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健康寿命とは?長寿に不安を感じている人は54.4%に達する

健康寿命とは?長寿に不安を感じている人は54.4%に達する

日本は長寿国として知られています。WHO(世界保健機関)の統計では、2019年において世界で最も平均寿命が長い国は日本で84.3歳でした。その一方で、老後の生活費・医療費、健康・病気に対する不安などから、長生きしたいと思っていない人が多く存在します。

日本生命が2016年に実施した「長生き」に関するアンケート調査結果では、長生きしたいと思う人は46.3%、長生きすることに不安を感じている人は54.4%といったように、半数近くの人が長生きに否定的であったり、不安を感じていたりするのが実状です。

健康寿命とは

冒頭のアンケート結果からも、長生きを肯定的にとらえるためには、「身体的な健康」と「経済的な安全」が必要ということが分かりますが、このうち、身体的な健康に関して「健康寿命」という言葉が注目されるようになってきました。

「健康寿命」とはWHOが提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など被介護状態の期間を差し引いて求めます。すなわち、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を意味しています。

世界的に、平均寿命だけでなく健康寿命にも注目して、これを延ばすことを目指しましょうという機運が高まっています。

厚生労働省の調査によると、平成28年(2016年)の日本人の健康寿命は、男性が72.14歳、女性が74.79歳でした。一方で、平均寿命から健康寿命を引いた「健康ではない期間」は、男性8.84年、女性12.35年でした。平成22年(2010年)、平成25年(2013年)と比較すると、男女ともに「健康でない期間」が少しづつではありますが短くなる傾向にあります。

健康寿命推移(厚労省)
【出典】厚生労働省「現在の健康づくりの取組と今後の施策について」(2021年3月19日)

その一方で、平成28年(2016年)のデータをみると、平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳となっていますので、だいたい70代前半までは自立した生活を送れているものの、その後、80代前半までの9〜12年間は、本人も辛いばかりでなく、家族や社会にも負担がかかる状況となっています。

今後は平均寿命が延びるとともに、「健康ではない期間」も長くなる懸念があるため、個人の幸せのためだけでなく、社会の持続可能性を高めるためにも「健康寿命」を延ばす取り組みが求められています。

健康寿命に影響を与えるリスク要因

DALYsによる「2040年の上位20疾患」推計

国の政策や研究開発の優先順位の判断基準に用いられており、2000年にWHOも採用している指標に「DALYs」というものがあります。これは、”Disability-Adjusted Life-Years”の略称で、「死亡によって失われる生存年数」と「病気とともに生きる年数」を足した数値です。この数値によって、健康寿命に影響を測る要因の大きさを比較します。

内閣府「健康・医療戦略推進本部」の会議資料で、2040年におけるDALYsの上位20疾患の推計結果が公開されています。これを見てみると、1位「アルツハイマー病」、2位「腰痛」、3位「虚血性心疾患」、4位「脳卒中」、5位「老人性難聴」となっています。

DALYs2040推計
【出典】内閣府「健康・医療戦略推進本部」資料

介護が必要となった主な要因

また、内閣府が発行している「令和元年版高齢社会白書」によると、2016年の調査データで「65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な要因」は、以下のようになっています。

男性 女性
1位 脳血管疾患(脳卒中)(23.0%) 認知症(20.5%)
2位 認知症(15.2%) 高齢による衰弱(15.4%)
3位 高齢による衰弱(10.6%) 骨折・転倒(15.2%)
4位 骨折・転倒(7.1%) 関節疾患(12.6%)
5位 心疾患(心臓病)/関節疾患(5.4%/5.4%) 脳血管疾患(脳卒中)(11.2%)

健康寿命ランキング(都道府県別)

2016年における、データのない熊本県を除いた46都道府県の健康寿命のベスト5・ワースト5のランキングを男女別に紹介します。ベスト(最長)とワースト(最短)の差は、男性で2.0年、女性で2.7年となっています。

健康寿命ベスト5

46都道府県の健康寿命のベスト5県は男女別にそれぞれ以下の通りとなっています。「山梨県」と「愛知県」の2県が男女ともにベスト5に入っています。

男性 女性
1位 山梨県(73.21歳) 愛知県(76.32歳)
2位 埼玉県(73.10歳) 三重県(76.30歳)
3位 愛知県(73.06歳) 山梨県(76.22歳)
4位 岐阜県(72.89歳) 富山県(75.77歳)
5位 石川県(72.67歳) 島根県(75.74歳)

健康寿命ワースト5

46都道府県の健康寿命のワースト5県は男女別にそれぞれ以下の通りとなっています。男性で四国の香川県を除く3県がワースト5に入っています。徳島県は女性もワースト4となっています。

男性 女性
46位 秋田県(71.21歳) 広島県(73.62歳)
45位 愛媛県(71.33歳) 北海道(73.77歳)
43位 徳島県(71.34歳) 京都府(73.97歳)
42位 和歌山県(71.36歳) 徳島県(74.04歳)
41位 高知県(71.37歳) 滋賀県(74.07歳)

健康寿命を延ばすための取り組み

日本では、政府レベルで「健康日本21」(21世紀における国民健康づくり運動)が2000年に策定され、2013年から2022年までは「健康日本21(第2次)」が行われています。基本方針として以下の5つが挙げられていますが、「健康寿命の延伸」が1番目に挙げられています。

【健康日本21(第2次)の基本方針】
  • 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
  • 生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
  • 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
  • 健康を支え、守るための社会環境の整備
  • 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

また、厚生労働省が2019年に定めた「健康寿命延伸プラン」では、健康寿命を2040年までに2016年比で男女ともに3年以上引き上げる目標を掲げつつ、健康づくり施策に関して、2025年までの工程表を示しています。そのなかで柱となる取り組みとして以下の3分野が挙げられています。

  • 次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成
  • 疾病予防・重症化予防
  • 介護予防・フレイル対策、認知症予防

行動変容を促す仕掛けとして、ナッジ(行動経済学の仕組み)を用いて検診率を向上させるといったことや、高齢者が気軽に体操などを楽しめる「通いの場」を充実させるといったことが述べられています。

おわりに|健康寿命とは

日本は世界トップクラスの長寿国でありながら、半数近くの人が長生きしたくないと考えているという現実があります。

厚生労働省の資料によると、2005年度の国民1人あたりの生涯医療費は約2,300万円であり、その支出は70歳未満で51%、70歳以上で49%となっています。つまり、生涯でかかる医療費の約半分は70歳以上でかかるという計算になります。

寿命に対する価値観は人それぞれですが、認知症や寝たきりの期間が短いことに反対する人はいないと思いますので、寿命と健康寿命の差をできるだけ短くするための取り組みには価値があるといえるのではないでしょうか。

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