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野生では97%も減少!?水族館の人気者 ケープペンギンの“今”(サンシャイン水族館)

野生では97%も減少!?水族館の人気者 ケープペンギンの“今”(サンシャイン水族館)

サンシャイン水族館から『サンシャイン水族館いきものディスカバリー通信vol.24』が発刊されました。ここでは一部情報を抜粋・編集して伝えします。

サンシャイン水族館とケープペンギン

サンシャイン水族館(東京・池袋)では、1978年の開業当時(旧サンシャイン国際水族館)から現在まで、主に南アフリカに生息している「ケープペンギン」を飼育しています。

『IUCN絶滅危惧種レッドリスト(TM)』(以下:レッドリスト)を作成する国際自然保護連合(IUCN)は、2024年10月28日(月)に「ケープペンギン」を絶滅危惧カテゴリーの中でも「深刻な危機」(CR) にあると判定し、野生での絶滅の可能性が極めて高いことを強調しました。このまま数が減り続ければ4,000日以内にケープペンギンが自然絶滅する可能性があるとも考えられています。

ケープペンギンがレッドリストに初めて絶滅危惧種として判定されたのは2010年。そこからわずか14年後の2024年にはそのレベルが上がり、絶滅危惧カテゴリーの中で、最も絶滅リスクが高く、野生絶滅一歩手前の「深刻な危機」(CR)と判定されることに。大きく数を減らし続けている主な原因は、ケープペンギンを取り囲む環境の変化にあります。その変化の原因は、私たち人間の歴史と密接に関わっています。

<参考:IUCNレッドリストカテゴリーと基準>

そもそもケープペンギンってどんな生き物?

ケープペンギンは南アフリカやナミビア周辺等、唯一アフリカ大陸に生息するペンギンです。ペンギンは氷の上で生活しているイメージを持たれがちですが、ケープペンギンは比較的温暖な地域に生息しています。

体長約60cm、体重3~4kgほどで、ペンギンの仲間の中では中型。主食はイワシなどの小魚で、水中でエサを獲り、岩場の隙間や藪の根元に作った巣の中で卵を温めます。鳴き声がロバのように聞こえることから、ジャッカス(英語でロバを示す)ペンギンとも呼ばれています。

ケープペンギンの歴史と現状

全世界に生息するケープペンギンは1920年代と比べ97%も減少してしまいました。この状況が続けば、4,000日以内に絶滅する可能性があると言われています。現地ではケープペンギンという種を守るため、南アフリカ沿岸鳥類保護財団 「SANCCOB」や「バードライフ・サウスアフリカ」などの保護団体が活動を行っています。サンシャイン水族館もその一助となるため、ケープペンギンの生態や課題について知ってもらうための活動を続けています。

資源としてのケープペンギン

ケープペンギンは、遡ること1497年にバスコ・ダ・ガマの航海船によって発見され、西洋に知られるようになりました。19世紀になると、脂肪が多く簡単に捕らえることのできるペンギンは食料や「ペンギンオイル」と呼ばれる食用油・燃料として利用されてきました。

グアノの大量採掘

本来、ケープペンギンは「グアノ層」と呼ばれる海鳥の糞や死骸が何万年にも渡って積み重なった地層に巣を作ります。20世紀初頭には、このグアノが優秀な肥料として知られ、莫大な利益をもたらす「白いゴールドラッシュ」と呼ばれるほどでした。人間の手によってグアノが大量に採掘され、ペンギンたちは営巣地を失ったと考えられています。
また、同時期には食用としてケープペンギンの卵が1年に100万個近くも乱獲され、卵の採取は規制される1967年まで続きました。住処をなくして地表に巣をつくる個体もいましたが、直射日光によるダメージ等で卵が傷ついたり、陸上の捕食者にさらされることも少なくありませんでした。

重油流出などの海洋汚染

近年では様々な規制によりケープペンギンの乱獲や資源としての利用はほとんどなくなりました。しかし、生息地周辺で行われる人間の経済活動が生息地に大きく影響を与えていることに変わりはありません。

大型タンカーが行き交うケープタウン沖では重油流出事故が絶えず、その一帯に生息するケープペンギンの羽毛は油まみれになり、防水機能を失って、多くの ケープペンギンが犠牲になりました。さらに追い打ちをかけるように、漁業で廃棄された網や釣り針、プラスチックごみなどもケープペンギンを傷つけてしまう原因となっています。

エサとなるイワシの減少

エサを確保することも一苦労。ケープペンギンの主食となるイワシなどの小魚が、人間による大規模商業漁業によって乱獲され、さらに気候変動と海水温上昇等が続いたことでイワシの群れの分布が大きく移動しました。その結果、ケープペンギンの 生息地から獲りに行けるイワシの量が大幅に減少し、深刻なエサ不足につながっています。

毎年4月25日は世界ペンギンの日!2024年は約39万円をSANCCOB(サンコブ)へ寄付

世界にはケープペンギンの生息地で保護活動を行っている団体や、生き物の保全について周知活動をする団体が数多く存在します。各活動を続けていくための資金は、ほとんどが寄付や募金によって賄われています。日本に住んでいる私たちが直接そのような活動に参加することは難しいですが、寄付という形でケープペンギンの保護に携わることができます。

サンシャイン水族館も2021年より生き物の保全教育プログラムを実施する「ShoeZ(シューズ)」と共に世界ペンギンの日に合わせてエコグッズの販売やペンギンについて学ぶイベントを実施しています。

毎年多くの方々にご参加・ご協力いただき、エコグッズやツアーの売上をSANCCOBに寄付しています。4年間で146万円以上の支援を行い、寄付金は保護されたペンギンの飼育や海鳥のエサ代・薬代として使用されています。(2022年には約30万円、2023年には約57万円を寄付)

サンシャイン水族館いきものディスカバリー通信vol.24(PDF)
ケープペンギンについてより深く知りたい方はこちら

おわりに|生物多様性の危機について

現代の生物多様性の喪失は「第6次大量絶滅」と呼ばれています。絶滅した生物を復活させることはできないため、「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」においても、他の8つのプロセスとは異なり、取り返しがつかない点が特徴とされています。

生物多様性とは何か?なぜ生物多様性が大切なのか?といったことについて詳しく紹介している記事もご覧ください。

生物多様性とは?年平均33兆ドルとされる生態系サービスの経済的価値

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