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GXとは
GXとは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)の略称です。
脱炭素・カーボンニュートラル達成を目指し、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心に転換することを意味しています。
日本では経済産業省主導のもと、関連する施策を一括してGXと呼んでいます。社会経済システム全体の変革をポジティブに捉え、GXを加速させることで、「エネルギーの安定供給確保」「新たな需要・市場を創出することによる経済成長の実現」「カーボンニュートラルの実現」という3つの目的を達成することを目指しています。
2024年12月下旬には、経済産業省から長期の政策の方向性をまとめた「GX2040ビジョン(案)」が公表されました。
GX2040ビジョン(案)
GX2040ビジョンは、上記3つの目的達成を目指すにあたり、地政学リスクによるエネルギー調達環境の変化やサプライチェーンの再構築の必要性、DX(AIなど)による電力需要の増加等のように、将来の見通しに対する不確実性が高まる中でGX投資の予見可能性を高めるために、長期的な方向性を示すことを意図して作成されました。
内容としては、以下のパートで構成されています。
・GX産業構造 ・GX産業立地 ・現実的なトランジションの重要性と世界の脱炭素化への貢献 ・GXを加速させるためのエネルギーをはじめとする個別分野の取組 ・成長志向型カーボンプライシング構想 ・公正な移行 ・GXに関する政策の実行状況の進捗と見直し |
それぞれのパートの内容について簡単に紹介します。
GX産業構造
GX分野は需要が顕在化しづらく、不確実性も高いなかで、スピード感をもって商業化させスケールアップさせるために、特に以下の6つの取組を進めるとしています。
1.企業の成長投資を後押しする企業経営・資本市場の制度改善 2.国内外の学術機関等と提携したイノベーションの社会実装や政策協調 3.大企業からの積極的なカーブアウト 4.GX産業につながる市場創造 5.中堅・中小企業のGX 6.新たな金融手法の活用 |
国内だけでなく海外の学術機関との提携や、大企業の中に人材・技術が眠っている可能性が高いとして、成長につながる”フロンティア領域の金の卵”を見出す。CFP・削減実績量・削減貢献量等のGX指標等を活用してGX製品・サービスの価値の見える化して民間や公共での調達を促進する等の支援について書かれています。
中堅・中小企業に対しては、エネルギー消費量や排出量の算定・見える化を行うためのハンズオン支援や省エネ等を促進する設備導入支援、GXに資する革新的な製品・サービスの開発や新事業への挑戦を通じた中小企業の新市場・高付加価値事業への進出を支援すると述べられています。
新たな金融手法として、2024年2月に発行した世界初の国によるトランジション・ボンドによる資金調達の開始と、GX機構による、民間のリスクを補完するための債務保証や出資等による金融支援を進めると述べられています。
GX産業立地
GX×DXを進め、産業構造の高度化に不可欠なAI向けのデータセンターが必要とする膨大な電力をクリーンエネルギーで賄う必要があるとし、クリーンエネルギー供給拠点の地域偏在性から、「エネルギー供給に合わせて需要側を集積していく」という発想の転換の必要性について述べられています。
現実的なトランジションの重要性と世界の脱炭素化への貢献
諸外国との相対的なエネルギー価格差が自国産業の維持・発展にとって極めて重要な課題と指摘した上で、投資促進策を講ずる際は、削減効果が高い技術であれば、先に海外市場を確保した後に中長期的に国内市場での導入を目指しているものも政策的な支援を行う等の現実的な視点の重要性について触れられています。
また、この視点はアジア諸国のGXにとっても重要であり、AZECを通じた政策協調を支えるため、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)に新たにセンターを設置。対外発信も強化していくとしています。
GXを加速させるためのエネルギーをはじめとする個別分野の取組
エネルギーに関しては、以下のように述べられています。
- エネルギー安全保障に重点を置いた政策を再構築
- DXやGXの進展による電力需要増加
- 特定の電源や燃料源に過度に依存しないバランスのとれた電源構成
- 原子力も含めた脱炭素電源の最大限活用
- 再エネはペロブスカイト太陽電池 、浮体式を含む洋上風力、次世代地熱等の開発・社会実装を進める
- 原子力は再稼働加速、廃炉を決定した事業者のサイト内における次世代革新炉への建て替えの具体化
- S+3Eの原則に基づき、脱炭素化に伴うコスト上昇を最大限抑制するべく取り組んでいく
また、「成長志向型の資源自律経済の確立」と題して、再生材利用(利用に関する計画の作成及び定期報告の義務化)、環境配慮設計(特に優れた環境配慮設計をトップランナーとして法的に認定。資源循環に配慮した製品の可視化・価値化を図り、革新的なものづくりを加速)、CEコマースの適切な評価と健全な発展、といったサーキュラーエコノミーの促進に関する取り組みが述べられています。
その他、「鉄・化学・紙・セメント等の多排出産業」「蓄電池」「次世代自動車」「次世代航空機」「カーボンリサイクル」など、個別分野における取り組みについて紹介されています。
成長志向型カーボンプライシング構想
今後10年間で150兆円超の官民GX投資を行うとし、「規制・支援一体型の成長志向型カーボンプライシング構想」について説明されています。
2026年度から排出量取引制度を本格稼働(2033年度からは発電事業者への有償オークションを導入)し、2028年度からは化石燃料賦課金を導入する旨が述べられています。
公正な移行
GXを推進する上で、新たに生まれる産業への労働移動を適切に進めていくとともに、GX産業構造への転換に伴い労働者が高度化されたサプライチェーンで引き続き活躍できるように、「成長分野等への労働移動の円滑化支援」、「在職者のキャリアアップのための転職支援やリスキリング支援」、「ロボティクスやAIなどのDXを活用したサプライチェーンの高度化に対応するための新たなスキルの獲得支援」などが挙げられています。
GXに関する政策の実行状況の進捗と見直し
2023年2月に策定したGX基本方針策定以後、GXに実現に向けた先行投資支援の進捗状については、これまでGX実行会議等を中心に報告してきましたが、今後もGXを実現するための政策イニシアティブを進めていくにあたっては、GX実行会議をはじめ適切な場で進捗状況の報告を行い、必要に応じた見直し等を行っていくとしています。
References:
•GX2040ビジョン(案)の概要(令和6年12月26日)内閣官房GX実行推進室