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タイニーハウスとは?注目を集めるミニマルなライフスタイル

タイニーハウスとは?注目を集めるミニマルなライフスタイル

盲目的に経済成長を目指すことに対する疑問と、サステナビリティという概念の広まりを受けて、ミニマルライフ(持たない暮らし)に対する関心が高まっています。

2020年からのコロナ禍によってテレワークが普及し、「多拠点居住」や「ワーケーション」といったような、住む場所や働き方の自由度が高まってきたこともあいまって「タイニーハウス」に対する注目度が高まっています。

タイニーハウスとは?

「タイニーハウス」(英語:tiny house)とは、小さな(=tiny)と家(=house)を組み合わせた言葉のことで、小さな家、または小屋を意味します。小ささの基準は計画に定められているわけではありません。なかには、10平米ほどの(4.5畳のワンルームサイズ)かなりコンパクトなものもあります。

発祥の地であるアメリカでは、2000年頃から大量生産・大量消費文化に対するカウンターカルチャーとして、多くのモノを所有せずにシンプルな暮らしを志向するムーブメントが起きつつありました。そして2008年に、行き過ぎた資本主義の崩壊ともいえるリーマンショックや、大型ハリケーンカトリーナによる甚大な被害などを受けて、多くの人が自分の家を失ったことがきっかけとなって、タイニーハウスのような小さな住まいが注目を浴びることになりました。

日本においても、失われた30年を経て、物質的な豊かさの追求を疑問視し、シンプルでミニマムな精神的な豊かさを追求する生活に憧れる人が増えていることが、タイニーハウスが注目されていることの背景にあります。そして、働き方改革やコロナ禍によるリモートワークの普及を受けて、都市から地方に移住したり、二拠点居住を始める人も増えたりしていることが、こうした流れをますます加速させています。

タイニーハウスに住むメリット

タイニーハウスのメリットは、コストが低いことが挙げられます。タイニーハウスは、面積が小さいため一般的な住宅に比べると建築費が抑えられます。また、面積が小さい分、固定資産税などのライフサイクルコストも低価格で済みます。築年数が経って老朽した場合の修繕費用も抑えられます。

部屋が小さく、空間が限られているため、シンプルでミニマルな生活を送りやすいというメリットもあります。

また、その小ささは光熱費などの生活維持費を大幅に削減できます。部屋が少ない分、電気の使用や冷暖房の使用も抑えられますし環境への配慮にもつながります。掃除をする負担を減らし、多くの物を維持するストレスからも解消されます。

また、タイニーハウスをテレワークの仕事場や、週末のセカンドハウスとして利用するといった方法もあります。都度、コワーキングスペースやホテルなどの施設を利用する必要がなくなるため、プライベートな空間を確保することができる上に、長い目で見れば価格的に割安になる可能性もあります。

タイニーハウスに住むデメリット

タイニーハウスはその小ささ故にデメリットもあります。

家族を始めとした同居人がいる場合、プライバシーを保ちにくいため、ストレスが溜まってしまう場合があります。自分は良くても、子供がいて成長するにつれて手狭になってしまったり、同居人の気持ちが変わってしまったりすると、ライフスタイルの維持が困難になります。

また、タイニーハウスを志向する人はミニマリストが多い傾向にあるとはいえ、物を置く場所の不足などに困る場合もあるでしょう。場合によっては、トイレやシャワーなどの設備を母屋に設置でないといったように不便な生活になるケースも出てきます。

通常、家を建てる場合は建築確認申請が必要ですが、タイニーハウスに関しても、気軽さが売りであるにもかかわらず、大体の場合において建築確認が必要となります。ただし、「10平方メートル以下」「防火地域・準防火地域以外の地域」「増築・改築・移転」の場合は建築確認申請は不要です。また、都市計画区域外であれば、200平方メートル未満(木造は500平方メートル未満)まで建築確認申請が不要です。

