スターバックスがプラスチック製のストローをFSC紙製ストローに切り替えるなど、世界は使い捨てプラスチックの使用を削減する方向に動いています。
日本でも2020年7月にレジ袋の有料化が法制化されましたが、世界各国でも同様の動きとなっています。
果たしてこの動きは、世界中に溢れかえるプラスチックゴミを減らす方向につながっていくでしょうか?
目次
プラスチックとは?
私たちが日頃から漠然と使っている「プラスチック」という言葉ですが、そもそもプラスチックとはどのような物質なのでしょうか?
プラスチックは人工的に合成された樹脂「合成樹脂」の一部です。
古くから、松脂、柿渋、漆などの樹脂が塗料や接着剤などとして使われていましたが、石油などの原料から人工的に作り出したものが「合成樹脂」であり、プラスチックはその一部です。
プラスチックの定義は曖昧なものとなっていますが、一般的には「主に石油(ナフサ)に由来する高分子物質(主に合成樹脂)を主原料とした可塑性の物質」と定義されています。
プラスチックと呼ばれている樹脂の一部を紹介すると、ペットボトルに使われている「PET樹脂」や、レジ袋に使われている「高密度ポリエチレン」、使い捨ての用器トレーに使われている「ポリスチレン」などが挙げられます。
プラスチックの問題点は?
1950年代から大量生産されるようになり、家庭用品や電化製品などのさまざまな製品に使用されるようになったプラスチックですが、1997年には環境ホルモン問題が注目されました。
また、使用量の増大に伴って廃棄物量の増大による焼却場や埋立地不足といった社会問題などを経て、近年では、プロダクトライフサイクルにおける温室ガスの排出、使い捨て(シングルユース・プラスチック)による資源の無駄使い、廃棄物が海に流れ出す海洋プラスチックやマイクロプラスチックなどが世界的な問題となっています。
海洋プラスチック問題とは?
年間800万〜1200万トンのプラスチック廃棄物が海へ流出し、海洋プラスチック問題へと発展しています。
ドイツで2015年に開かれたG7において、海洋ごみ(とりわけ海洋プラスチック)が世界的な問題であることが確認されました。
2016年に開かれた世界経済フォーラムでは、魚と海洋プラスチックゴミの割合が2014年は5:1であったこと、そして2050年には1:1の割合になるという予想が発表されました。
マイクロプラスチック問題とは?
5mm以下のプラスチックのことをマイクロプラスチックと呼びます。
海洋プラスチックゴミは、波や紫外線等の影響を受けてマイクロプラスチックへと形を変え、自然分解することなく数百年間以上もの間、自然界に残り続けると考えられています。
そして、マイクロプラスチックが魚や海鳥などの食物連鎖に取り込まれて生態系に及ぼすことが懸念されています。
マイクロプラスチックは発生源によって、以下の2種類に分類されます。
- 一次的マイクロプラスチック (primary microplastics)
マイクロサイズで製造されたプラスチック。洗顔料・歯磨き粉等のスクラブ剤等に利用されているマイクロビーズ等 - 二次的マイクロプラスチック (secondary microplastics)
大きなサイズで製造されたプラスチックが、自然環境中で破砕・細分化されて、マイクロサイズになったもの。
プラスチックゴミ問題の世界と日本の現状
プラスチックゴミの世界の現状
2017年に公開されたRoland Geyer氏らの記事によれば、1950年以降生産されたプラスチック83億トンのうち約69%の57億トンが投棄・焼却されて、リサイクルは約7%の6億トンにすぎず、その6億トンのうち5億トンも最終的には投棄・焼却されています。
そして、現状のペースのままだと、2050年までに120億トン以上のプラスチックが投棄・焼却されると予測しています。
また、2018年6月に発表された国連環境計画(UNEP)の報告書『シングルユースプラスチック』によれば、プラスチック生産量(2015年)を産業セクター別にみると、容器包装セクターが最も多く、全体の36%を占めています。
プラスチックゴミの日本の現状
同じく『シングルユースプラスチック(UNEP)』によれば、プラスチック廃棄量の国別比較では、日本の1人あたりの廃棄量は年約32キログラムとなっており、米国に次いで2番目に多いという結果になっています。
一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、日本国内の2018年のプラスチック廃棄量は891万トンで、そのうち56%を焼却(エネルギー回収)しています。ヨーロッパではエネルギー回収(サーマルリカバリー)はリサイクルとはみなされていないことや、CO2排出という面で環境に対する負荷は大きいため、もっとリサイクルに取り組む必要があるでしょう。
また、JETROのレポートによると、日本は香港、米国に次ぐ世界第3位の廃プラスチック輸出大国であり、2017年は143万トンの廃プラスチックを輸出しました。
2017年までは年間輸出量の半分を輸出していた中国が2017年末から主に生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止したため、東南アジアや台湾へ輸出されるようになりましたが、これらの国・地域も次々に輸入規制を導入したため、日本国内で処理される廃プラスチック量が増加しているとのことです。
プラスチックゴミの削減に向けた動き
プラスチックゴミの削減に向けた世界の動き
世界的な海洋プラスチック問題や、 有害廃棄物の輸出入を規定する国際条約「バーゼル条約」の規制対象に汚れたプラスチックごみが追加されました。
EUでは、 使い捨てプラスチック製品10品目と漁具を規制する「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令案」が採択され、ストローやカトラリーなどの使用が制限されています。
プラスチックゴミの削減に向けた日本の動き
日本政府はワンウェイプラスチックの25%抑制や再生素材の利用の倍増、代替イノベーションの推進を掲げています。
2021年6月には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立しました。
これによって、これまで無料配布されてきたプラスチック製のスプーン、フォーク、ストロー等の、使い捨てのワンウェイプラスチックが有料化される予定となっており、 飲食店やコンビニなどでは石油由来プラスチックではなく代替素材を使用した容器への切り替えが進んでいます。
人は平均すると毎週クレジットカード1枚分のプラスチックを摂取している
2019年6月12日のWWF発表によると、「平均的すると人は1週間にクレジットカード1枚分(約5g)のプラスチックを摂取していることが明らかになった」とのことです。
人は平均すると毎年100,000粒のプラスチックの小さなかけらを摂取しています。重量ベースでは、最大の想定で1週間で5g、1カ月で21g、1年で250gになります。
プラスチックは空気中や水、食物連鎖を通じて生き物の体内に入り込み、それらが食事や水分摂取を通じて人体に取り込まれます。特に、水道水やペットボトルなど飲料水からの摂取量が多いとみられています。
終わりに|プラスチックゴミ問題 世界と日本の現状
プラスチックは低コストで成形もしやすくて、我々消費者も大いにその便益を受けてきました。
しかし、この記事で見てきたように、環境や生物に対する負の影響が大きく、サステナブルではないことは明らかです。
環境に良くて経済性も満たす素材の開発が望まれますが、その動きを早めるためにも、そしてそれまでの時間を稼ぐためにも消費者の意識と行動の変容が鍵であることは間違いないでしょう。
【補記】アイキャッチ画像は、RIDE MEDIA&DESIGN株式会社が無償で提供している脱プラスチック啓発バナーを使用しています。