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SDGs達成度ランキング2024|2023年に21位だった日本は順位を3つ上げて18位に

SDGs達成度ランキング2024|2023年に21位だった日本は順位を3つ上げて18位に

2024年6月、SDSN(国連持続可能な開発ソリューションネットワーク)は、世界166カ国のSDGsに関連する取り組み状況を分析した年次報告書「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2024」を発表しました。

ベスト3は定番の北欧勢3国で変わらず

1位から3位は2023年と同様、フィンランド、スウェーデン、デンマークの3国でした。変動幅が大きかったのはクロアチアで、2023年の12位から4ランクアップして8位にランクインしました。

2024順位 国名 2023順位 変動
1 フィンランド 1 →0
2 スウェーデン 2 →0
3 デンマーク 3 →0
4 ドイツ 4 →0
5 フランス 6 ↑1
6 オーストリア 5 ↓1
7 ノルウェー 7 →0
8 クロアチア 12 ↑4
9 イギリス 11 ↑2
10 ポーランド 9 ↓1

世界のSDGsの進捗状況

2030年までにSDGsのターゲットのうち、達成が見込まれるのは全体の約16%にとどまり、残りの84%は進捗が限定的、もしくは後退しています。

特に、目標2.飢餓をゼロに、目標11.持続可能な都市とコミュニティ、目標14.海の豊かさを守ろう、目標15.陸の豊かさも守ろう、目標16.平和と公正をすべての人に、の5つの目標において遅れが顕著となっています。

2024年の報告書では、21世紀の課題に対応するため、国連システムの改革が提言されています。また、持続可能な食料と土地利用システムの実現に向けた長期的な道筋も議論されています。

国連システムの改革

国連はSDGs達成を支援するための主要な国際機関ですが、近年、国際的な課題の複雑化により、その対応力に限界が指摘されています。
提案の方向性として以下の3点が挙げられています。

  • 国際協調の強化: 国連加盟国間の協力をより促進するため、意思決定プロセスの簡素化と透明性の向上
  • 資金調達の効率化: 開発途上国への支援を増やすため、国連の財政制度を見直し、より効率的な資金の配分を実現
  • 専門機関の強化: 持続可能な開発に関連する分野(環境、健康、教育など)を担当する国連の専門機関へのリソース配分を増加

持続可能な食料と土地利用システム

食料の生産と土地利用はSDGs達成において重要な要素です。しかし、現状では農業が地球温暖化の主要因の一つとされ、土地の劣化や生物多様性の損失が深刻になっています。2050年までに、食料生産システムを「環境に優しく、かつ経済的に持続可能」な形に移行させるロードマップが議論されています。以下のような議論がなされました。

  • 再生型農業: 土壌の健康を回復させ、炭素を隔離する再生型農業の普及
  • 食料ロス削減: 世界の食料ロス・廃棄を半減させるための政策と技術の導入
  • 森林再生: 森林伐採を抑制し、劣化した土地を再生するための国際的な枠組みの整備
  • 食料システムの転換: 持続可能な作物栽培や植物ベースの食生活を促進する政策

2023年に21位だった日本は順位を3つ上げて18位に

前年21位だった日本は順位を3つ上げて18位となりました。達成度を表す総合スコアも下げて79.9(前年は79.4)となっており、SDGsの達成に向けて前進していることが示される結果となりました。
2024年の評価のポイントは以下の3点でした。

・目標9.産業・イノベーション・インフラ: 全ターゲットを達成しています。
・目標4.質の高い教育をみんなに: 2024年版では1段階評価が下がりました。
・目標13.気候変動に具体的な対策を: 最低評価を受けており、特に気候変動対策において課題が指摘されています。

達成度が低い目標の要因

日本は、目標5.ジェンダー平等、目標12.作る使う責任、目標13.気候変動、目標14.海の豊かさ、目標15.森の豊かさの5つの目標が赤色であり、達成度が低くなっています。以下に要因を挙げます。

目標5: ジェンダー平等

1.女性の社会進出の遅れ
日本における企業や公的機関の管理職に占める女性の割合は、2025年までに30%を目指すという政府の目標に達していません。2023年の時点で約15%程度と、他の先進国と比較してかなり低いです。また、同じ業務内容でも男性の方が女性よりも賃金が高い傾向があり、OECD諸国の中でも賃金格差が大きい国の一つです。

