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研究開発と経営の両輪で磯焼け対策を加速 2030年までに100ヶ所の藻場再生へ(オーシャンリペア)

研究開発と経営の両輪で磯焼け対策を加速 2030年までに100ヶ所の藻場再生へ(オーシャンリペア)

立命館大学発スタートアップ企業のオーシャンリペア株式会社(本社:福岡県福岡市)が、創業1周年となる2025年2月2日、経営体制を共同代表制へと移行することを発表しました。オーシャンリペア社からのプレスリリースの内容を紹介します。

共同代表制導入の背景

創業から1年間で、磯焼けの原因となる食害魚を利活用した高栄養価のドッグフード「オーシャンハーベスト」の開発・販売など、事業基盤の確立に取り組んできました。しかし、深刻化する磯焼け問題の解決には、さらなるスピード感を持った取り組みが不可欠です。

今回の共同代表制への移行は、この課題解決を加速させるとともに、次なる成長ステージに向けた経営体制の強化を目的としています。従来、経営面は戸田が、研究開発や実証など技術面は光斎が担ってきました。新体制では、それぞれの専門性を活かしながら、意思決定の迅速化と責任体制の明確化を図ります。

これまでの歩みと今後のビジョン

海藻が食べ尽くされむき出しになった岩肌(海藻が食べ尽くされむき出しになった岩肌)

磯焼けは、沿岸の海藻が極端に減少・消失した状態を指し、「海の砂漠化」とも呼ばれています。海藻が生息する藻場(もば)は、CO2の吸収や魚貝類の産卵場所として海の生態系を支える重要な存在です。しかし、日本の藻場は毎年東京ドーム427個分もの規模で消失しています。

海藻が担うCO2吸収(ブルーカーボン)は年間25億トンにも達し、森林による吸収量(グリーンカーボン:19億トン)を上回ります。しかし、アイゴやイスズミなどの植食性魚類による食害で藻場が失われることで、地球温暖化の加速や漁業資源の減少など、環境・経済の両面で深刻な影響が生じています。当社は、この磯焼け問題に対して、食害魚を有効活用する独自のアプローチで解決に取り組んでいます。

港勢調査「(長崎県五島市)崎山地区(1)港勢調査「(長崎県五島市)崎山地区(2)【出典】港勢調査「(長崎県五島市)崎山地区」

磯焼けの原因となる食害魚を有効活用した高栄養価ドッグフード「オーシャンハーベスト」の開発

当社は、磯焼けの原因となっている食害魚を有効活用する独自のアプローチで課題解決に取り組んでいます。

2024年9月に販売を開始した「オーシャンハーベスト」は、長崎県五島列島で漁獲されたイスズミ・アイゴを主原料とした高栄養価ドッグフードです。これらの魚は高タンパク・低脂質の白身魚であり、漁獲後すぐに身の部分のみを使用してすり身加工することで、鮮度と品質を徹底的に保持しています。

商品開発にあたっては、愛犬の健康を第一に考え、原料はすべて国産を使用。小麦グルテンを含まないため、アレルギーやアトピーを抱える愛犬でも安心して食べられます。また、オイルコーティングを行わないことで、酸化の心配やお腹への負担を軽減しています。製造は九州内の工場でHACCP(ハサップ)に基づいた厳格な品質管理のもと行われています。環境問題の解決と愛犬の健康の両立を目指し、持続可能な調達体制の構築と販路の拡大に取り組んでいます。
オーシャンハーベスト

2030年に向け全国100ヶ所の藻場再生に挑む

当社は、「10年後は今よりもっといい海に」をミッションとして、海の環境問題である磯焼けの解決を加速するため、2030年までに全国100ヶ所での藻場再生プロジェクトの実施を目標に掲げています。

具体的な施策として、以下を推進していきます:

・全国100カ所のエリアより食害魚の買取を実施
・全国10カ所の重点エリアでの藻場再生モニタリングおよびモデル事業の展開
・大学、研究機関との連携による効果測定と検証体制の構築
・食害魚を活用した新規製品開発(キャットフード、養殖飼料、食品)
・ブルーカーボン・クレジット創出による新たな環境価値の確立

共同代表によるコメント

・新代表取締役CEO 戸田 耕介
私たちの食を支える漁業に打撃を与える「磯焼け」を知り、課題解決に取り組みはじめて早くも3年、法人設立から丸1年が経ちました。「磯焼け」は普段目にすることのない海の中で起きている問題ですが、私たちの食生活にも確実に影響を及ぼしています。

1年間の事業を振り返る中で、10年後の磯焼け解決に向けて事業を推進していく上で、新体制への移行を決断しました。弊社の事業拡大は、イスズミ・アイゴの消費量の増加、すなわち藻場回復につながります。
「磯焼け」は漁業事業者のあいだでは問題とされながら、解決策がなく放置されてきた問題です。オーシャンリペアは、ビジネスと研究の両面からこの社会課題にアプローチし、磯焼けの解決を実現してまいります。

・代表取締役CRO 光斎 翔貴
大学における研究の目的は学術の発展、つまり「今までわからなかったことを新たに発見すること」です。学術発展と社会貢献は分離して考えられることもありますが、少なくとも私自身は、社会をよりよい方向にする研究活動を目指してきました。

社会課題の解決に向けた社会実装の先にある未来を、科学的に環境・生物多様性・資源循環・ウェルビーングの観点から評価することを目指す「サステナビリティ共創実践学」のもと、磯焼け解決を達成します。

オーシャンリペア株式会社について

オーシャンリペア株式会社オーシャンリペアは、2024年2月設立の立命館大学発スタートアップです。「10年後は今よりもっといい海に」をミッションに掲げ、海の環境問題である「磯焼け」の課題解決に取り組んでいます。磯焼けの原因となっている食害魚を有効活用したドッグフード「オーシャンハーベスト」の開発・販売を手始めに、キャットフードや養殖用飼料の開発、藻場再生効果の科学的検証など、事業と研究の両面から持続可能な海洋環境の実現を目指しています。

【会社概要】
会社名:オーシャンリペア株式会社
所在地:福岡県福岡市中央区大名2-6-11 Fukuoka Growth Next
代表者:代表取締役CEO 戸田耕介、代表取締役CRO 光斎翔貴
設立:2024年2月2日
企業サイト:https://www.oceanrepair.co.jp

【事業内容】
・ペットフードの製造、販売、輸出入
・水産物及び加工品の製造、販売、輸出入
・地域活性化に関わるコンサルティング事業
・カーボンクレジットの創出、売買
・飲食に関する事業

おわりに

磯焼けは、気候変動を主因とする深刻な海洋環境問題の一つです。このまま磯焼けが進んでしまうと、漁業が衰退し、食文化も失われてしまい、取返しがつかない状況になってしまうことが予想されます。

当サイトでも磯焼けにの問題について紹介している記事がありますので、ぜひご覧ください。

磯焼け(海の砂漠化)が引き起こす問題と対策に向けた取り組み

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