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ワーキングプアとは?定義・原因・問題点について

ワーキングプアとは?定義・原因・問題点について

ワーキングプアという言葉をご存じでしょうか?ワーキングプアとは、午前9時から午後5時までなど、1日8時間のフルタイム働いているにもかかわらず、生活を維持するのにギリギリか生活するのに困難な収入の人を指します。

ここではワーキングプアの原因と問題点について紹介するとともに、その定義や現状などについても紹介します。

ワーキングプアの定義

ワーキングプアとは、生活保護の水準すら満たさないほどの収入しか得られない人のことで、別名「働く貧困層」と呼ばれたりもします。

もともとワーキングプアについて議論が始まったのは、進歩主義時代といわれる1890年から1920年ごろのアメリカでした。思想家などが集まり議論され、一応は貧困線を満たす収入を得られていない労働者という基本的な見解はなされました。

しかし、具体的な意味や定義に関しては今もなお議論が続いています。それぞれの国の事情や所得水準が違うため、一概に決められないのは仕方がないのかもしれません。

日本では年間収入が200万円以下と定義づけられることが多いのですが、非正規社員が年間200万円以下、正社員の場合は年間300万円以下と考えられるケースもあるようです。

年間200万円以下となっているのは、生活保護における給与水準が年額約200万円となっているからです。

ワーキングプアの現状

総務省の「労働力調査や就業構造基本調査」と国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、年収が200万円以下のワーキングプアといわれる人は1,100万人を超えています

日本におけるワーキングプアを男女別に分けると、男性のワーキングプアの割合の全国平均は約25%で、女性の全国平均は約40%と女性の方が多くなっています。

日本の経済が2012年以降、少しずつ回復傾向にあるといわれていますが、ワーキングプアが1,100万人以上もいるのにはさまざまな原因があります。

ワーキングプアの原因

非正規雇用の増加

労働者派遣法の規制緩和によって、職業紹介の事業が自由化されました。その結果、職業紹介事業者や労働者派遣事業者が増加し、パートやアルバイトといった非正規雇用の人が増えました。これがワーキングプアを生む原因の1つとなっています。

非正規で働く人は雇用期間が決められていたり、キャリアアップが期待できなかったりすることから低収入になりやすいのです。企業間の取引で起こるコスト削減の圧力によって企業の人件費も削減される傾向にあります。これもワーキングプアを起こす原因となっています。

各企業は海外の安いコストとの競争の中で安い労働力を確保するために賃金が安く済む外国人を雇用したり、パートやアルバイトといった非正規社員を増やしたりしています。その結果、非正規社員が増えワーキングプアも増えるのです。

シングルマザーは正規雇用として働きづらいため、特にワーキングプアに陥りやすい状況にあります。日本のひとり親世帯の貧困率は50.8%(2015年)と半数を超えており、OECD加盟国35カ国中ワースト1位という最悪の状況なっています(OECD調査より)。

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デフレによる賃金水準の低下

また、非正規社員ではなく正社員として働いていても、ワーキングプアになる人もいます。

原因は、デフレによる賃金水準の低下です。日本はバブル崩壊以降に急激にデフレが進み労働者の賃金水準が低下してしまい、その尾が引きずられています。結果、正社員として働いていても、なかなか給料が上がらずワーキングプアになってしまうのです。

働き方の価値観の多様化

価値観の多様化もワーキングプアを生む原因となっています。これまでは、正社員として新卒で入社し、定年まで働くといった概念が一般的でした。しかし、終身雇用が崩壊しつつあり、労働者の価値観も多様化してきています。

「いつどうなるかわからないなら、お金がなくとも自分の好きなことをして、生きたほうが良い」などという考えの人が増えています。自分の意思で収入が少ない非正規雇用などのワーキングプアの道を選択する人も存在しています。

以上のようにワーキングプアにはさまざまな原因がありますが、色々な問題も起こってきます。

ワーキングプアの問題点

ワーキングプアの深刻な問題として、過労死自殺があります。

自ら選んだわけではない人がフルタイムで働いてもお金が足りないと、他に仕事を増やしたりして体を酷使します。その結果過労死に繋がってしまうこともあるのです。

また、お金がなく生活が苦しくなると精神的に追い込まれていきます。生活費を賄うために金融機関に借金してしまうこともあるでしょう。精神的に追い込まれて借金が重なると、自殺者も増えることにつながります。

ワーキングプアによって結婚ができない人も増えます。結婚生活にはある程度安定した収入が必要です。結婚できない人が増えると少子化にも拍車がかかります。ワーキングプアは少子化問題の原因の一つにもなっています

この他にも、ワーキングプアは老後の生活設計ができずにホームレスになってしまう可能性や、国にとっては税収が減少してしまうという問題もあります。

終わりに|ワーキングプアとは?定義・原因・問題点

大学を卒業して就職する時期に不況だったり、働いていてうつ病になったりして、ワーキングプアの状態に陥ってしまうことは決して珍しいことではありません。

一旦ワーキングプアの状態に陥ると、高い専門性を身につけたり、職業経験を十分に積むことができないため、ますます収入の高い職業に就くことが難しくなるという悪循環に陥りがちになります。

できるだけ若いうちに、こうした悪循環から抜け出すための再教育や職業紹介といった支援の強化が必要でしょう。また、借金地獄から抜け出せなくなってしまっている人には債務整理を支援するような取り組みも必要です。

若い人は収入が上がれば消費に回す可能性があり、結婚できて子供が生まれれば少子化の問題改善にもつながる可能性が高いことを考えると、ワーキングプアは我が国にとって、重要度・優先度ともに高い課題だといえ流でしょう。

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