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アグリテックとは?活用事例・日本の動向

アグリテックとは?活用事例・日本の動向

農業分野の最新技術である「アグリテック」は、今世界が注目している分野のひとつです。アグリテックとはどういうものなのでしょうか?

アグリテックとは

「アグリテック」(英語: Agritech)とは、農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を足してつくられた造語です。

日本では「スマート農業」、海外では「スマートアグリカルチャー(Smart Agriculture)」「スマートアグリ(Smart Agri)」などとも呼ばれています。

ITなどの技術革新により、私たちの生活は大きく変化しました。あらゆるもののあり方が、インターネットなどの技術革新によって変わったといっても過言ではないでしょう。

農業においても農機具の導入により機械化は進みました。トラクターや耕運機により力仕事は機械に置き換わりました。しかしまだ、人間が判断しなければならない部分が多く残っており、そうした部分まで自動化できるようなアグリテックが期待されています。

日本では食料自給率の低下や農業従事者の高齢化や減少など、農業に関するさまざまな課題があります。このような課題を解決するため、「ドローン」「AI」「ビッグデータ」「IoT」「ブロックチェーン」などの最新のテクノロジーを活用したアグリテックの開発が進められています。

日本の農業分野の課題

あらためて、日本が抱える農業分野の課題をみていきましょう。

低い食料自給率

日本の食料自給率は、この50年の間にカロリーベースで約50%に低下しています。1965年にカロリーベースで73%あった食料自給率は、2018年に37%まで低下しました(農林水産省統計)。2030年までに食料自給率を45%に回復させることが農林水産省の目標です。その手段として、アグリテック(スマート農業)による農業分野の生産性向上を目指しているのです。

耕作放棄地の増加

日本の耕地面積は長期的に減少傾向が続いており、2018年には467万haとなりました。耕作放棄が非農業用途への転用を上回って推移していることが、耕地面積が減少する大きな要因となっています。

2017年の耕作放棄地面積は2012年より4万3千ha(13%)増加して38万6千haとなりました。増加率は近年鈍化しているものの、耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達しています。

耕作放棄地問題に挑むスマート農業ビジネスまとめ

農業人口の減少・高齢化

日本の農業人口は1995年から2015年の20年間に半減してしまいました。農業従事者の高齢化も進んでおり、65歳以上の農業従事者の割合は全体の約63%を占めています。

日本では農業人口の減少と農業従事者の高齢化が同時並行で進んでいるため、アグリテックは農業の省力化はもちろん、若者が活躍する場としても期待されています。

農業の人手不足問題と解決策について

アグリテックに期待されていること

アグリテックに期待されていることを、あらためてみていきましょう。

アグリテックで農作業の負担や作業時間を減らすことが期待されています。農作業の省力化としては、農業用ドローンやAIを活用した無人モニタリングシステム。また、これまで手作業で行っていた選果作業をロボット農機により自動化することも進んでいます。

従来の農業技術の多くは、農業従事者の長年の経験による「勘」や「コツ」が大きなウェートを占めていました。これらの勘やコツというのは伝えるのが難しく、また新規就農者がすぐに覚えられるものではありません。これらの勘やコツを見える化し、新規就農者でも熟練の農業従事者と同じような判断を可能にすることも、アグリテックの大きな目的です。この分野に適用が期待されている技術はAIやIoTなどの活用です。

アグリテックの活用事例

次にアグリテックの活用事例をみていきましょう。

種まきや農薬散布をする農業用ドローンには大きな期待が集まっています。農業用ドローンを地上から操作し、上空から種まきや農薬散布すれば、手作業より広い範囲に早く作業が可能です。

ミャンマーでは1人で6台のドローンを使い、1日に約10万本のペースで植林可能な技術が開発されているという事例があります。

熟練の農業事業者の勘やコツを見える化する技術としては、AIとビッグデータの活躍が期待されています。センサーから得た情報をビッグデータとしてAIで分析すれば、熟練農業従事者の勘やコツが見える化できるのです。

たとえば、今まで勘で管理していた水田の水位などはセンサーでデータ化できます。また、画像認識技術を応用すれば、作物の収穫時期の判断や病害虫などの異常検出も可能です。

これらの情報を生産者同士で共有化することで、さらなる農業技術の発展が期待できます。

人間が生産物を24時間体制で監視しようとすれば、大きな人件費が必要です。ここでIoTを活用すれば、その労力を省力化可能です。たとえば、農園に温度・湿度・雨量センサー、カメラ画像などを10分間ごとに取得して、クラウド上のサーバにアップしている事例があります。スタッフはインターネット経由でこのサーバに接続すれば、いつでも作物の状態を把握できます。

アグリテックにおける日本の動向

農林水産省が「スマート農業加速化実証プロジェクト」を推進しています。このプロジェクトの目標は、2025年までにほぼすべての農家がデータを活用した農業を実践することです。

具体的には「最先端技術の導入・実証」と「社会実装を進めるための情報提供」をプロジェクトの施策に。最先端技術の導入・実証では、生産から出荷まで、それぞれの工程で活用できるアグリテックを紹介しています。

最先端技術の導入・実証で収集されたデータは、多くの農家が活用できる形で公表されるようになっています。そして、そのデータは農家が実際にアグリテックを採用する際の判断材料になるのです。

このように農林水産省もアグリテック(スマート農業)を推進しているため、今後急速にこの分野は普及すると期待されています。

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