持続可能なフードシステムとして、海外で普及しているCSAという仕組みをご存じでしょうか。CSAが実現し定着すれば、農家の経営が安定化し、農業に興味を抱く人々の増加も期待できるという好循環につながります。
持続可能な農業のために、ぜひ多くの方にCSAについて知って欲しいと願います。こちらでは、CSAとは何か、そしてメリットやデメリットについて詳しく解説します。
CSAとは?
CSAとは、”Community Supported Agriculture” の略で「地域支援型農業」を意味します。
消費者が生産者に前払いで代金を支払いして、定期的に野菜や果物などの収穫物を受け取るシステムのことです。
“Community” は「共同体」ですが、ここには、「価値観や思想を共有している」「リスクを分かち合う」という意味が込められています。
“Supported” は「支援する」ですが、収穫物を購入することのほかにも、栽培中のリスクを一緒に負担するという意味が含まれています。
“Agriculture” は「農業」ですが、単なる農業というよりも、地域を持続可能にする環境に配慮した農業を意味しています。
生産者は、消費者から前払いで受け取った代金で、種や肥料などの野菜や果物を生産するために必要な資材などの購入費に充てることができます。その資金を運転資金として活用できるため借り入れなどに労を費やす必要がありません。購入した苗や種、肥料などを使用してひとつひとつ丁寧に育て、消費者の食卓へと届けます。
CSAの歴史と特徴
CSAの歴史は1986年に遡り、アメリカ合衆国のマサチューセッツ州、ニューハンプシャー州で始められました。そこから徐々にヨーロッパや中国、韓国などの世界へと広がりを見せていきました。日本においては有機農業運動で「産消提携」がCSAに近い取り組みと言えます。
CSAでは、農場の運営や経営に関するリスクを生産者だけでなく消費者も共有するシステムであることが特徴的です。
農業は従来より悪天候などが原因で収穫量や価格が左右されることが懸念されていました。ですが、CSAでは生産者と消費者の両者が天候不良による不作のリスクを共有する新しい農業のモデルです。「リスクシェアリングパートナー」という関係が成立していることになります。
これらは、将来的な地域のコミュニティの発足や有機野菜の発展などの進化が期待されている現状です。
通常の農業では、作り手と食べる人の顔は見られず、スーパーマーケットや大手ショッピングモールなどで購入するのが基本でした。一方で、CSAでは生産者と消費者の距離がとても近くなり、顔が見えることで消費者に親近感や信頼性を与えることができます。また生産者にとっても名前や顔が出ることでより責任感や作り手としての想いを届けることができます。
食のつながりにおいて生まれる新たなコミュニティは、よりよい街づくりや社会福祉についても考えることができるようになるでしょう。また、CSAに名を挙げている農家の多くは農薬や化学肥料などを使用していないオーガニック農家なので安心して食生活に取り入れることができます。
CSAのメリット
CSAにおけるメリットを、生産者と消費者それぞれの目線で説明していきます。まず、生産者におけるメリットは、
【CSAにおける生産者のメリット】 |
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などが挙げられます。
一方消費者におけるメリットは、
【CSAにおける消費者のメリット】 |
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などが挙げられます。
CSAのデメリット
CSAにおけるデメリットについて説明していきます。
天候不良などによって収穫の予定が大幅に崩れる場合もあり、需要と供給のバランスが必ずしも一致するとは限りません。お互いがリスクを背負う点においての知識や理解などが不可欠となります。
また、CSAの実現には営業・流通・販売などのさまざまな工程が必要となり、その時間を栽培にかける時間とは別に捻出する必要があります。
おわりに|CSA(地域支援型農業)とは
CSAの最大の武器は、生産者と消費者が直接つながっているというところにあります。
海外で発展を遂げている理由の中には、「人々がより安全な食を求めている」「環境問題への取り組みへの協力」といった背景があります。
CSAは小規模な農家が生き残る手段として有効で、地域の食料自足率の向上にも資する取り組みです。
持続可能な農業として、地球に優しい部分にも大きな可能性があるといえるでしょう。地域・地球・食文化を守りながら多様に広がるコミュニティや循環型の支えあう社会を考えるきっかけとして広まることを期待します。