林破壊を無くし、持続可能な森林管理を支えることを目標に掲げています。
海洋保護
海洋の環境に与えるファッション産業の負の影響を減らす、としています。
具体的には、有害なプラスチックプラスチック包装材を、B2C分野で2025年までに、B2B分野で2030年までに廃止する。
また、プラスチック包装材の半分以上を完全にリサイクル可能なものに変更することを、B2C分野で2025年までに、B2B分野で2030年までに実施するということを目標に掲げています。
加盟している企業は?
The Fashion Pactの公式サイトで公表されている情報によれば、2021年7月4日現在で71社が参加しており、世界のファッション産業全体のシェアの3分の1を占めるほどになっています。
グッチやサンローランを擁するケリング、シャネル、エルメス、ナイキ、アディダス、H&M、ザラを擁するインディテックスなどとなっています。
加盟している日本企業は?
日本からは、2020年12月10日に日本企業として初めて加盟したアシックス(ASICS)1社のみとなっています。(2021年8月3日現在)
アシックスでは、2050年までのカーボンニュートラルを目指し、産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標を設定することを表明しています。
2030年に向けた温室効果ガス排出量削減目標は、事業所における二酸化炭素排出量を2015年比で38%削減、サプライチェーンでの二酸化炭素排出量を製品あたり同55%削減を目指しています。また、両目標とも2021年に削減目標を引き上げ予定としています。
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の「ファッション業界気候行動憲章」、持続可能なアパレル産業構築を目指す世界的連合「Sustainable Apparel Coalition」に加盟するなど、日本企業として率先的に国際的な枠組みに参加しています。
おわりに|ファッション協定(THE FASHION PACT)とは?
ファストファッションの拡大によって、衣服が使い捨てのように大量消費され、廃棄されるという時代が続いてきましたが、ようやくファッション産業も持続可能性を模索する段階に入ってきたように思います。
この分野でも国際的な枠組みに対する日本企業の積極的な動きは見られませんが、アシックス以外の日本企業の今後の動向についても注視していきたいと思います。