日本では高度成長期以降に整備したインフラが急速に老朽化し、2033年には建設後50年以上を経過する道路橋の割合が6割を超える見込みとなっています。(国土交通省「インフラ長寿命化とデータ利活用に向けた取組 平成30年11月2日」より)
2012年12月に起きた中央自動車道笹子トンネルにおける天井板の落下事故の記憶は生々しく、今後、人口減少社会を迎えるなかで国家財政赤字が拡大を続ける日本では、社会インフラの老朽化にどう対処していくかについて不安が高まりつつあります。
ここでは、社会インフラの現状と今後の予測について情報を整理するとともに、インフラ老朽化という社会課題に挑む注目ビジネスを紹介します。
目次
インフラ維持補修・更新費の40年間累計で547兆円
2018年3月、内閣府は「2015年から2054年までの40年間における公共インフラ施設の維持補修・更新費は547兆円」との試算結果を公表しました。
損傷などが起きた後に対処する「事後保全」によるメンテナンス手法による前提で試算した結果となっています。郵便関係の施設分は含んでいないとのことですが、政府による国土交通省所管以外の施設も含む、ほぼすべてのインフラや建築物を対象にした試算は初めてになります。
試算結果の内訳を見ると、土木関連インフラ施設の維持補修・更新が399兆円、建築物の維持補修・更新に149兆円となっています。
社会資本の維持管理・更新費が最も大きい分野は「道路」
国土交通省の所管分野における社会資本の、2019年度から2048年度までの30年間における年間の維持管理・更新費は下表の通りとなっています。この推計によると、2018年度の5.2兆円から、2048年度には5.9~6.5兆円へと約1.3倍に増加することが予想されています。
対象となる社会資本は12分野から構成されています。維持管理・更新費の大きい分野から「道路」「河川等」「下水道」「港湾」「その他6分野」となっています。
30年間の合計金額は下表の示す通りとなっており、最も金額が大きくなるケースでは、194.6兆円となります。
社会課題をチャンスと捉えれば200兆円の巨大市場
インフラの維持管理・更新費は、税金を負担する国民の視点からは費用ですが、他方で、技術やサービスを提供する企業から見ると市場(売上・利益)となります。
そして、世界に目を向ければ日本を5兆円とすると、その40倍の200兆円という巨大市場が存在しています。
インフラ老朽化という社会課題に挑む注目ビジネス
インフラ老朽化に対しては、事後保全ではなく予防保全に取り組むことや、AIやドローン、IoTなどのデジタル技術の活用によるメンテナンスの高度化・効率化といった対策が期待されています。
そうした新しい技術を活用してインフラ老朽化という社会課題に挑む注目ビジネスを見ていきましょう。
FRACTA(フラクタ)
▼運営サイト: FRACTA
2足歩行ロボットのSCHAFTを米グーグルに売却したことで有名な加藤崇氏が立ち上げたスタートアップ。
AI/機械学習技術を活用して水道管路の劣化状態を診断するオンラインツールを提供しており、日米で事業を展開しています。
水道管路に関するデータ(配管素材・使用年数、過去の漏水履歴等)と、独自に収集した1,000以上の膨大な環境変数を含むデータベース(土壌・気候・人口等)を組み合わせて、各水道配管の破損確率を高精度に解析することが可能になります。
地方自治体は破損確率の高い水道配管から更新を行うことでメンテナンスコストの最適化を実現すると共に、配管の破損・漏水事故を最小限に抑えることが可能となります。