ジェンダーとは直訳すると男女(性)となります。世界で問題となっているジェンダー不平等問題。毎年世界のジェンダー不平等に関するランキングが発表されているのをご存じでしょうか?
ここではジェンダー不平等とは何なのかについて解説するとともに、その原因や日本の現状についても紹介していきます。
目次
ジェンダー不平等とは?
ジェンダーとは性別を意味し、性別的な差別によって起こる不平等をジェンダー不平等といいます。
社会的・文化的な性差のことで「男性だからこうするべき」「女性だからこうだ」というような社会からのレッテルのようなものです。
極端な例でいうとアフガニスタンでは女性は男性より劣位にあり、保護されるべき存在だとされています。結果、家族のなかにおいても低い地位と決められており、そういった意味で一夫多妻制などが存在しているのです。
また、女性は男性を誘惑するものとされ、害悪を予防するために、さまざまな男女隔離の習慣もあるそうです。
さらに、アフリカではその昔女性に対する理不尽なしきたりなどが存在し、「女性は教育を受けるべきではない。家事をするのに教育は不要である」というような慣習があり、教育についての男女格差が存在していました。時代が進み以前よりはなくなったといわれていますが、未だに女児が小学校に通えていない現状もあるそうです。
国連WFPによれば、農家の男女格差を根絶すると開発途上国では農業生産高が2.5%から4%増加し、それによって世界の飢餓人口が12%から17%、人数にして1億人から1億5,000万人も少なくなるということです。
反対にジェンダー平等とはどう定義されているのでしょうか?国連人口基金東京オフィスのウェブサイトには「ジェンダー(男女の社会的性差)の平等とは、つまり人権を意味します。それは、女性にも男性と同様に、尊厳を持ち、貧困と恐怖から解き放たれ、自由のうちに生きる権利があるからです」とあります。つまり、女性の人権を確立しましょうということです。
ジェンダー不平等の原因
男女という性別によって起こる理不尽な差別、ジェンダー不平等が起こる原因とはどういったものなのでしょうか?主な原因を3つほど紹介していきます。
伝統的な風習や文化など
国によっては伝統的な風習や文化が原因で、ジェンダー不平等が起きています。前述したアフリカはその典型で、特にアフリカ大陸のサハラ砂漠より南の国では問題となっています。
国際開発計画の「アフリカ人間開発報告書2016」によると、アフリカの女性は男性の人間開発レベルの87%しか達成していないことが報告されています。
男性より女性を下だとみる風習により育児と家事は女性が担い、家庭のために水を汲むなどの労働は女性と少女がおこなっています。また、未だに児童婚の風習が残り、多くの女性は教育の機会を奪われている現状です。少しずつ解消されている部分もありますが高等教育を受けられる女性は未だに少数ですし、男女の賃金格差も蔓延している状況です。
宗教上の問題
インドは宗教上の問題からジェンダー不平等が起きている典型です。ヒンドゥー教の教義などが基本となっている、マヌ経典がその原因となっています。
例えば、ダウリーという考え方があります。これは、もともとは花嫁の父か花嫁に与える財産で、花婿が花嫁に与える贈り物のことでした。夫が亡くなった後に妻が生活に困らないようにするための理にかなった考え方だったそうです。しかし、いつしかダウリーは男性が結婚相手を決めるときの尺度となってしまいました。ダウリーが少ない女性は結婚できなかったり、結婚しても夫側の家族に虐待されたりするケースが出てきたのです。
実際にあった例でいうと、父から与えられた財産が少なくて結婚したある女性は、夫やその家族にひどい暴力を受け殺害されてしまいます。娘の実家に宛先不明の手紙が届きますが、そこには「もしお前たちが娘にテレビを与えていたら、彼女は死ななかったかもしれない」と書かれていたそうです。
また、サティーという風習もヒンドゥー教にはあります。これは、夫が亡くなり火葬されるときに妻も一緒に焼かれるというものです。一緒に焼かれる妻は、もちろん生きたままの状態で焼かれます。信じられないかもしれませんが、2008年になってもおこなわれていた地域があり、ニュースにもなりました。
生物学上の役割の違い
生物学上の役割の違いもジェンダー不平等を生む原因となっています。
当たり前かもしれませんが、女性は子どもを産むことはできますが男性は生むことはできません。一般的に男性は女性より筋肉が発達し、力が強いです。こうした男女の生物学上の違いが、女性は家庭内の仕事だけをしていればよいなどという考え方が生まれる原因となり、これがエスカレートしてジェンダー不平等となるのです。
日本のジェンダー不平等の現状
世界経済フォーラム(WEF)が発表した「世界ジェンダー・ギャップ報告書2021」によると、調査した153カ国のうち日本は120位(昨年から1ランク上昇)でした。
経済・教育・医療・政治の分野別では、「経済」が117位(昨年から2ランク低下)、「政治」が147位(同3ランク低下)、「教育」が92位(同1ランク低下)、「健康」が65位(同25ランク低下)となっており、全ての分野でランクを下げています。
レポートの中で、日本に対しては、「経済」分野では、女性の72%が労働参加している一方で、管理職の割合が低い(14.7%)、パートタイムの職の割合が男性の約2倍、女性の平均所得が男性より43.7%低くなっていることが指摘されています。また、「政治」分野では、国会議員の女性割合が9.9%に留まっていることが指摘されています。
ジェンダーの平等に関しては、国連が掲げるSDGsにおいても5番目の目標(Goal)に「ジェンダー平等を実現しよう(“GENDER EQUALITY”)」として掲げられています。
SDSNとベルテルスマン財団が発表しているレポート「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT(持続可能な開発報告書)」によると、2021年度における日本の総合スコアは79.8(世界18位)でしたが、目標5の現状と傾向の評価に関しては、現状は「主要な課題が残っている」、傾向は「穏やかに改善している」という評価になっています。
日本のジェンダー不平等の事例
また、日本にもジェンダー不平等が明らかになった事例がありました。
2018年に、大相撲の巡業の際に土俵上であいさつをした男性が突然倒れ、複数の女性が土俵上に上がり、心臓マッサージをしていたところ「女性は土俵から降りてください」とのアナウンスが流れたニュースが世間を騒がせたことがあります。
日本ではもともと男性が世俗の欲望を断ち切る修行の場に、女性は入れないという風習がありました。女性特有の出産や月経に伴う血を穢れとしていたからです。相撲の世界でも土俵には神が宿っているとされ、こうしたアナウンスにつながったそうです。
また、2021年には当時の東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の森喜朗氏が女性蔑視発言で組織委会長を引責辞任するなど、首相まで務めた人物がこうした発言をするところに日本のジェンダー不平等の根の深さがあります。
終わりに|ジェンダー不平等(男女格差)とは?
ジェンダー不平等は各国の文化や風習などにも関係しているマイノリティ差別の一種です。しかし、女性だけが不当な扱いを受ける時代ではなくなりました。体の構造上の違いはありますが、社会的な立場などでは違いがあってはなりません。
不平等をなくすには制度も重要ですが、ひとりひとりがステレオタイプに陥らずに、自分の頭で考える思考力を高めて、ジェンダー不平等に対する意識を変えていくことが大切となります。