若い年齢の頃には縁遠い「介護」という言葉。しかし、年齢を重ねて自分の親世代が高齢になってくると、ほとんどの人に関わってくる問題となります。
ここでは介護離職という社会問題について解説するとともに、負担や原因、解決策についても紹介していきます。
介護離職とは?介護離職をする人の数は?
介護離職とは、家族を介護するという理由で勤めている会社を退職したり店を畳んだりして離職することをいいます。
高齢化社会が進むなかで介護を必要とする人が増え、それに比例して介護をする人も増えているのが現状です。
総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」の結果によると、15歳以上人口のうち、介護をしている人の数は627万6,000人で、全体の約5.7%を占めています。
平成28年10月~29年9月の1年間で「介護・看護のため」に離職した人は9万9,000人となっています。
これは、同期間の離職者に占める割合としては1.8%を占めています。
また、性別による内訳は、男性が2万4,000人、女性が7万5,000人となっており、女性が約8割を占めていることから、介護離職問題は特に女性の就労環境に大きな影響を与えているといえるでしょう。
介護離職の現実と離職によって起こる負担
離職した介護者には以下のような負担がのしかかります。
経済的な負担
離職して仕事を失うことで無職状態となり、収入がなくなります。また、転職しても今までのような収入ではなく、激減する人がほとんどです。
介護者はほとんどが40代から50代の働き盛りで、特に家庭を持っていて子どもがいる場合は生活費がかかります。それにも関わらず収入が無くなったり激減してしまったりするということは、自分たちの生活が困窮するということになるのです。
自分の家庭を持っていなくても収入がなくなったり減ったりするのは、生活していくうえで、とても厳しい状況になることは間違いありません。
また、正社員として働き介護のために退職して介護をやり切り、その後再就職して働こうとしても厳しい現実があります。特に介護の期間が長く仕事に対してブランクがある場合は、同じ業種で正社員として働くことは難しくなるでしょう。
精神的な負担と身体的な負担
介護のために離職すると経済的にも厳しくなり、介護の不安もあって精神的な負担がかかってきます。
一見、仕事と介護の両方を抱えているときの方が精神的な負担がかかるようですが、そうではないようです。
離職して介護中心の生活になってしまうと、社会とのつながりがなくなり、疎外感や孤立感を覚え、さらに将来のことなどの悩みも加わり精神的な負担が増したという人が多くなっています。
また、身体的な負担は仕事をしていないので余裕があるように思われますが、介護と家事は思いのほか体力を使います。
介護というのは食事や排せつの直接的な世話だけではなく、24時間介護者のことが気になってしまうものです。そうなると眠れなくなってしまうケースも多々あり、余計に身体的な負担がかかってしまうのです。
介護離職が起きる原因
社会問題とまでなっている介護離職ですが、介護離職が起きる1番の原因は高齢化社会にあります。
総務省統計局によると2019年の9月時点で日本の高齢化率は約28.4%と過去最高です。通常21%を超えると高齢化社会ではなく超高齢化社会と呼びますので、日本は高齢化社会ではなく超高齢化社会と呼ぶのが正解です。
しかも、2019年時点で日本は高齢化率で世界1位となっています。2位がイタリアで23%、3位がポルトガルで22.4%と続きます。
高齢者が増え続けているということは介護を必要とする人が多くなるということで、必然的に介護をする人も多く必要となるのです。
また、日本で介護離職が起きるのは核家族化や少子化という問題も絡んできます。一緒に住む家族が多かったり介護する兄弟がいたりすれば、介護を分担でき、離職するまでにはいかないケースが多いです。
しかし、高齢者の1人暮らしが多くなるなか、兄弟がいない場合は1人ですべてを抱え込まなければなりません。結果、仕事と介護の両立が難しくなり、離職するしかなくなることが多いのです。
介護離職問題の解決策
介護保険を活用すると自己負担1割から3割で介護保険サービスを受けることができます。具体的には施設で食事や入浴、リハビリなどを受けられるサービスです。
また、福祉用具を自己負担1割から3割で購入できたり、自動排泄処理装置がレンタルできたりもします。
正社員はもちろん、パートやアルバイトの人でも取得できる介護休暇や介護休業を活用するのも、離職問題を解決する方法です。特に離職休暇は事前の申出が不要で、半日から取得できますので急なときに便利となります。
最後に介護離職問題の解決にあたり重要なのが、勤め先に介護していることを報告することです。
報告していないと介護に関する電話などで勤務態度を疑われたり、介護を隠していること自体がストレスになったりします。仕事と介護を両立していくには、勤務先の理解が不可欠となります。
終わりに|介護離職とは?
高齢化社会が進むなかで、これからも介護をする人が増え続けることでしょう。少子化でもあることから、この問題はどうすることもできないかもしれません。
しかし、介護離職者を減らすことは、皆が協力し合うことで可能となります。それぞれが介護に関しての理解を深め、協力し合って介護離職者を減らしていきましょう。