タイニーハウスの種類

タイニーハウスには、いくつかの種類があります。最も大きな違いは固定式か移動式かではないでしょうか。しかし、コンテナハウスや組立式のタイプでは、建物ごと引越しするといったことも可能ではあります。

スモールハウス(マイクロハウス)

一般の家と同じく基礎がついているスモールハウス。マイクロハウスと呼ばれることもあります。

通常の住宅を建てる場合と同じく基礎がついているので動かすことはできません。小さな家として利用したり母屋の隣に建て書斎や子供部屋に利用されることもあります。タイニーハウスの中でも最もスタンダードな活用法です。カスタマイズ性が高いので趣味を生かしたライフスタイルに向いています。

アースバッグハウス(ストローベイルハウス)

身近な自然素材である”土”を袋(バッグ)に入れて積み上げる「アースバッグ工法」で作られた小屋や小さな家です。

現代建築は水平垂直が基本ですが、アースバッグ工法は曲線形状が表現しやすいため、メルヘンチックで可愛いフォルムに仕上げることができます。複数の個体をつなげて複合型の建造物に進化させていく事も可能です。また、土を主材に使用するため資材の調達に困ることはありません。強度も強く、不燃材である土を使っているため火事にも強いものの、建築確認はなかなか通りにくいため、10平米以下の小さな小屋に向いています。

似たような雰囲気を持つタイニーハウスとして、藁のブロック(ベイル)を積んで表面にモルタルや土を塗った「ストローベイルハウス」というものもあります。壁の表面がデコボコとしていて、全体的に丸みのあるフォルムとなるため、可愛くて温かみのある外見が特徴です。開拓時代の米国ネブラスカ州発祥で、開拓者たちが草原の草を固めて家を建てたのがはじまりだと言われています。

日本では、埼玉県鳩山町に「PeaceVillaはとやま」という、ストローベイルハウスの家が集まったシェアビレッジがあります。

コンテナハウス

コンテナハウスとは、輸送用のコンテナを使った家のこと。コンテナハウスの最大の魅力は、安さと工期の早さです。

組み合わせの自由度が高く、広い空間作りや二階建てなども可能なので住まいのほかにも、店舗やガレージ、事務所などにも幅広く活用されています。デザインにこだわればスタイリッシュなオシャレな空間に早変わりします。

トレーラーハウス

トレーラーハウスは、移動が可能なところが最大の特徴です。シャーシと呼ばれるタイヤの付いた土台の上に建てられるのが一般的で車で牽引して移動します。そのため家ごと引っ越しすることもできます。

トレーラーハウスは一定の基準を満たすことができれば不動産として扱わないため固定資産税がかからないのも魅力です。自由なくらしを求める人に向いています。

キャンパー(バンライフ)

キャンパーとは、車の内部を改造して住めるようにした家のことです。

キャンパーには、キャンピングカーのようにあらかじめ住むための設備が付けられて販売されているもののあれば、バスや大型のバンを改造されたものなど種類がさまざまあります。キャンパーに自分でDIYをしながら工夫を凝らすのも楽しみのひとつです。旅をしながらくらしを楽しみたい人に向いています。

最近では、「バン(VAN)」と「ライフ(LIFE)」を掛け合わせた「バンライフ」というスタイルが流行の兆しを見せており、車中泊スポットとキャンピングカーのシェアリングプラットフォーム事業を展開するCarstay株式会社という会社も登場しています。

タイニーハウスの国内メーカー事例

国内でタイニーハウスを展開しているメーカーは増えてきていますが、そのうちの有名な企業をいくつか紹介します。
(注)各社の情報は2021年11月29日時点のものです。

ジャパンドームハウス

JAPAN DOME HOUSE▼運営サイト: ジャパンドームハウス

石川県加賀市に本社を構える、ドームハウスの設計・製造・販売会社。

木材、鉄、コンクリート以外の構造材としては、日本で初めて国土交通省から認定を受けた『発泡ポリスチレンを構造材としたドーム型建造物』です。モンゴルの移動式住居である「ゲル」や、鳥山明氏のドラゴンボールに登場する「ホイポイカプセル」のような外観で、断熱性・耐久性に優れた省エネ建物となっています。

