株式会社日立産機システムは、経過時間と温度との積算値に応じて変色するインク(温度×時間センシングインク)を活用した、食品の品質可視化ソリューションについて、本格的な事業化を見据えた有償サンプルの提供を開始しました。
ラベル印刷に使用して食品等に貼付することで、従来の温度ロガーなどの機器に比べて安価で電源不要かつ設置・確認が容易で回収も不要となり、サプライチェーン上での温度測定が容易になります。 本ソリューションの活用により青果物の食べ頃などの品質情報が可視化されることで、商品価値の向上や廃棄ロスの低減が期待されます。
背景
農産物市場は、日本国内では人口減や高齢化に伴い縮小傾向にある一方、世界では人口増加に伴い拡大が見込まれています。日本からの農産物輸出を拡大していく上で、輸送中の品質保持が重要性を増しています。
しかし、従来サプライチェーン上での温度管理状況の確認は温度ロガー(温度計に記録機能が付いた装置で、時間経過による温度変化を記録できる)などの高価で設置・回収のハードルが高い装置に頼らざるを得ず、個々の食品の熟し具合に密接に関係する積算温度を簡易に測定できるツールへのニーズが高まっていました。
温度×時間センシングインクについて
株式会社日立製作所研究開発グループが開発した温度×時間センシングインクは、低温環境ではゆっくりと、高温環境では早く変色する特性を持ち、温度に対する経過時間の積算値で一定の色に変化します。また、一度変わった色は元の色には戻らないという不可逆性を有します。
これらの特長により、色変化を数値データとして読み取ることで、出荷後の平均温度・積算温度(例:平均温度20℃で4日経過の場合は積算温度80)を把握することができます。本ソリューションで使用するインクには日立産機独自の材料技術を活用することで、これまでインク形態では難しかったコールドチェーンにおける低温から常温領域まで幅広い温度帯に対応しています。
品質可視化ソリューションについて
本ソリューションは「温度×時間センシングラベル」と「品質可視化アプリ」で構成されています。温度×時間センシングラベルには温度×時間センシングインクで印刷されたマーク、および食品を特定する二次元コードが印刷されており、農水産物・食品に貼付して使用します。品質可視化アプリには、熟し具合などの品質と積算温度の相関関係の情報を実装しており、モバイルデバイスでラベルを読み取り使用します。
青果物の熟し具合を判定する場合、温度×時間センシングラベルおよび二次元コードをアプリで読み込むことで、出荷後の積算温度を把握し、熟し具合を算出します。また、読取時点から食べ頃までに要する積算温度とその後の保管温度から、食べ頃となる時期も予測できます。食べ頃の時期はユーザーの好みに応じて設定でき、例えばやわらかめが好きな場合は、より熟成が進行した状態での食べ頃時期を予測します。
流通サプライチェーンの各チェックポイントでラベルを読み取り、熟し具合を把握することで、生産者や卸売業者は出荷の順番を、小売業者は品出しの順番をコントロールし、販売機会の損失を防ぎます。また、消費者は、最適な食べ頃の時期を知ることできます。
<メロンの熟し具合可視化機能の実証>
本ソリューションを用いたメロンの熟し具合可視化機能の検証試験を実施しました。温度調整可能な保管庫に温度×時間センシングラベルを貼付した生産直後のメロンを設置し、本ソリューションの機能を評価しました。温度×時間センシングインクから算出した積算温度とメロンの熟し具合に比例関係があることが確認され、積算温度からメロンの熟し具合を予測可能であることを実証しました。
日立産機システムについて
日立グループは、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現する、社会イノベーション事業を推進しています。幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する「コネクティブインダストリーズ」の中で、日立産機システムは空気圧縮機、配電用変圧器、モーターなどの産業向けプロダクトやサービスを提供しています。「Leading a Sustainable Future」というフレーズのもと、CO2の排出量が少なく高効率なグリーンプロダクトや、デジタルでつながるコネクテッドプロダクトの提供を通じて、お客さまや社会の課題解決に貢献することをめざします。