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カーボンプライシングとは? 海外と日本の動向

カーボンプライシングとは? 海外と日本の動向

2021年6月18日、日本政府が策定した「グリーン成長戦略」における取り組みの1つとして、環境省と経済産業省が連携して、二酸化炭素の排出量を減らすために本格的なカーボンプライシングに関する制度設計の検討を進めています。

欧州に遅れをとりつつ、日本でも「カーボンプライシング」の導入機運が高まってきています。

カーボンプライシングとは?

カーボンプライシング(略称; CP)を直訳すると「炭素に価格をつけること」となります。

「二酸化炭素に価格をつけて、排出した量に応じて企業にお金を負担してもらう」ことがカーボンプライシングという言葉の意味となっています。

地球温暖化の主な原因と見なされている二酸化炭素の排出を抑制するために生まれた仕組みです。

カーボンプライシングの代表的な制度

カーボンプライシングには、いくつかの方法(制度)があります。

カーボンプライシング全体像(環境省)
【出典】環境省「CP全体像」

代表的なものとしては、「炭素税」「排出量取引制度」「炭素国境調整措置」などが挙げられます。
それぞれ順番に見てみましょう。

炭素税

企業などが排出した二酸化炭素の量に応じて税金を課すというやり方です。

例えば、「二酸化炭素1トンにつき200円」といったように税金を課します。

実際に排出された二酸化炭素を計測することができないので、使用した電気や、石炭・石油・天然ガスの量などから算出して課税します。

排出量取引制度

企業などが排出できる二酸化炭素の上限を決めて、上限を超える企業は、上限に達していない企業から必要な分を買い取るというやり方です。

この場合、炭素の価格は排出量の「需要と供給」によって決まります。

企業が排出上限を超過した場合には罰則が科されます。

炭素国境調整措置

輸入品に対して、その製品が作られた際に排出された二酸化炭素の量に応じて課税をするというやり方です。

温暖化対策が十分でなく、二酸化炭素の価格が低い国で作られた製品を輸入する際に、二酸化炭素の価格差を企業に負担してもらうという仕組です。

温暖化対策に消極的な国との競争上の公平性を保ち、また、そうした国で生産して輸入するといった生産拠点の流出(カーボンリーケージ)を抑制することを狙いとしています。

すでに欧州で検討が進んでおり2023年までに導入する方針で、日本でも検討が始められています。

カーボンプライシングに関する世界の動向

2021年5月25日に公開された世界銀行の報告書『世界のカーボンプライシングの実施状況』によると、2021年4月時点で、64の国・地域でカーボンプライシングが導入されています。

それらの国・地域は、過去10年で3倍以上に増加しており、全世界の温室効果ガスの21.5%がカバーされているとのことです。

海外の動向

1990年にフィンランドが世界で初めて「炭素税」を導入し、その後、EU加盟国に広がりました。

フィンランドでは1トン62ユーロ(約7900円)。他の国々でも数千円規模となっており、スウェーデンでは1万円を超しています。

「排出量取引制度」も2005年にEUがいち早く導入し、上限を超過した場合は1トン当たり100ユーロの罰金を科すことで一定の成果を上げています。

企業ごとの排出枠の上限を公平に設定することが難しいため、韓国では国を相手取り排出量割当を巡る40件以上の訴訟が発生しています。

「炭素国境調整措置」は、EUが導入を計画しているほか、米国もバイデン政権が選挙公約として掲げています。

日本の動向

日本では、実質的な「炭素税」とも言える「地球温暖化対策のための税(温対税)」が2012年から導入されています。

石炭や石油など化石燃料の消費量から算出した二酸化炭素の排出量1トン当たり289円を企業などに税として負担してもらうもので、最近では年間で2500億円程度の税収となっています。

日本の温対税の税率は、欧州各国の炭素税の税率と比べると低い状況となっています。

「排出量取引制度」は、日本では東京都や埼玉県などの一部の自治体が導入しています。電気やガスなどのエネルギーの使用量が原油換算で年間1500キロリットル以上の工場やビルなどを所有する企業が対象となっています。

インターナルカーボンプライシングとは?

ここまで見てきたカーボンプライシング(CP)は、国や地域の動きとなります。

一方で、企業内で独自に二酸化炭素の排出量に価格をつけて投資判断の基準にしたりする取り組みを「インターナルカーボンプライシング」(ICP)と呼びます。

取り入れる企業は世界で2000社を超えてきています。

日本は252社(導入済み118社。2年以内の導入予定134社)で、米国の266社(導入済み122社。2年以内の導入予定144社)に次いで2番目の導入企業数となっています。

日本にICP導入(予定)企業が多いのは、諸外国と比べて、政府主導によるCPが遅れていることが一因とも見られています。

世界全体でのICPの設定額は、二酸化炭素排出1トンあたり10ドル(1100円)から30ドル(3300円)ぐらいが中心となっており、2ドル未満や1000ドル超えまで幅広い状況となっています。

終わりに|カーボンプライシングとは?

温室効果ガス排出抑制に向けた対策は欧州が先頭に立って大きく進展しつつあります。

一個人としては、地球温暖化は人類の危機だと感じているので、カーボンプライシングのような取り組みは喜ばしく感じています。

今後も期待して見て行きたいと思います。

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