EUでは2035年にガソリン車の新車販売禁止の方針を打ち出すなど、地球温暖化防止に向けて積極的な政策を推し進めています。
持続可能な社会という目標の実現を目指すと同時に、経済的な競争においても後塵を拝することのないよう、日本においてもより積極的な議論と取り組みが必要ではないでしょうか。
目次
地球温暖化とは?
「地球温暖化(Global Warming)」という言葉は、1975年に米国コロンビア大学の地球化学者の故・ウォーレス・ブロッカー教授によって、学術誌で発表された論文『Climatic Change: Are We on the Brink of a Pronounced Global Warming?』(気候変動:私達は顕著な地球温暖化に瀕しているのか?)で使わたのが最初となっています。
現代社会で地球温暖化という言葉が使われる時は、厳密には、「人為的な原因によって地球の表面温度が高くなっていること」を意味することが多いでしょう。
気候変動との違いは?
「気候変動(Climate Change)」という言葉がありますが、こちらは「気温上昇や温室効果ガスの増加に伴って起こる気候の変化のこと」を示しています。つまり、地球温暖化という現象に加えて、その影響までを含んでいます。
国際連合環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって、気候変動の影響規模や緩和・適応の手段について科学的、技術的、社会経済学的な情報を分析するために創立された機関である「IPCC」(気候変動に関する政府間パネル)の正式名称は “Intergovernmental Panel on Climate Change”であり、「気候変動(Climate Change)」という言葉を用いています。
また、SDGs(持続可能な開発目標)の目標13では「Climate Action」(気候変動に具体的な対策を)として、”Climate”(気候)という言葉が用いられており、国際社会では「気候変動」という言葉が多く用いられています。
一方、日本では「地球温暖化」という言葉の方が普及しており、気候変動の意味を表す場合でも「地球温暖化」という言葉が一般的に使われています。
地球温暖化の原因は?
地球が温暖化していることや、人為的に排出された温室効果ガスが地球温暖化の原因であることに懐疑的な人は現在でも一定程度存在しています。その一方で、異常気象や自然災害が起きると全てが地球温暖化のせいだと信じている人も存在しています。
そのような中、2014年のIPCCによる第5次評価報告書において、「20世紀半ば以降、観測されている温暖化の主な原因は人間の影響である可能性が極めて高い」と結論づけられました。
地球から宇宙に放出される熱が逃げすぎないようにしている「温室効果ガス(Greenhouse Gas)」の大気中の濃度が上昇を続けており、それに伴って地表の温度も上昇しているという因果関係が科学的に検証されました。
主な温室効果ガスである二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素(亜酸化窒素)の濃度は、人間の活動によって1750年以降増加を続けています。2011年の濃度は二酸化炭素が391ppm、メタンが1803ppb、324ppbとなっており、工業化以前の水準よりそれぞれ約40%、150%、20%高くなっています。
IPCCの第5次評価報告書によれば、人間の活動によって排出している温室効果ガスは下図のような割合となっています。(2010年時点)
二酸化炭素
人為起源の温室効果ガスの排出量に占める二酸化炭素の割合は76%となっています。
石炭・石油などの化石燃料の燃焼によるものが65.2%と大半を占めており、森林減少や土地利用変化によるものが10.8%となっています。
メタン
人為起源の温室効果ガスの排出量に占めるメタンの割合は15.8%となっています。
メタンの排出の半分以上が、化石燃料の使用、牛などの反芻動物、水田、埋立等によるものです。
一酸化二窒素(亜酸化窒素)
人為起源の温室効果ガスの排出量に占める一酸化二窒素の割合は6.2%となっています。
一酸化二窒素の排出の約3分の1は、農耕地の土壌、家畜、化学工業等の人間活動によるものです。
フロン類等
オゾン層を破壊するフロン(CFCs)の大気中濃度は、1995年以降、モントリオール議定書の規制のもとでの排出削減の効果により、微増又は減少しています。
一方で、これらの代替物質(HFCs)や一部の化合物(パーフルオロカーボン(PFCs)や六フッ化硫黄(SF6)など)もまた温室効果ガスであり、それらの濃度は現在増加しています。
地球温暖化の影響は?
地球温暖化による影響は広範囲に及ぶ上、派生して生じる影響までを含めた全体像を把握するのは容易ではありません。また、地域によって影響が異なってくるため、一括りにすることも難しいという特徴があります。
ここでは地球温暖化の影響のうち、よく知られている影響の一部を紹介します。
海水温の上昇
海洋は地球の表面積の7割を占めており、大気中の熱を吸収します。1971年から2010年までの40年間に大気に蓄積された熱エネルギーの9割以上は、海洋に吸収されています。
2019年1月発行の科学誌『Science』によると、世界の海水温は2014年にIPCCが発表した予測よりも40%程早く上昇していています。
海水温の上昇によってサンゴ礁が減少しています。世界のサンゴ礁の総面積は60万km2で地球表面の0.1%を占めていますが、確認されている生物種は9万種を超えていることから、サンゴ礁の減少によって生物の多様性が失われる可能性があります。
また、赤道直下付近の熱帯海域では温度が上がって魚の住める環境でなくなり、漁獲量が激減する可能性があることも予想されています。
海面水位の上昇
気温の上昇によって、南極やグリーンランドの氷床が溶けて海に流れこみ、海水の量が増加します。また、海水温の上昇によって海水が膨張しています。これらの原因によって、海面水位が世界的に上昇しています。
IPCCの第5次評価報告書によると、1901年から2010年までの約100年間で海面水位は19cm上昇しました。このままいくと21世紀中に最大82cm上昇すると予測されています。
海岸沿いに海抜以下の地域を有する日本やオランダ、バングラデシュ、オセアニア諸国などでは対策が必要であり、最悪の場合は居住不能になることも起こりえます。
熱中症や感染症の増加
気温の上昇や熱波によって熱中症による死亡者数は増加傾向にあります。
環境省によれば、蚊やダニなどの媒介性動物の活動地域を拡大させ、日本脳炎、マラリア、デング熱、ウエストナイル熱、リフトバレー熱、ダニ媒介性脳炎、ハンタウイルス肺症候群などの感染症が増加します。また、水系汚染によって下痢症(コレラ等)が増加すると想定されています。
終わりに|地球温暖化とは?気候変動との違いは?原因と影響について
全文を要約すると、以下のようになります。
・地球温暖化とは?…人為的な原因によって地球の表面温度が高くなっていること。
・気候変動の違いは?…気候変動は、地球温暖化という現象に加えて、その影響までを含んでいる。
・地球温暖化の原因は?…温室効果ガスの大気中の濃度上昇。
・地球温暖化の影響は?…海水温の上昇、海面水位の上昇、熱中症や感染症の増加など。
「人類が石炭や石油などの化石燃料を燃やし始めた頃から地球の平均気温が上昇している」「その原因は化石燃料の燃焼を中心とした温室効果ガスの増加」といったことは事実として認識され、それによって起きている影響についても因果関係の科学的な証明が進みつつあります。
しかし、そうしている間にも、気温や海水温は上昇を続けており、科学的な証明が意味をなさないほど、誰の目にも明らかな変化が迫っているような気がしているのは筆者だけでしょうか?
そうした状況が現実になったときには「時すでに遅し」ということかもしれません。