地球温暖化の原因になっているCO2の排出量を減らすことは、グローバルな課題になっています。日本が2050年までの実現を目指すカーボンニュートラルを達成するための重要な手段として期待されている“カーボンリサイクル”について解説します。
カーボンリサイクルとは
CO2の利用をさらに促進するべく、CO2を資源ととらえて素材や燃料に再利用することで大気中へのCO2排出を抑制・削減するための研究開発をイノベーションにより進めようという取り組みがカーボンリサイクルです。
経済産業省が2023年6月に公表した「カーボンリサイクルロードマップ」において、CCS等とともに、CO2の回収から貯留・利用までの全体を管理する”カーボンマネジメント”の中に位置づけられています。
【出典】GXに向けたカーボンマネジメントの取り組み(資源エネルギー庁)
カーボンリサイクルの意義としては、
CO2を有価物(資源)として捉え、新たな別の有価物に転換することで、製品等のサプライチェーン全体で従来通りの方法と比較してCO2の排出を全体として抑制することが出来るため、2050年カーボンニュートラル社会の実現に貢献する
とされており、カーボンリサイクルによるCO2循環利用ポテンシャルとしては、2050年に最大約2億~1億トンと試算されています。
GXとの関係性
“カーボンマネジメント”については、資源エネルギー庁が2024年2月に公表した「GXに向けたカーボンマネジメントの取り組み」の中で、二酸化炭素の除去(CDR)、回収・利用・貯留(CCUS)によってCO2を循環的に利用したり削減したりする取り組み、として説明されています。
また、内閣官房GX実行推進室が令和6年12月に公表した「GX2040ビジョン(案)」においても、GXを加速させるためのエネルギーをはじめとする個別分野の取組として、カーボンリサイクルが紹介されています。
カーボンリサイクル技術の利用領域
カーボンリサイクルにおけるCO2の利用領域としては、「化学品」「燃料」「鉱物」「その他」の4つに分類されています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
化学品
CO2を原料としてポリカーボネート樹脂やウレタン樹脂を製造。また、バイオマス由来の化学品や、汎用的な物質であるオレフィン(ポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂の総称)も利用先となりえます。
ポリカーボネートは、パソコンの外装、DVDなどに広くつかわれている材料です。旭化成は、このポリカーボネートを、アルコール、CO2、フェノールを原料として世界ではじめて開発・実用化しました。現在はパソコンの生産などにつかわれています。さらに同社は、世界初となるCO2からウレタンを製造する技術の開発に着手。将来的には断熱材や衣料品などとして活用される見込みです。
化粧品用のプラスチック容器やポリ袋などにつかわれている「ポリエチレン」。フランスの大手化粧品メーカー・ロレアル社は、ランザテック社およびトタル社と共同で、排ガス中のCO2を再利用した化粧品用ポリエチレン容器を開発。2024年までに、シャンプーなどの容器へ使用を広げることを目指しています。
燃料
光合成をおこなう小さな生き物「微細藻類」を使ったバイオ燃料(SAF・ディーゼル)や、CO2と再生可能エネルギー由来の水素を組み合わせた合成燃料(e-fuel・SAF)、ガス燃料(メタン、プロパン、ジエチルエーテル)等が利用先として考えられています。
鉱物
コンクリート、セメント、炭酸塩、炭素、炭化物などが考えられています。CO2をセメントやコンクリートの生産工程で固定化する技術が開発されています。これにより、建材が炭素を吸収する役割を果たします。
その他
バイオマス燃料とCCSを組み合わせる「BECCS」、海の海藻や海草がCO2を取り入れることで海域にCO2が貯留する「ブルーカーボン」などが考えられています。これらは総称して「ネガティブ・エミッション」と呼ばれます。
References:
•カーボンリサイクルロードマップ(令和5年6月23日)経済産業省
•GXに向けたカーボンマネジメントの取り組み(2024年2月)資源エネルギー庁