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フレキシタリアンとは?植物性食品中心の食生活で地球を持続可能に

フレキシタリアンとは?植物性食品中心の食生活で地球を持続可能に

世界中の消費者は食習慣を変えようとしており、植物由来の食品にシフトしています。ヨーロッパでは人口の約10%がベジタリアンやヴィーガンといわれており、今後も増加することが予想されています。Googleトレンドでの「ヴィーガン」への関心は2014年から2019年にかけて7倍になっています。

家畜の飼育は毎年排出される世界全体の温室効果ガスの15%近くを占めています。直接排出と間接排出の最も包括的な評価では50%以上とされており、地球温暖化の主な要因の一つとなっています。世界資源研究所(WRI)は2016年に発表した報告書で、

1日あたり60グラム以上のタンパク質を摂取し、1日の摂取カロリーが2500カロリー以上の地域で動物性タンパク質の過剰摂取を減らすと、世界の食糧供給と地球の未来を持続可能なものにする最も有望な策になる

と結論づけました。

ここでは、無理なくできる範囲で動物性タンパク質の摂取を減らしていこうという「フレキシタリアン」を中心に、ヴィーガンやベジタリアンなど、様々に枝分かれしている食生活のスタイルを紹介します。

フレキシタリアン(英語)とは?

フレキシタリアン(英語:flexitarian)とは、「Flexible(柔軟な)」+「Vegetarian(菜食者)」を足し合わせた造語です。

言葉が表している通り柔軟なスタイルで、基本は植物性食品を中心に食べるものの、時には肉・魚も食べるという食生活のスタイルです。日本語では『ゆるベジタリアン』などと呼ばれています。

アメリカでは2003年に「ときどき動物性食品を食べるベジタリアン」を一言で表せる言葉として、流行語大賞の便利な言葉部門に選ばれました。

また、一定の日に肉を食べないようにする、といった動きも広がりをみせています。こうした運動の実践者もフレキシタリアンの範疇に含まれると言って良いでしょう。

ミートフリーマンデー(英語: Meat Free Monday)という、2003年にアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学院が「月曜日だけは肉をやめて環境にいい影響を与えよう」と提唱したことから始まった運動があります。

英国に本部を構えるMeat Free Mondayはポールマッカートニー氏が中心となって世界中で活動しています。

ミートフリーマンデー
【出典】Meat Free Monday

日本でも、日本ベジタリアン協会が2009年発足させた「ミートフリーマンデー・ジャパン」運動を母体として、2015年にベジプロジェクト・ジャパンやアニマルライツセンター・ジャパンなどが加わって拡大改組された「ミートフリーマンデー・オールジャパン(MFMAJ)」が活動しています。

フレキシタリアンの有名人は?

もとはヴィーガンやベジタリアンだったものの、健康を維持するためという理由でフレキシタリアンになる有名人もでてきています。

例えば、『アナと雪の女王』シリーズでアナ役の声優を務めているクリステン・ベルは、動物愛護の観点からべジタリアンでしたが、肉食や加工食品の害とプラントベースの食生活に関するドキュメンタリー『Forks Over Knives』を観てヴィーガンになりました。

しかし、第一子の妊娠をきっかけに、もっとカロリーが必要だと感じてべジタリアンに逆戻りしました。そして次女を出産した2013年には、エネルギー・チャージのために卵と乳製品は摂ることに。そして、ツイッターで「チキンを食べている」ことも明かしました。

女優のアン・ハサウェイも、健康上の理由でヴィーガンからベジタリアンに、そしてその後、野菜・肉・魚など古来からの自然の食材中心で、加工食品は口にしないパレオダイエットを実践しています。

フレキシタリアンとヴィーガンの違い

フレキシタリアンは、動物性タンパク質を食べてよいとする頻度なども決まっておらず、普段は菜食を中心にしながらたまに肉・魚を食べるというスタイルの人もいれば、普段は好きなものを食べつつ週に1日は肉・魚を食べない日を設けるというスタイルの人もいます。

一方で、ヴィーガン(英語:Vegan)は、動物性の食品(魚・肉・卵・乳製品など動物から生み出されるもの全て)を摂取しない、厳格な菜食主義者のことです。ピュア・ベジタリアン(Pure-Vegetarian)とも呼びます。

