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リカレント教育とは?リスキリングとの違いやサバティカルについて

リカレント教育とは?リスキリングとの違いやサバティカルについて

人生100年時代と言われる現代において、リカレント教育は人生の可能性を広がるための有力なツールとして注目を集めています。平均寿命が延びたことや働き方改革などの影響によって、定年後も新しい仕事に就いたり起業したりといったように、学び方や働き方のスタイルが変化していくでしょう。

SDGs17の目標4.質の高い教育をみんなに目標8.働きがいも経済成長もとの関係性が深い「リカレント教育」について紹介します。

リカレント教育とは?

「リカレント教育」(英語:recurrent education)とは、学校教育を終えた社会人が職業能力の向上につながる高度な知識・技術や教養を身につけるために、生涯に渡って繰り返し学習することを意味します。日本においては、同じような概念で「生涯学習」という言葉が使われてきました。

義務教育や高校・大学などの高等教育を修了した後は、どうしても学ぶ機会が減ってしまいがちです。変化が早く、引退までに働く期間も伸びてきている現代社会のなかで生涯現役で働き続けるために、学ぶことの大切さを説いているのがこのリカレント教育の在り方です。

リカレント教育はスウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンにより提唱された概念です。1969年のヨーロッパで行われた会議で、世界に向けて提唱したのが、スウェーデンの文部大臣のオロフ・パルメで、のちに彼は首相の地位に就くことになります。1970年には、経済協力開発機構(OECD)が推進することになり、世界的に広く知られるようになりました。

ビジネスシーンにおいては、「回帰教育」や「循環教育」と訳されることが多くあります。社会人になっても学び続ける姿勢を大切にしようという考え方で、それまでの経験で得た知識を今の時代に活かせるスキルにアップデートするという意味も込められています。

ただ学ぶだけで終わるのではなく、それを仕事に活かしていけるようにすると、ブランクがあったとしても再就職の際などにチャンスが広がります。女性のためのリカレント教育では、結婚や出産でキャリアを一時中断し再就職を目指す大学などのプログラムもあります。

また、リカレント教育によって、専門的な知識や技能を取得することができるとキャリアの選択肢も広がり年収アップにもつながります。内閣府の調査によると、学習を受けることで2年後には約10万円弱、そして3年後には15万円近くの年収増加が見込めるというデータがあります。

リスキリングとは?リカレント教育との違い

ビジネス界では「DX(デジタルトランスフォーメーションの略)」の必要性が叫ばれているにも関わらず、DXを推進するスキルを持った人材が不足しています。

そのような中で、必要なスキルを獲得する・させることに重きをおいた「リスキリング」(英語:Reskilling)という言葉が注目を集めています。(経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」資料2-2より)

リカレント教育においては、何を学ぶかに関しては、知識・スキルから教養に到るまで幅が広く、個人の関心に基づいて様々なことを学ぶことを表しているのに対し、リスキリングは「これからも職業で価値創出し続けるために必要なスキルを学ぶ」という点が強調されています。

特に、デジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指することを意味しています。

リカレント教育への支援について

日本ではリカレント教育への支援としていろいろな施策に取り組んでいます。労働者に対する主な学びの支援としては、

  • 教育訓練給付金
  • 高等職業訓練促進給付金
  • キャリアコンサルティング
  • 公的職業訓練

などがあります。

これらは、対象講座を受けた際に受講費用の2割~7割程度の支給が得られたり、看護師などの国家資格やデジタル分野などの民間資格取得するために修学する際に月額で一定の支給が得られたりします。また、今後のキャリア形成についての相談をキャリアコンサルタントに相談することも無料でできます。希望の職種に就くための職業訓練を受けられるコースもあります。

事業主による人材支援に対する支援としては、

  • 人材開発支援助成金
  • 生産性向上支援訓練
  • 企業内においてのキャリアコンサルティング

などがあります。

事業主が従業員に対する訓練を実施した際や、教育訓練休暇制度の導入により教育訓練休暇を従業員に与えた際には、その訓練にかかる経費や導入にあたっての経費など助成を受けることができます。また、こちらもキャリアコンサルタントによる無料相談を実施しています。

そのほかにも、経済産業省や文部科学省にてさまざまな取り組みが行われています。

企業におけるリカレント教育の導入例

さまざまな企業においてリカレント教育の導入が進んでいます。なかなか個人でリカレント教育を始めるのは難しいとの声を受け、企業が社員に対するリカレント教育を推進しているのです。いくつかの企業でのリカレント教育の導入例をご紹介します。

企業が社員達の学びを支援する制度を導入することによって、学びを後押ししてくれる会社として求職者達のニーズは高まります。その一方で、リカレント教育のために常駐してほしい人材が一定期間現場を離れることにデメリットを感じる企業もあります。

ヤフー

ヤフー株式会社では、勤続年数3年以上の正社員を対象にスキルアップに集中することを目的とする勉学休職制度を設けており、最大2年間普段の業務から離れて勉学に取り組むことができます。

また、勤続年数10年以上の正社員を対象に「サバティカル制度」を設けていて、自分のキャリアをじっくり見つめ直す期間として2~3カ月を休暇期間として取得できます。その期間にキャリアの見直しやカリキュラムの受講などスキルアップにも役立ちます。

「サバティカル」(英語:Sabbatical)とは、6日間働いたあとの7日目の安息日(ラテン語でsabbaticus)に由来しており、長期勤続者に与えられる長期休暇のことを意味しています。欧米企業では長ければ1年間に及ぶこともあります。1880年にアメリカのハーバード大学で導入されたのが起源とされています。

MSD

外資系の製薬会社であるMSDでは、2016年にディスカバリー休暇を導入し始めました。これは、長期の休暇制度にあたり最長で40日間の休暇を取得することができる制度です。

社員達はこの休暇期間を利用して海外のボランティア活動に参加したり大学院に数学するなど、幅広い自己表現を達成するために活用しています。

サイボウズ

グループウェアを中心としたソフトウェア開発会社のサイボウズでは、2012年に育自分休暇制度を導入しました。この制度では、サイボウズを最長6年間離れた環境で自己成長のためのチャレンジに取り組むことができます。長期間の休暇で、自己と向き合いスキルアップやさまざまな経験をして人間として成長することを狙いとしています。

おわりに|リカレント教育とは?

日本では終身雇用制度が崩壊を経て、現在は人に仕事をつける「メンバーシップ型」から、仕事に人をつける「ジョブ型」への移行が進みつつあります。このような時代においては、スキルをアップデートしたり、新しいスキルを身につけて掛け合わせたりすることで自分の市場価値を高めていくキャリア設計の能力が必要になってきます。

その一方で、新卒一括採用制度に代表されるようにキャリアの多様性が乏しい社会であり、このような環境下では自分でキャリアを設計していくことには困難を伴うかもしれません。

2017年に米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した調査の結果、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%で、139カ国中132位と最下位クラスでした。そして、企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%に達したことにも、そうした問題の一端が垣間見られます。

英連邦諸国などでは、大学を卒業した後、就職せずに世界中を放浪して回ったり、ボランティアをしたりといった多様な経験をする「ギャップ・イヤー」(英語:Gap year)が推奨されるなど、周囲と歩調を合わせるのではなく、自分の頭で人生を考えて決めていくことが重視されています。

既に社会人として働いている人には学び直しが必要ですが、働き始める前の世代には、周囲に流されないで自分の頭で職業選択をできるようにする訓練が必要ではないでしょうか。

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