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バイオプラスチックとは?バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの違い

バイオプラスチックとは?バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの違い

2020年7月1日から、プラスチック製買物袋の有料化が始まってから1年以上が経過しましたが、海洋生分解性プラスチック100%で作られたものと、バイオマスプラスチックの配合率が25%以上のものは有料化の対象外となっていることをご存知でしょうか?

気候変動や海洋汚染対策として注目されている「バイオプラスチック」とは何か?について紹介します。

バイオプラスチックとは?

「バイオプラスチック」(英語:bioplastic)とは、「バイオマスを原料としたプラスチック」と「生分解性を持つプラスチック」の総称です。

前者の「バイオマスを原料としたプラスチック」は、海外では「生物由来のプラスチック」(英語:bio-based plastic)と呼ばれています。日本では、「バイオマスプラスチック」と呼ばれることが多くなっています。

後者の「生分解性を持つプラスチック」は「生分解性プラスチック」と呼ばれています。

両者の性質のいずれか一方だけを有している場合や、両方有している場合もあったりするので、混乱しないように頭を整理する必要があります。日本バイオプラスチック協会などの資料をもとに環境省が作成した下図が参考になります。

バイオプラスチックの分類整理
出典】環境省「参考資料1_バイオプラスチックと取り巻く国内外の状況

それでは、両者をそれぞれ詳しく見ていきましょう。

バイオマスプラスチックとは?

「バイオマスプラスチック」は、生物由来の資源(英語:biomass)を原料とするプラスチックのことです。

厳密には、トウモロコシやサトウキビなどの「再生可能な生物由来の原料から作られたプラスチック」のことを指します。

これまで使ってきた石油も大昔の樹木からできており、生物由来の資源ではあります。しかし、石油は再生産不能なので、処分すると大気中の二酸化炭素を増やしてしまうのに対し、トウモロコシやサトウキビなどの植物は再生産可能なので、刈り取るまでは光合成で二酸化炭素を吸収してくれるため、処分する際に二酸化炭素を排出しても大気中の二酸化炭素は増えない、カーボンニュートラルであると言えます。

焼却する際に、燃焼熱が低い上、ダイオキシン類が発生しないといった利点もあります。また、バイオマスプラスチックは、生分解性プラスチックとしての性質を併せ持っている場合も多くあります。

バイオマスプラスチックを使うことの大きな目的は、「カーボンニュートラルな素材であることから地球温暖化対策に寄与すること」です。

生分解性プラスチックとは?

「生分解性プラスチック」(英語:biodegradable plastic)は、生分解性を持つプラスチックのことです。

生分解性(材料)とは、「微生物によって完全に消費され、自然的副産物(炭酸ガス・メタン・水・バイオマスなど)のみを生じるもの」を意味しています。

プラスチックゴミが適切に処理されずに、土壌や川に捨てられ、最終的に海洋に流出し、非常に細かい粒子(マイクロプラスチック)となって海洋生態系へ悪影響を与えている問題に対応するために開発されています。

そのため、従来のプラスチックと反対の特徴(分解しやすい・分解時間を短くする)を持たせることを目的として開発されています。

生分解性プラスチックを使うことの大きな目的は、「海洋プラスチックなどの環境汚染対策に寄与すること」です。

バイオプラスチックの問題点

バイオ燃料の問題点とも類似する点が多々ありますが、バイオプラスチックに関しても指摘されている問題がいくつかあります。

ライフサイクル全体の二酸化炭素排出量の問題

バイオプラスチックは、従来の石油原料由来のプラスチックと比べると環境に良いことは明らかですが、全ての問題を解決できている訳ではありません。例えば、バイオマスプラスチックはカーボンニュートラルであると紹介しましたが、厳密には製造や輸送の際にエネルギーを消費することで二酸化炭素を排出するため、完全なカーボンニュートラルとは言えません。

食糧・燃料との競合性

環境的な側面からは、穀物をプラスチックの原料として利用することには意義があります。

その一方で、世界では将来的な食糧不足が懸念されています。また、バイオマスは燃料としても利用されているため、穀物の価格高騰や供給不足が懸念されます。

土地の利用と森林破壊の問題

バイオプラスチックの原料となる植物を育てるために土地が必要になります。そのために開発途上国で森林破壊が起きるといった懸念もあります。

海洋で生分解できるものは限られている

生分解性プラスチックであっても、(土壌では生分解できても)海洋では生分解できない場合もありますので注意が必要です。

海洋でも生分解できるものは、「海洋生分解性プラスチック」と呼ばれています。冒頭でも触れたように、海洋生分解性プラスチック100%で作られたレジ袋は、有料化の対象外となっています。

生物由来であることと生分解性は一致しない

生物由来であることと、生分解性があることは必ずしも一致しません。

バイオマスを原料としたバイオPETやバイオPE(レジ袋などに利用される材料)は、生分解性を持たないため、きちんと処理されなかった場合は、環境汚染の問題は解消されません。

おわりに|バイオプラスチックとは?

レジ袋の有料化に始まり、今後こうした動きは、使い捨てのスプーンやストローなどに順次拡大していくことが予想されています。

使い捨てのプラスチック製品が、バイオマス由来や生分解性のものに置き換わっていくことは喜ばしい限りです。しかし、マイバック・ボトル・箸・ストローなどを使っていれば、そもそも使い捨てのプラスチックの必要性そのものがなくなるので、「使い捨てをなくす」ことが本来のゴールであるということを忘れないようにしないといけませんね。

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