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世界23カ国の消費者調査で見えた魚食に関する消費者意識(MSC消費者調査レポート)

世界23カ国の消費者調査で見えた魚食に関する消費者意識(MSC消費者調査レポート)

水産資源や環境に配慮した持続可能な漁業の普及に取り組む国際的な非営利団体MSC(海洋管理協議会)が、世界23カ国27,000人を対象とした消費者意識調査の詳細をまとめた「MSC消費者調査レポート」を公開しました。

日本人は魚の摂取頻度は2位と高いが環境意識が最下位

魚介類には、健康に不可欠な栄養素や脂肪酸が含まれること等から、WHO(世界保健機関)は週2回以上の魚介類の摂取を推奨しています。本調査で週2回以上食べると回答した消費者の割合は、ポルトガルがトップで49%、次いで日本の45%でした。

一方、この2年間で環境への配慮から食生活を変えたとする消費者の割合は、調査国平均では43%でしたが、日本は19%にとどまりました。

日本人は魚の摂取頻度は2位と高いが環境意識が最下位

どのような条件であればもっと魚介類を食べるようになるかという質問に対し、調査国平均で最も多く挙がったのが「より低価格であること」(53%)、次いで「海に害を及ぼさずに生産されていること」(27%)、「買い物の際に手に入りやすいこと」(23%)でした。

日本では「より低価格であること」(64%)がトップで、「水産物の健康上のメリットに関する情報を多く得た場合」(33%)、「買い物の際に手に入りやすいこと」(31%)と続きました。

調査国平均では、世界的な物価高の影響もあり、より低価格な水産物を求める傾向が強い一方で、海洋環境への意識も高くなっています。日本は調査国平均よりも低価格を求める割合が高く、健康志向もより強いことがわかりました。

レポートでは、栄養価が高いだけでなく、生産時のCO2排出量が赤身肉より大幅に少ない等、魚介類のメリットについても伝えています。管理栄養士のこんななさんによる、魚のタンパク質の重要性についてのコメントとレシピ「MSC認証のちくわとアボカドのユッケ風」も掲載されています。

健康面や環境面で多くのメリットがある水産物ですが、世界の水産資源のうち約38%が過剰漁獲の状態で、この数字は年々悪化しています。水産資源を枯渇させず将来の世代にも水産物を残していくには、持続可能な漁業で獲られたMSC「海のエコラベル」付きの水産物を選ぶことが重要です。

【調査対象の23カ国】
スイス、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、フィンランド、ベルギー、オランダ、フランス、デンマーク、イタリア、イギリス、ポルトガル、スペイン、ノルウェー、ポーランド、アメリカ、カナダ、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国、日本。

MSC(海洋管理協議会)について

将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際的な非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20カ国に事務所を置き世界中で活動しています。MSCジャパンは2007年に設立。MSC「海のエコラベル」の付いた水産品は、2023年度には世界約70カ国で20,000品目以上、日本では約700品目が販売されました。国内ではイオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、マクドナルドなどで購入できます。

持続可能で適切に管理された漁業のためのMSC漁業認証規格は世界で広く認知されており、最新の科学的根拠に基づき策定されたものです。FAO(国連食糧農業機関)とISEAL(国際社会環境認定表示連合)双方の要求事項を満たした世界で唯一の漁業認証プログラムでもあります。漁業がこの規格を満たすためには、(1)水産資源が持続可能なレベルにあり、(2)漁業による環境への負荷が最小限に抑えられており、(3)長期的な持続可能性を確実なものにする管理システムが機能していることを、第三者審査機関による審査を通じて実証することが求められます。

<MSC「海のエコラベル」について>
MSCの厳格な認証規格に適合した持続可能な漁業で獲られた水産物にのみ認められる証、それがMSC「海のエコラベル」です。
MSC「海のエコラベル」

おわりに|日本人のエシカル消費に対する意識について

MSCの調査結果からは、日本人は魚の消費に際して価格と健康メリットを重視し、環境への配慮に対する意識が低いことが明らかとなりました。

ボストンコンサルティンググループが2021年と2022年に行った調査結果では、日本の消費者の環境意識と行動のスコアが諸外国と比べて低いことが示されていました。

日本を含む、米国・英国・中国・インドなど11カ国の消費者の環境意識を比較した結果、日常生活における自分の行動が気候変動に与える影響について「いつも気にしている」と答えた人の割合は、インドが69%で首位、ブラジルが50%で第2位であったのに対し、日本は10%で最下位でした。また、日本の消費者は気候変動対策として消費を制限することに消極的であり、「気候変動に与える影響を減らすために自分の消費を制限することができる」と回答した割合でも,他国はいずれも80%以上であったのに対し、11カ国中最低の45%でした。

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