2.女性の就労環境の課題
女性は非正規雇用で働く割合が高く、収入や雇用の安定性において男性と格差があります。育児や介護の負担が女性に偏りがちで、キャリア継続が難しい環境にあることが課題です。

3.政治分野での女性の低い参画率
日本の国会議員や地方議会の女性議員の割合は、他国と比べて非常に低く、2023年時点で衆議院における女性議員の割合は約10%程度です。

4.社会的・文化的なジェンダーバイアス
日本では、「男性は仕事、女性は家庭」という固定観念が根強く残っています。これが女性のキャリア選択や社会的地位向上を阻む要因となっています。
学校や家庭でのジェンダー平等に関する教育が十分でなく、若年層でもジェンダーバイアスが引き継がれる傾向があります。

5.性暴力・ハラスメントへの対応の遅れ
性暴力やハラスメントの被害者への支援体制が整っておらず、被害が見えにくい状況が続いています。職場におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産を理由とするマタニティハラスメントが問題視されています。

6.国際的な比較での低評価
世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数(Global Gender Gap Index)では、日本は2023年時点で146カ国中125位と、先進国の中でも非常に低い順位にあります。この指数は、経済、教育、健康、政治参加の4つの分野で評価されますが、特に政治と経済分野でのスコアが低いです。

SDGs5「ジェンダー平等を実現しよう」の現状(世界と日本)

目標12: 持続可能な生産と消費

1.食品ロスの多さ
日本は食品ロスの量が多いことで知られており、年間約500万トンの食品ロスが発生しています。これは持続可能な消費行動の達成を妨げる大きな要因です。

2.過剰包装の文化
日本は商品包装が過剰であるという批判があります。美観や品質保持を重視する一方で、プラスチック廃棄物が増え、リサイクル率も課題となっています。

3.リサイクルシステムの限界
リサイクル率は高いものの、焼却や埋め立てに依存する割合が依然として高いことが問題視されています。

目標13: 気候変動への対策

1.化石燃料への依存
福島第一原発事故以降、原子力発電が縮小し、化石燃料への依存度が高まっています。これにより、温室効果ガスの排出量が増加しています。

2.再生可能エネルギー導入の遅れ
日本は再生可能エネルギーの普及が他国に比べて遅れており、特に風力や太陽光発電の導入において課題があります。

3.脱炭素政策の遅延
気候変動対策において具体的な行動が遅れており、政策の実効性が低いとされています。

SDGs12「つくる責任つかう責任」の現状(世界と日本)

目標14: 海の豊かさを守る

1.海洋プラスチック汚染
日本は海洋プラスチック廃棄物の主要発生国の一つとされており、対策が十分でないとの指摘があります。

2.過剰な漁業
一部の魚種において過剰漁獲が進んでおり、持続可能な水産資源管理が課題です。

3.沿岸部の生態系破壊
埋め立てや開発による沿岸部の生態系への影響が指摘されており、生物多様性が失われつつあります。

SDGs14「海の豊かさを守ろう」の現状(世界と日本)

目標15: 陸の豊かさを守る

1.森林減少と生物多様性の喪失
日本の森林管理は比較的良好とされていますが、一部では乱伐や外来種の侵入による生態系の変化が課題です。

2.土地利用の問題
都市化や開発による土地利用の変化が生物多様性に悪影響を及ぼしています。

3.農薬・化学肥料の使用
集約型農業に依存しているため、農薬や化学肥料の使用が生態系に負担をかけています。

SDGs15「陸の豊かさも守ろう」の現状(世界と日本)

日本のSDGs達成度ランキング推移(2016-2024年)

2016年から2024年までの10ヵ年に渡る日本のランキングの推移は下のグラフのようになっています。
2016年から2024年までの10ヵ年に渡る日本のランキングの推移2017年の11位から、15位(4ランクダウン)→15位(変わらず)→17位(2ランクダウン)→18位(1ランクダウン)→19位(1ランクダウン)→21位(2ランクダウン)と下落傾向でしたが、ようやく歯止めがかかりました。

おわりに|2024年のSDGs達成度ランキング

日本は一部の目標で進展を見せているものの、特定の分野での遅れが全体の評価を押し下げています。特にジェンダー平等や気候変動対策など、社会構造や政策の転換が求められる領域での改善が急務となっています。

前年(2023年)のSDGs達成度ランキングに関する詳細記事はこちらからご覧になれます。

2023年のSDGs達成度ランキング|日本は世界21位

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