44.2平米のドーム型から、ユニットを組み合わせることで大きさを変えられるロングドーム型があり、住居やオフィス・店舗としての利用や、室内農業ハウスとしての利用が可能です。

Instant House(LIFUL)

Instant House▼運営サイト: Instant House

大手不動産・住宅情報サイト「HOME’S」を運営する株式会社LIFULLが提供しています。

設置したい場所にドーム型の生地を固定し、空気を入れて生地を大きく膨らませ、その後、膨らませた生地の中に入り、内側から断熱性のあるウレタン材を吹き付けるという工程によって、着工からわずか数時間で完成するという、まさにインスタントなスモールハウスです。

素材が断熱材のため冬でも過ごすことができ、夏は熱気を外に逃します。設置場所も柔軟に対応可能で、特別な工具を使わずに移動・解体ができるので屋外でのイベントスペースとしての利用などにも利用できます。

サイズはS(5平米)、M(15平米)、L(20平米)の3タイプあります。

無印良品の小屋(MUJI)

無印良品の小屋▼運営サイト: 無印良品の小屋(MUJI)

「MUJI」では、屋内9.1平米、縁側3.1平米という、わずか6畳スペースのミニマムなタイニーハウス「無印良品の小屋」を販売しています。

価格は、材料費・施工費を合わせた税込価格で本体価格は3,000,000円(税込)〜となっています。生活スペースの居住空間のみを確保しておりトイレやシャワー、キッチンなどはありません。その分コスパが良く、どんな環境にも対応しやすいメリットを持ち合わせています。書斎や趣味部屋、二拠点生活用のセカンドハウスとして活用の場を広げている商品です。

住箱(snow peak)

住箱▼運営サイト: 住箱

アウトドアブランドで人気のsnow peakでは、「住箱」という名の木製のトレーラーハウスを販売しています。

こだわり志向に愛されるブランドだけあって、素材にはあえて素朴な木製デザインを選びほかにはないデザインと汎用性を確立しています。
室内の広さは10平米強となっており、本体価格は4,400,000円(税込)となっています。

IMAGO(BESS)

IMAGO▼運営サイト: IMAGO

「家は道具」とのコンセプトで1986年に事業を開始したログハウスメーカー。1988年には「ドームハウス」を発売しました。

じぶんりゅう、未来小屋というキャッチコピーの「IMAGO(イマーゴ)」は自然の無垢材を使用した小屋で、小屋の下に車輪を装備して移動できるタイプと、移動を前提としない建てるタイプの2タイプがあります。

移動できるタイプは、12フィート(6.51平米)の「走るログ小屋」(木屋根: 本体価格386.1万円)と、20フィート(11.27平米)の「移るログ小屋」(本体価格442.2万円)の2種類からなります。

建てるタイプのものは、6畳程度の広さで、マニュアル付きコンプリートキット販売で一式価格が148.5万円となっています。

おわりに|タイニーハウスとは

タイニーハウスに住みたいと考える人は、自然や農業に対しても強い関心を持っていることが多く、そのため、「パーマカルチャー」を目指す人たちとタイニーハウスは相性が良いと考えられてきました。「日本アースバック協会」を運営しているのが、熊本県の田舎町でパーマカルチャーなどの発想をベースにして持続可能で新しいライフスタイルを描く村づくりを行っている「三角エコビレッジサイハテ」の人たちだったりするのはその一例です。

一方で、働き方改革やコロナ禍によるリモートワーク化の普及をうけて、地方への移住、多拠点居住、セカンドハウス所有、バンライフといったように、多様なスタイルで、より多くの人たちがタイニーハウスが活用されてきていることから、タイニーハウスが一時的なムーブメントから、文化として定着しつつあるように感じます。

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