ベジタリアンから派生した言葉で、Vegetarianの語頭の3文字と語尾の2文字を組み合わせて作られた造語です。

宗教・アレルギー・ダイエットなど理由は他にもさまざまありますが、動物愛護・環境問題・食糧問題といった様々な社会課題に対する行動としてヴィーガンを選択する人たちが増えています。

また、動物製品(皮製品・シルク・ウール・羊毛油・ゼラチンなど)を身につけない、動物実験をしていない化粧品を選ぶといったように、食べるものだけに限らずライフスタイル全般にまでこだわりの範囲を広げたビーガニズム(Veganism)と呼ばれる生き方を貫く人も増えています。

反対に、植物性食品のみの食事はするけれども、食用以外では動物製品の利用を必ずしも避けようとしないスタイルのことをダイエタリー・ビーガン (Dietary Vegan)といって区別したりもします。

ベジタリアンの定義(代表的な5つの分類)

ベジタリアンは、食べるもの・食べないものの選別基準によって細分化されます。

ヴィーガンはかなり厳しい選別基準のスタイルですが、タンパク質を摂取するために卵・乳製品は食べるというスタイルもあったりするなどたくさんのスタイルがあります。

ここでは、代表的なベジタリアンの分類を5つ紹介します。

①ラクト・ベジタリアン

1つ目は、ラクト・ベジタリアン (英語: Lacto-Vegetarian)です。

ラクトとは、ラテン語で乳を意味しています。

従って、ベジタリアンでも乳製品は食べるスタイルです。

インド人の菜食主義者はこのタイプが多いそうです。

②オボ・ベジタリアン

2つ目は、オボ・ベジタリアン(英語: Ovo-Vegetarian)です。

オボとは、ラテン語で卵を意味しています。

従って、ベジタリアンの中でも卵は食べるスタイルです。

③ラクト・オボ・ベジタリアン

3つ目は、ラクト・オボ・ベジタリアン(英語: Lacto-Ovo-Vegetarian)です。

オボ(卵)とラクト(乳)の両方が入っているので、ベジタリアンの中でも乳製品と卵だけは食べるスタイルです。

④ペスコ・ベジタリアン

4つ目はぺスコ・ベジタリアン (英語: Pesco-Vegetarian)です。ペスカタリアン(英語: pescatarian)とも呼びます。

ぺスコとは、ラテン語で魚を意味しています。

肉類は一切食べないけれども魚介類は食べるというスタイルです。魚以外にも、卵や乳製品に対する制限を設けていない人もいるなど個人差があります。

漁業は畜産業よりCO2排出量が少ないから、といった理由で魚を食べる人がこのスタイルの選ぶことが多いようです。魚のみを食べる人は肉を中心に食べる人と比べて約46%排出量が少ないといったデータもあるようです。

⑤ノン・ミート・イーター

5つ目はノン・ミート・イーター (英語: Non-Meat-Eater)です。

肉は食べないけれども、乳製品・卵・魚介類は食べることもあるというスタイルです。

おわりに|フレキシタリアンとは?

グローバルフードシステムによって12兆ドル(約1308兆円)もの負のコストがもたらされており、その内訳は、健康に関するものが6兆6000億ドル(約719兆円)、環境(気候変動など)に関するものが3兆1000億ドル(約338兆円)、経済(フードロスなど)に関するものが2兆1000億ドル(約229兆円)となっています。

今回紹介したような植物性食品を中心とした食生活を送る人が増えることで、健康面・環境面での負のコストの大幅な削減が期待されます。

欧米ではミュージシャンや映画俳優などの影響力の大きなアーティストが、特に環境面を意識してこうした食のスタイルを採用し、積極的に情報発信をしています。

また、植物由来の代替肉(プラントベースドミート)の市場も急速に拡大しており、食生活の革新を通じて世界の持続可能性を高めていこうという機運は今後もどんどん高まっていくことが予想されます。

一般人にとって、人類の持続可能性を高めることに貢献する「最高の行動習慣の一つ」と言って良いでしょう。

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