フィンテックやブロックチェーン技術の普及によって、独自のデジタル地域通貨を発行する地域が増えています。
高齢化や人口減少が進む地方における経済・社会を活性化するための切り札としても期待されている「デジタル地域通貨」について解説するとともに、デジタル地域通貨の運営を可能にするプラットフォームを提供している企業を紹介します。
デジタル地域通貨とは?
地域通貨とは、国が発行する日本円や米ドルなどの「法定通貨」とは違い、特定の地域やグループなどのコミュニティ内で発行され、使用される決済手段のことです。
デジタル地域通貨は、地域通貨の決済手段を電子化したものを指します。
代表的な事例としては、岐阜県高山市・飛騨市・白川村の地域限定で利用できる「さるぼぼコイン」があります。
岐阜県高山市の飛騨信用組合が提供しており、地域内の企業や商店で資金を流通させて地域活性化を促進するとともに、訪日観光客向けの新しい決済手段とすることを目的に、2017年12月に導入されました。2021年2月時点でユーザー数は20,000人、加盟店数は1,500件、累計流通額は約28億円となっています。
今後は「さるぼぼコインでしか買えない商品」を提供したり、MaaS(Mobility as a Service)の実証実験を行っていくなどの展開を目指しています。
デジタル地域通貨プラットフォーム企業一覧
ここからは、デジタル地域通貨の運営を可能にするプラットフォームを提供している企業を紹介します。
株式会社フィノバレー
▼サイト: MONEY EASY
株式会社アイリッジのデジタル地域通貨事業の拡大、成長の加速を図ることを目的として、Fintech子会社として2018年6月に会社分割して新設されました。
同社が提供するデジタル地域通貨プラットフォーム『MoneyEasy』は、スマートフォンアプリと二次元コードをベースとして、短期間で安価にデジタル地域通貨サービスを開始できるプラットフォームシステムとなっています。
二次元コード読取⽅式での決済(支払い)で、加盟店側での端末などの初期投資や⼿間がかからず導⼊できるのが特⻑です。
上述の「さるぼぼコイン(岐阜県高山市・飛騨市・白川村)」や、「アクアコイン(千葉県木更津市)」といった導入事例のほか、2021年2月からは、「MINAコイン(長崎県南島原市)」、「せたがやPay(東京都世田谷区)」にもサービスを提供しています。
株式会社トラストバンク
▼サイト: chiica
ふるさと納税の「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンクが2019年5月に提供を開始しました。
『chiica』は、地域内で貯めたくなる、使いたくなる通貨とすることで、地域内での循環を通じた経済の活性化を目指しています。また、コミュニケーションの活性化を狙いとした利用者同士での通貨の交換を提供予定としています。(2021年7月4日現在)
ふるさと納税事業で築いた自治体とのつながりを活用して、導入事例も北は北海道(美瑛町)から南は沖縄県(読谷村・中城町)まで、26ヶ所(2021年7月4日現在)となっています。
株式会社カヤック
▼サイト: まちのコイン
神奈川県鎌倉市に本社を置く、Web制作・企画・運営会社。東証マザーズ上場。
2018年8月からコミュニティー通貨の開発を進め、2019年9月に第一号として、神奈川県が、地域の社会的課題の解決を図る活動に、ポイントを通じて地域活性化とSDGsの“自分ごと化”を図ることを目的とする「SDGsつながりポイント事業」のシステムとして採用されました。
『まちのコイン』は、以下のような特徴を持っています。
- 仕事とボランティアの”間”にある共助活動を促進
- ゲーム感覚で楽しめる仕組み
- 地域外の人も使える開かれたコミュニティ通貨
- 円に換金することは不可能
- ポイントは発行から最大180日で利用不能になる
導入事例は、神奈川県鎌倉市・小田原市、福岡県八女市など、計8エリア(2021年7月4日現在)となっています。